てとてと さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
24時間テレビ 「愛は地球を救う」内で放送された手塚プロダクションのSFアニメ第一弾。85分。
【良い点】
手塚SFらしい波乱万丈の冒険活劇で85分飽きさせない。
SFから西部劇怪奇ファンタジーと要素が豊富で見応えがある。
いつの間にかタイムリープ物だったり、兄弟の因縁をきっちり回収してきたり見事なストーリー。
強引さはあれど、SF冒険活劇としての筋立ての巧みさは素晴らしい。
手塚作品らしい風刺の鋭さと高いテーマ性。
宗教対立や人種差別の根源が恐怖であるという視点も鋭い。これにAIによるディストピアまで描いている。
人間は宇宙一野蛮で邪悪な種族、人間に似せて作られたロボットAIが狂っているなど、徹底的に人間批判繰り広げる。
これだけだと人間視聴者には不愉快と思いきや、終盤に作中の地球人が邪悪な理由が開示され、タイムリープで修正する展開により、
このアニメはifの歴史であり、君たちの歴史はこうならないでね
的なメッセージにしているのが上手い。
「過去は変えられない、未来は変えられる今からでも遅くはないんだ」がテーマ。
タイムリープを活かした見事なテーマと作劇だった。
地球誕生を説明した教育アニメ要素も。
キャラクターは手塚スターシステムでブラックジャックが敵だけど、主人公よりも魅力的。
ヒロインは後から登場のマリーナ姫よりも、最初の義妹ミムル姫の方が可愛かった。
変化する謎生物ちゃんも言葉は喋らないが感情豊かで健気にがんばる、その正体は実は…も含めて可愛い。
義理とはいえ兄妹禁断ラブロマンスは萌える。
作画はキャラデザは垢抜けないが魅力はあるし、えっちな濡れ場もある(お茶の間で放送、おおらかな時代)。
手塚SFらしいバリエーションに飛んだ背景描写や謎生物など楽しませてくれる。
絵は奇麗ではなくても、ヌルヌル動くアニメーションの醍醐味見せてくれる。
殺陣やアクションも良い。
【悪い点】
尺不足で詰め込み、場面展開が忙しなくて雑。あまり余韻が無く次々と新展開。
飽きさせないんだけど、冷静に振り返ると凄く面白い程でもない気が。
良い点と裏腹、手塚治虫の思想色が強く、若干説教臭い。
主人公の不殺があまり魅力出せていない。
マリーナ姫の魅力もイマイチ。惚れる過程がテンプレで、終盤も足引っ張るだけ。
魅力のある敵も不在、ブラックジャック以外のキャラが地味だった。
楽曲は大野雄二サウンドなので、ルパン三世ぽいけれど、やや合っていない面も。
【総合評価】7点
漫画とアニメの神様渾身の一作なだけに流石の面白さだけど、後続に比べて粗削りな印象。
評価はとても良いに近い「良い」