nyaro さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
作者の「好きにさせてもらう」という宣言なんでしょうか。
徹底的に「はずし」の物語でしたね。主人公のキャラ設定からして刀を使わない剣士でした。
従来の物語の作劇法に対する挑戦であるともいえるし、茶化し冗談にしてしまうともいえるでしょう。どちらかといえば化物語の西尾維新がまだまともなだけで、青色サヴァンから始まる戯言シリーズも、冗談みたいな話でした。NISIOISINで回文ってなんなんでしょうか。
変態刀の力、性質に寄せてなにか強さの哲学のような表現があるような気はします。「はかり」の無刀のところとかで、随分とがめちゃんが語っていました。
四季崎記紀という名前…四季は日本の特徴、記紀は日本の歴史書ですね。これって意味があるんでしょうか。日本刀という明確な武士道の魂に対して変態刀です。{netabare}
そして最後とがめをしとめたのは「銃」、将軍を殺したのは「無刀」{/netabare}でした。
本名「容赦姫」に対する「とがめ」…そしてライバルに対する「否定姫」。つまり何も肯定しないということでしょうか。「尾張」は「終わり」に通じますしね。西尾維新は言葉の人ですから、こういう部分に含意がないとも思えません。とがめの言葉「忘れて好きなように生きろ」ですね。
徳川でなく別の幕府が生まれて世界線。{netabare}その将軍家を崩して行く物語。ただ、将軍家は結局は続いて行くという結末。{/netabare}
日本批判とも日本の文学批判、日本のアニメ批判とも呼べるかもしれません。1本23分でなく46分という変形の仕方も特徴的です。ただ、その結末の感じからいって、批判してもいくら変えようと思っても、どっちにしろ歴史の流れ=現実は変えられない。そのときはその時だ、と。
戦ったはずの強敵をセリフだけで語らせて、その直後にその強敵が冗談に思えてくるくらいの強敵がでてくるなどの展開がありました。
主人公の姉の扱いとか、とがめの結末とか、ひねっているようで、かえってそれが自然というか、物語批判…いやメタ的な演出と言った方がいいかもしれません。不思議な構造でした。ハッピーエンドを排しながらもあえてそこに個人個人の結末なんて本来そんなものだ、という感じが、無常観や妙な感動を生みだしていたので、やっぱり西尾維新という人は不思議な人ですね。
言葉を操る奇策士=とがめってメタ的に言えば西尾維新なんでしょうか。{netabare} とがめは道半ばで倒れます。{/netabare}語ることを辞めることができると語ります。そして、一緒にいる主人公は感情を得て行きます。
一方で誰かのために何かをするのは無理、というのも奔放な西尾維新らしい結論です。「とがめは勝手だと」主人公がいいます。それは西尾維新が自分はいずれ死ぬだろうけど、それまで勝手なことをさせてもらう、と言っているのかもしれません。ただ、語っているようで語ってない、という「はずし」なのかもしれませんけどね。
絵柄が特徴的ですよね。原作の挿絵がこの通りなんで、意図的にアニメの文脈から外しているというのは読み過ぎな気もするし、原作の段階で意図している気もします。
その一方でちゃんと可愛いく見えて行くのが面白かったです。「ちぇりお」最高です。
ということで、ノイタミナらしいともいえるし、その中でもかなり異色と言える本作。あまり評価されていないんでしょうか。化物語のほうの物語シリーズに比べて影が薄いです。
そうか、でも化物語の後に出た刀物語ですから化物語に思うところがあったのかなあ…