キャポックちゃん さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
日常から立ち上るほのかな個性を描いた秀作
【総合評価:☆☆☆☆】
名門女子中学に入学した明るく元気な女の子・明日小路(あけびこみち)が、クラスメートたちを少しずつ友人思いの積極的な人間に変えていく。『風の又三郎』の女子中学版とでも言うべき作品で、女子校という閉ざされた空間の日常を情感豊かに描き出す。繰り返しの鑑賞に堪える秀作だ。
原作はごく一部を読んだだけだが、少女の躍動的な肢体をコマ撮りのように表現する場面の多い絵画的な漫画(初出はWebコミック)。これに対して、本アニメは、絵画性よりも物語性を重視して人間描写を膨らませており、個人的にはアニメの方が好きだ。
なんと言っても、《適度に》個性的なキャラが興味深い。大勢の生徒が登場する学園ものの場合、家庭の事情やスクールカーストなどの設定を導入することが少なくない。こうした設定は、社会性をはらんでいて物語を深化させそうだが、実際には、脚本家によほどの手腕がない限り、設定に縛られドラマがおろそかになってしまう。本作は余計な設定を置かず、日常生活から立ち上るほのかな個性をうまく生かしており、リアルで見飽きない。
例えば、驟雨を逃れ小屋でふたり休んでいるうち、つい友人の膝枕でうたた寝をしてしまう場面(第3話)。ありがちなギャグにつなげず、現実に見られそうな素直な展開に好感が持てる。第6話の釣りシーンでは、イワナが目の前に現れおとなしかった少女の気持ちが高まっていく過程を、臨場感たっぷりに描く。
気になったのが、ヒロイン・小路の両親。父親は仕事のせいでなかなか家に帰れず、母親は洋裁用トルソーを傍らに仕立て作業にいそしむ。ではなぜ、子供のほとんどいない過疎の村に移り住んだのだろう? 絵本に出てきそうな可愛い自宅は、よく見ると窓の木枠がかなり古びており、年代物の洋館をリフォームしたらしい。庭には家庭菜園が作られ、しっかりしたプランに基づいて人生を選択したことを窺わせる。この親にしてあの娘かと、納得できる。
スタッフには、あまり有名でない女性が多いが、おそらく彼女たちの初々しい感覚が、表面的な派手さを追わず、一人ひとりの心のひだを優しく見つめるステキな作品を生み出したのだろう。