tag さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
家族の物語としての平家物語
僕らは、この物語が悲劇で終わることを知っています。源平合戦の流れも、少し歴史好きなら頭に既にある。しかし、見入ってしまいました。
膨大な原作を、思い切って、平家の建礼門院(徳子)の家族の物語に絞り込むことで、「歴史絵巻物語」から家族の幸せと悲劇、奈落へ落ちてゆく中での悲しみ、そして浄土を願う祈りへ、「家族の物語」へと。自分としては、ほぼ新しい物語として浸りました。
{netabare}
見ての感想は様々な想いが交錯しました。
建礼門院の美しさと悲しみ、オープニングで毎回見る建礼門院のこの上ない笑顔と物語中の苦しみとの対比は毎回刺さるものがありました。彼女のみは家族の中で生き残る。これも分かっているのです。子供も親も、兄弟も、全部失いながら。それでも彼女が生きるのは、ただ家族の浄土への旅たちを祈る。仏様の手から垂れる五色の糸を掴み、祈る、その悲しみ、苦しみ、幾ばくかと心に強く伝わります。
重盛の描き方もとても興味深い。平家家中の良心ともいえる彼の一生は、とても悲劇的です。脚本と言うか演出の妙技で、その良心と悲劇が心に響く。
重盛の子供たち、歴史ではあまり前面にでません。物語でも主要人物とは言い難いのだけど、銘家の嫡流(宗盛一門が最終的には嫡流になるんですが)の子供たちとしての苦悩が伝わってきました。これも建礼門院の家族の物語として再構成したからこそです。彼らの苦しみがこれでもかと伝わる。
そう、建礼門院の家族はみんな死んでしまう(一人奄美黄島で生きた、と言う伝説あり)のです。建礼門院は一人残される、まるで運命のように。これは歴史の真実で、とても酷な運命を背負わされた方です。
そして最終話の「大原御行」です。これだって分かっている物語なんですが、描かれ方が素晴らしい。大原の三千院は、そもそも物悲しい雰囲気を持っています。台詞と背景画によって、建礼門院の家族への祈り、平家の滅びの儚さを描く。5分ほどのエンドロールのような画像のフラッシュバックと平家物語の序章の言葉を重ね、描きます。そしてラストに近づくにつれ、琵琶の音色が強くなってゆく。圧巻のラストシーンでした。
{/netabare}
最後に、作画は、まるで人形劇(平家物語も人形劇がありました)のような抑えたキャラ設定。だか、だからこそ、ほんの少し動かすだけで、心の動きがダイレクトに伝わる。その技術の高さも驚嘆レベルでした。まるで、現代の人形劇のようでもありました。
なにかつらつらと書いてしまいましたが、平家物語が好きなかたも、良く知らない方も、多分、この構成ならだれでも心に刺さると思います。歴史をよく知らなくてもです。11話と言う短い構成ながら、傑作と呼べる水準かと思います。