ひろたん さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
当たり前のことほど忘れていたり、後回しにしていたりするものです。
面白かったです。
過剰な演出やちょっとそれは無理があるなと思える展開の数々・・・。
それは、既にTVシリーズですっかり慣れっこになりました。
そして、この作品で見るべきところもそこではありません。
この作品は、どんな手段を講じてもテーマを完遂してみせるところが魅力なのです。
物語全体からも、そんな意志や執念が感じられます。
たとえそれが、突っ込みどころがいっぱいあったとしてもです。
だからこそ、この作品のテーマは、とてもストレートで分かりやすいのだと思います。
■テーマとは?
{netabare}
「伝えたいことは、できる間に伝えておくほうが方がよいと思います。」
これは、ヴァイオレットのセリフですが、この作品のテーマにもなっています。
そして、この作品は、このテーマを伝えるためだけに一直線に展開が進みます。
ヴァイオレットは、TVシリーズで「愛」を知りました。
しかし、その「愛」を伝えられずに日々を過ごしてきました。
自分の想いに行き場がないと言う状況。
それが、こんなにも切ないものかとこの作品では語ってきます。
だからこそ、行き場があるうちに、伝えられるうちに、伝えることが大切なのです。
行き場を失ってからでは、遅いのです。
この作品は、その気持ちを、ヴァイオレットを通じて描いてきます。
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■最初から反則
{netabare}
この作品、上手ですね・・・。
最初からウルっときてしまいました。
いきなり反則だよって思ってしまいます。
なぜなら、あの世へ旅立つ母が我が子へ向けた50通の手紙。
TVシリーズで感動したこの物語のその後を導入として使っているからです。
これによって、TVシリーズのことは一切語らなくても振り返りになります。
劇場版の短い尺の中では、これ以上ないぐらいのよい導入だと思います。
また、誰かに何かを伝えるのは、それができる間だけです。
50通の手紙では、余命あと少しの母親が我が子に伝えられるだけのことをしました。
「伝えたいことは、できる間に伝えておくほうが方がよいと思います」
この導入部は、このテーマをはっきりと印象付ける役割も果たしていたと思います。
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■伝える手段は手紙でなくてもよい
{netabare}
この作品は、手紙がメインの素材となっていました。
今の時代に手紙なんて現実味がなくて響かないんじゃないか?
そう言う意見もあるかと思います。
しかし、この作品は、そこもちゃんと分かっています。
電話が普及すれば、手紙はなくなるかもと物語の中でも示唆しています。
物語が進むと、手紙は、伝えるための手段の1つに過ぎないことも描いています。
病床の少年ユリスが最期に友達のリュカに伝えた方法は、電話でした。
ヴァイオレットが少佐に伝えた方法は、直接、面と向かって自分の言葉でした。
この作品がTVシリーズから今まで積み上げてきた手紙と言う媒体。
しかし、それは、1つの伝達手段に過ぎないと作品自ら割り切ってしまったのです。
そして、なによりも大切なことは、やはり想いを伝えることだと言うのです。
それができるうちに、そして、どんな手段を使ってでもです。
つまり、伝えるための行動を起こすことが大切なのです。
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■まとめ
少佐の住む島を訪れたヴァイオレットでしたが、少佐は会ってくれませんでした。
そして、会えないままヴァイオレットを乗せた船は島から出向してしまいます。
しかし、二人には分かっていました。
それは、今日、会えなければ、また日を改めて会いにくればいい。
そんな機会は、もう二度と訪れないと言うことを・・・。
だから少佐は最後に叫びヴァイオレットに想いを伝えました。
ヴァイオレットも同じく少佐に想いを伝えました。
いかに、伝えたいことは、それができる間に伝えることが大切なのか。
それが、この二人の感情を通じてよくわかるのです。
もし、このまま島を離れていたら・・・。
二人は、この後、いったいどんな気持ちで一生を過ごせばよいのでしょうか?
その後悔を考えると、ぞっとしてきます。
親でも、パートナーでも、恋人でも、子供でも・・・。
自分が想いを伝えたい人がいるなら、できるうちに伝えた方がいいです。
いつ、伝えられない時がやってくるかわかりません。
それは、突然かもしれません。
そして、その突然が身に起こるのは、相手かもしれませんし、自分かもしれません。
いずれにせよ、誰かが必ず後悔するはずです。
この物語は、そんな当たり前すぎることをあらためて教えてくれたと思います。
当たり前のことほど忘れていたり、後回しにしていたりするものです。
しかし、気づいた時には、既に遅いことが多いのも事実だと思います。
もちろん私も当てはまるなと反省させられてしまった、そんな作品でした。