101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ゲームの電源を切るラスボス
「影」と呼ばれる怪物が暗躍する和歌山の離島を舞台に、
タイムリープ能力を有した主人公少年らが謎に挑む同名コミック(未読)の2クールアニメ化作品。
【物語 4.0点】
いわゆるループ物ですが、厄介なのはタイムリープして状況を繰り返し、俯瞰できるのが主人公の専売特許ではなく、
黒幕のラスボスも同等以上の異能を有し、主人公たちをじっくり観察した上で手を打ってくること。
主人公・網代 慎平の死んで戻る能力には、{netabare}タイムリープする度に、開始時点が遅くなり、
死亡時点と同一になったら限界を迎えるという{/netabare}回数制限がありますが、
敵はそこもネチネチと突いて来ます。強敵というより難敵でした。
{netabare}ゲームの電源を切るみたいに世界を終わらせたいという動機もイカれていますが、
長寿過ぎる故のエラーと受け止めればあり得るかなとは思いました。{/netabare}
チート能力者同士の駆け引きは、先が読めないスリルもあり、もはや何でもアリだなという諦観もあり(苦笑)
ただループ6周目にて敵陣営が、{netabare}計画を実行に移そうとした慎平を狙撃して出鼻をくじいた{/netabare}件は、興奮させられました。
世界は情報により成り立っているという視点が刺激的でした。
“食事”と称してコピーする人間の情報を求め彷徨う「影」たちは、
今や人間の三大欲求に匹敵する情報欲のおぞましさを想起。
情報は同一でもコピーは命に取って代われない。
が、例え、命が抜け落ちていても、意志のこもった情報には奇跡をもたらす力がある。
情報について哲学できた有意義なひと夏でした。
【作画 4.5点】
アニメーション制作・オー・エル・エム(TEAM KOJIMA)
舞台のモデルとなった和歌山市・友ヶ島にロケハンを敢行。
実写を取り入れた前期ED映像は成果の一端。
取材によりスタッフが実感したというのが、歩いて一周できてしまう程の島の狭さ。
クライマックスになるにつれ、時間との戦いも激化しますが、
離島内だからって移動が強行スケジュール過ぎない?となる部分も、根拠があって映像化しています。
あと、閉鎖空間であるこの島では、立地的にも作画の見せ場的にもスナイパー最強です。
同スタジオの中でも作画を追求してくるチームが、
光と影、生と死の強烈なコントラスト。
容赦ないグロによる凄惨な戦闘シーンと、描き込まれた花火などの夏の風物詩。
繰り返される、ひずるさんの巨乳へのダイブwなど作品世界を好表現。
コピーした人間と入れ替わった「影」はキャラデザが同一ですが、
画像が乱れたようなエフェクトと、表情の不自然さで、違和感を伝える誘導も丁寧。
【キャラ 4.0点】
・主人公・網代 慎平
・小舟 潮……方言喋るフランス系・金髪少女。{netabare}死んで「影」と入れ替わった主人公の幼馴染。「影」でありながら敵陣営の支配を受けずに、コピー能力や戦闘スキルを駆使して戦況打破のキーマンに。
(コピー元と同一の方が維持が容易だからとスクール水着姿を貫くのも高ポイントw){/netabare}
・小舟 澪……方言喋る日焼け少女。{netabare}取って代わろうとする「影」に抹殺されそうになる。
が、病んだ私は段々と“影”澪の方に惹かれて行きましたw虫も殺さぬ顔で包丁刺して回るクセに、乙女心もコピーできていて、“本体”に慎平へのアタックをけしかける件がジワジワ来ますw{/netabare}
血みどろの中でも、メイン3人のひと夏の三角関係(菱形の澪・特攻も忘れてはいけません)という青春ドラマを忘れない。
これがラストの余韻の良さをもたらしています。
{netabare}平行世界を股に掛けたループと歴史改変の果てに、もたらされたのは主人公とヒロインとの間にあったチョットしたわだかまりの解消。
この青春の過大評価も定番ですが好感できます。{/netabare}
亡き弟・竜之介の人格データに身体を貸し与えている姉・南方 ひづる。
他、サブキャラに至るまで、死者のコピー情報への未練が内包され、波乱要素に。
