栞織 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
作画に不満があったが、テレビシリーズとしては上出来
キャラ原案が確か高野文子さんだったと思うので、そのキャラクターに沿った、一本線で描かれた、昔の漫画的な作画になっています。要所要所では緻密な作画になっていましたが、だいたいはおおざっぱな感じだったので、そこがまず不満だったです。できれば、このサムネイルの林静一さんのキャラ風にしてほしかった。その昔「源氏物語」の劇場版で、林静一さんのキャラ原案で作られたと記憶していますが、その時も不満でしたが、今回もそうです。ただ、琵琶の弾き語りの白髪の少女の場面は、よく作画されていて綺麗だったと思います。アニメート的にもよく動き見映えがしていました。琵琶による読経の効果もあって、とても印象的で美しいシーンでした。全編あのように、というのはテレビシリーズでは不可能だと思いましたが、やはりそのようなものであったならとつい思ってしまいました。しかし全体的に作画力は高かったと思います。一本線の人物でも、あれだけ巧みに動かすのは大変だからです。
物語については、「平家物語」の概略はいろいろな本で知っていましたが、ここまで平氏側について知らなかったので、まったく知らないことが多くてためになりました。清盛が後白河院の父の白河院の皇子だったかもしれないという話も、参考のため図書館で借りてきた漫画本に出ていて、そうなのかと思いましたし、この話にもそのエピソードがあればより面白かったように思います。
物語は平氏一族が滅んでいく様が淡々と語られて、それがびわの視点から物の哀れを感じさせるものになっており、画面の美しい自然や四季の描写とあいまって、日本の心というものを感じさせるアニメになっていたと思います。このような滅びに美を見出す趣向は、アジアでも日本に顕著なものです。
武士としてはあまりにももろい優しい心を持った忠盛の嫡男たちの入水エピソードも、ごく普通の男子のありようとして心に残るものだったと思います。そうでありながら、武士としての矜持を守ろうとする若者たちの姿が、年寄りたちの老獪さと相まって、物語の哀切さを訴えていたと思います。最後に残った建礼門院徳子が、我が子を失って尼になる姿には、胸が痛みました。栄華を誇りおごり高ぶったとは言え、あまりにも悲惨すぎる結末に、平家蟹などの呪いがあると言われたのも、納得ができるあらすじでありました。
またこのような文芸作品が、良質なアニメ化される事を願っております。