ネムりん さんの感想・評価
4.2
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
1話足りともつまらない回がなく、ラストのシーンでは理解力が問われる作品
タイムリープ系のアニメを代表するA-1 Pictures作品。
常にミステリー要素を残したまま次々と話が展開していく脚本の流れと、登場人物の心理描写の捉え方が秀逸で初回からとても引き込まれるものがありました。
シリーズ構成が脚本も担当している岸本卓氏で、数多くの有名作品を手掛けている方ですが、全12話全てがメイン回とも言える濃い内容で、リバイバルとイベント、タイムリープによる脚本の繋ぎがとても巧く、ミステリーもののアニメだと『Another』以来の惹きの強さがありました。
病院の屋上でのシーンが原作から入れ替わってるが初回から原作準拠で話が進められていき、過去に戻ってやり直すことができる能力"リバイバル"の及ぼす影響と、藤沼悟の母親佐知子の死の謎、18年前にタイムリープする展開の複数の伏線を張りながら、雛月加代の家族による児童虐待と連続女児誘拐殺人事件について、真相を解明し事件を解決していく綿密な設定がなされている本編。
当時犯人について話題になっていたアニメですが、インパクトを残すなら主人公に協力的で身近な人物だろうと仮定した場合に、消去法で考えるとある程度予測が付いてしまうが、それを抜きにしても犯人に繋がる緻密な伏線が張られていて、{netabare}例えば犯人は外見が女の子のヒロミを男性であることを知りながら、敢えて自らを捜査対象から外すため殺害対象としていた(普段から面識のある身近な人物と推測できる)り、八代学が実際には児童相談所に通報していないのに通報したとする嘘の発言をしていたこと、2番目の被害者の中西彩の被害にあった日が悟と加代が八代に車に乗せてもらった日に起きていた(犯罪を実行しようとしていたことが読み取れる)ことなど細かな設定がされており、{/netabare}よく観察するとその存在が特定できる巧妙な作りになっている。
アルバイト先のピザ屋の店長と話していた人物も思い返してみると西園姓を名乗っていた八代学で、片桐愛梨の自宅の放火に関わったとされる描写がありました。
このようなミステリー要素に加え、次第に馬脚を露わす謎解きの要素も強い作品と言え、犯人が物語のキーパーソンとなっていく。
育った環境から生じる異常な心理的欲求を持ち、複数の殺人を繰り返す八代のような所謂"シリアルキラー"に共通するものは、
・一見普通の人(社会生活を普通に営んでいる)。
・幼少期に何らかの虐待を受けている(八代は実際に兄から幼い時に虐待を受けている設定)。
・ある程度の精神障害や精神病質を持っている(ハムスターのスパイスのように生に執着するものに対する異常行動)。
とされるが、これらのものが実は物語の背景にあり、社会問題化される精神的病質者による犯罪についてリアルに描かれており、社会風刺をした作品でもあるのは忘れ去られてゆく事件への注意喚起にも捉えられ、警戒意識の高さが伺える。
悟の「オレはお前の未来を知っているぞ!」という言葉を残したまま奇跡的に車の水没事故から生還して15年の歳月が流れ、意識を取り戻し再び八代と対峙していくシーンにおいては、犯罪により生じた因果律は必ず何処かで報いを受けなければならないことを示唆しているようで、メッセージ性を持たせた内容からも風刺を見て取れました。
このアニメのタイトルでもある僕だけがいない街だった間に安寧の時は戻り、18年前からリバイバルして以降意識を取り戻した世界線では片桐愛梨の記憶からは悟の存在がなかった(悟と再会したのに反応がなかったのはそのため)ことになるが、最後に愛梨の姿を見たことで事件に関わった全ての人物の無事が確認された瞬間でもあり、悟にとっては"信じること"の大切さを愛梨から教えてもらった想い出の場所で、努力した結果が実を結び涙が自然と溢れるシーンは、貪欲に諦めない事を教えてくれた感慨深いエンディングでした。