【声優 4.0点】
主人公・慎平役の花江 夏樹さん。「俯瞰しろ」と自分に言い聞かせる状況説明は、視聴者の私にとっても作品理解の命綱。
ヒロイン・潮役の永瀬 アンナさん。清楚な方言娘と思いきや、凶暴な口調の戦闘員というパワーも求められる役に対応。
澪役の白砂 沙帆さんは和歌山県出身で方言への対応もスムーズ。
多くのキャラが「影」にコピーされ、キャストに実質一人二役が求められる中、
彼女もまた慎平に片想いする純情な妹から、慎平に刃を向ける“影”澪の怪演まで奮闘。
「影」たちを束ね、情報を貪食するハイネ役の久野 美咲さん。
ここでもまたノリノリで狂気のロリをこなす好調ぶり。
【音楽 4.0点】
劇伴は音楽制作集団・MONACA所属の3人が担当。
定番のアレンジに、スパイスされた木琴などの打楽器の音色。
優しい打音で、のどかな離島の夏を演出してみたり、
不気味な打音で、影が忍び寄る不穏なムードを醸してみたり。
OP主題歌……前期・マカロニえんぴつ「星が泳ぐ」/後期・亜咲花「夏夢ノイジー」
ED主題歌……前期・cadode「回夏」/後期・りりあ。「失恋ソング沢山聴いて 泣いてばかりの私はもう。」
やはり絡んで来たのが「夏夢ノイジー」作詞・作曲・志倉 千代丸氏。
アドベンチャーゲームの興隆もライフワークとする氏。こういう企画への嗅覚は鋭いです。
他の三曲が青春サマーソング風味なのに対して、
この曲は“神のアルゴリズム”がどうのと運命の選択を迫る
科学アドベンチャー始まった~って感じでエッジが効いた厳し目のナンバー。
『ゆるキャン△』で癒やしを提供している亜咲花さんのボーカルもここでは切れ味重視です。
来冬には志倉会長のMAGES.から同じく亜咲花さんの主題歌で、ゲーム版『サマータイムレンダ』も出すそうで。
この貪欲さ。ハイネ級ですw
【付記】
Disney+独占配信作だった本作ですが、
ゲーム化の宣伝もかねてか11/15(火)にアマプラでの配信開始。
他サイトにも配信解禁の流れが波及すれば良いのですが。
見逃していた方も、視聴機会があれば、挑んでみて下さい。
【1話感想】TVer・1週間限定見逃し配信で辛うじて視聴できていますw
{netabare}
夏の孤島で超常ミステリー要素?という舞台設定から醸される
既視のアドベンチャーゲーム風シナリオ再提供の予感に私は中々腰が上がりませんでした。
が、スク水・金髪碧眼フランス系美少女&褐色日焼け妹属性+方言
というフェチ要素への渇望が上回り視聴開始w
{netabare}いきなり潮の葬儀からスタートして悲しかったです。{/netabare}
ラッキースケベ体質だが、自分を俯瞰するメンタルコントロールができる主人公少年。
→脚本の破綻をエログロやパニックで誤魔化す懸念は少なそうだ。
草薙による夏の背景美術の美しさだけに頼らない。
水滴の描写に心情を溶かし込む作画表現。
撮影のフィルター切り替えも交えて伏線を示唆する映像編集。
あとは「洋食コフネ」の"飯テロ"兵器・エビフライとかw
→隅々まで考察する視聴にもちゃんと答えを返してくれそうだ。
こうした作風に求めたい私的視聴継続チェックポイントをクリアしてくれたので、
2クール完走に向けて、まずは順調な滑り出しといった所です。
【余談】
地上波放送局少なめ。あとはBSなどのため、私の環境では録画できず。
見放題配信はDisney+独占。
→関西テレビによるTVerの1週間無料見逃し配信の救済措置で
何とか首の皮一枚繋がっている視聴状況。
サブスク最後の黒船Disney+と、
公共電波を格安利用する特権(いわゆる電波利権)にあぐらをかいてきた民放各局による
進まない改革の象徴たるTVer。
NHK受信料払わなくてよいサブスク専用テレビも登場する時代を背景に、
両者を俯瞰する本作のON AIR体制は中々興味深い構図w
高解像度&各種立体音響に対応するサブスクのトレンドに乗り遅れたTVerの貧弱なサーバー&UI。
これじゃ開国&明治維新というよりアヘン戦争&洋務運動だなw
と視聴環境に文句を垂れつつw夏の終わりまで毎週視聴頑張って行こうと思います♪{/netabare}