ひー さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
画期的な工夫の見られる作品
恋愛に焦点を当てた物語では、登場人物間で彼らの気持ちが自明ではないことが障害となり、その気持ちの距離を埋める過程を描写する構成が組まれることがある。実際に現実における人間関係の構築も同様の構造をもっていることから、このような物語の展開は鑑賞者の感情移入を容易にする。
一方で、本アニメの恋愛観は上述の想定を根底から覆すものである。まず、主人公とヒロインは互いの情報をほとんど持ち合わせていない状態で瞬時に相思相愛となり結婚に至る。この非現実性は物語への感情移入を難しくすると考えられるが、しかし序盤のこの環境設定こそ本アニメ最大のポイントである。
本アニメにおける結婚が果たす役割は、相思相愛の保証である。既述の通り恋愛物語では登場人物間の気持ちが十分に把握できていないことが前提とされる場合があるが、本アニメでは早々に互いの気持ちを結婚というシンボルによりプラス方向に制限しようとしているのである。
この試みは、鑑賞者がヒロインのカワイサに集中するための画期的な工夫である。気持ちがマイナス方向に触れる可能性を早い段階で極力排除することにより、物語の進展にしたがって主人公とヒロインの気持ちにゼロ以上の変化をもたらす幸福なイベントが生じることを鑑賞者に期待させ、安心してカワイサを楽しむことのできる下地をつくっている。したがって、本アニメでは相思相愛が保証された状況下における恋愛を結婚というコンセプトから創り出すことで、ヒロインのカワイサを不安無く鑑賞できるようにする意図があると考えられる。
やや残念なのは、このような環境を整えたにもかかわらず、ヒロインのカワイサを十分に引き出すことのできる性格が彼女に設定ができていたかという点である。カワイサには様々な方向性があるため、一般に複数のキャラクターに互いに異なるデフォルメされた性格を設定することで、バライティに富んだカワイサを鑑賞できるようにすることが多い。しかし、本アニメではヒロイン1人のカワイサに焦点をあてているため、多様なカワイサを鑑賞するためには様々な性格をヒロイン1人で背負い込む必要がある。そのためか、ヒロインの特徴が掴みにくく彼女らしいカワイサのイメージを十分に形成できていないように感じた。
ヒロインの正体の伏線が回収されていないため、現段階でストーリー性を完全に評価することは難しいが、次作からは上述の点が課題となるだろう。