キャポックちゃん さんの感想・評価
2.3
物語 : 1.5
作画 : 3.0
声優 : 1.5
音楽 : 4.0
キャラ : 1.5
状態:観終わった
豪華スタッフの無駄遣い
【総合評価:☆☆】
シリーズ構成・吉田玲子、監督・山田尚子というゴールデンコンビ(『けいおん!』『たまこまーけっと』『聲の形』『リズと青い鳥』)の作品でありながら、彼女らの才能を充分に生かせていない。
当代きっての名脚本家である吉田玲子は、限定的な状況下に置かれた女性がどう反応するかを描写するのが得意。本物の戦車に乗って模擬戦をする(現実にはあり得ない)女子高生の心情も、リアルに語り尽くす筆力を持つ。しかし、キャラの人生経路があらかじめ全て決められてしまうと、あまりの窮屈さに想像力が働かなくなるのか、ひどく単調な人物造形しかできない。シェークスピアの悲劇をファンタジーアニメに作り替えたのに、ドラマチックな展開に欠ける『ロミオ×ジュリエット』などがその典型。
同じく古典にファンタジーの要素を盛り込んだ本作でも、全員が運命に大きく翻弄されているにもかかわらず、社会と個人の相克がドラマを生み出すことがない。設定通りのキャラが既定の路線に沿って動き回るだけである。平清盛と源頼朝は、原作とは異なる戯画化された人物として。後白河法皇、平維盛、平敦盛、木曽義仲、源義経らは、伝承に近い類型的なキャラとして。平重盛は、脚本家によって亡者を見る超能力を与えられたものの、そこから人物像が深化されない。やはり、吉田には不向きの題材だったのだろう。わずかに、平徳子(建礼門院)だけが、滅びに向かう一族の悲哀を体現して興味をそそられる。
山田尚子は、状況に応じた(主に女性の)心の動きを巧みに表現する卓抜した手腕の持ち主で、吉田の脚本と相性が良い。だが、今回は、陰影の乏しい脚本に流されたのか、キャラの人間性が表出されていない。また、キャラデザに漫画界のレジェンド・高野文子を起用したにもかかわらず、面白みが全く感じられない。高野は、『絶対安全剃刀』で認知症の老婆を幼女の姿で描き、人間に対する深い洞察力を示したが、『平家物語』のキャラは設定をなぞったようにしか見えない。顔ぶれだけは豪華な声優陣も、予算の無駄遣いに思える。ただし、平徳子に関しては、キャラデザもアテレコも味わい深い。原作であまり掘り下げられていないため、却って想像力の飛翔が可能になったのだろうか。
総じて、企画ミスとしか言いようのないアニメである。