キャポックちゃん さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
まじめな成長物語(エッチネタに目をつぶれば)
【総合評価:☆☆☆】
色気づいた男子を喜ばせるエッチネタに溢れた作品だが、そこに目をつぶりさえすれば、まじめな男女の成長物語(ビルドゥングスロマン)として楽しめる。
主人公の五条は、雛人形を心から美しいと思い、真剣に人形師を目指す高校生。伝統的な職人の家に生まれたせいもあって、同年齢の人と付き合いがほとんどなく社交性に乏しいものの、「クソ」が付くほどまじめな好青年である。
ヒロインのまりん(「海夢」じゃ読めない!)は、ギャル語を駆使する今時の女子高生のようで、実は、まじめでひたむきな純情少女。好きなキャラになりきりたいという彼女の願望は、お遊びでもおふざけでもない。初めて雫のコスを身につけたシーンで、自分は本当に雫になりきれているかと不安げな表情が、彼女のひたむきな情熱を示す(第4話)。見果てぬ夢をどこまでも追い求める、熱きロマンチストそのものの姿だ。五条に「はい、北川さんは立派な雫たんです!」と言われたときの衒いのない満面の笑みは、見ていて涙が出るほど感動的である。
五条がまじめで純情なのは誰の目にも明らかだが、まりんも同じくらいまじめで純情なことに気づいてほしい。際どい水着を五条に見せつけるので、恥じらいがないと思われそうだが、そんなことはない。空腹でおなかが鳴ったときには死ぬほど恥ずかしがっており、羞恥心の基準が一般人からずれているだけ。ジュジュのように尊敬できる相手ならば、きちんと敬語を用いるし、自分のミスで五条に余計な苦労をさせたと気づくと、涙を流して詫びる。すぐ「キモッ!」とか言って思考停止に陥る無気力な若者とは正反対の、まっすぐな「良い子」である。
特に重要なのは、まりんと五条が、衣装作りを通じて共に成長していく点。資料画像を見るだけでなく、アニメをコンプリートしキャラに適した生地を選ぶところから始める五条の姿は、夢を実現するためには計画性・戦略性が必要なことをまりんに教える。第10話では、彼女が自主的に小道具を用意するシーンが描かれる。
一方の五条は、まりんのために衣装を作り化粧を手伝ううちに、人形師として決定的に重要なことを学ぶ。「将来、いい人形を作りてえんなら、人形だけを見てちゃだめだぞ。いろんなもん見とけよ。いつか必ず実になるからな」(第7話)という祖父の言葉は、本質を突いている(ついでに言えば、アニメーターも同じで、生きた人間のデッサンを繰り返す修練を積まなければ、まともな原画は描けないと自覚すべきである)。
毎回エッチネタが登場するものの、ギリ、苦笑して許せる範囲なので、大目に見てあげよう {netabare}(もっとも、第2話でまりんが感じてしまうシーンは、ちょっと刺激的だったが){/netabare}。