栞織 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
一言では言えない作品
そろそろこの「Vガンダム」についても話したほうがよさそうです。今までの感想に出していますし。先日ガンチャンで再放送されているのを見て、「この最終回を今なら平穏に見られる」と思いました。歳月がたち、私も平常心で本作に対することができるようです。それぐらい見た当時は大打撃だったです。
と言うのも、本作のガンダム三大悪女に数えられるカテジナ・ルースが、「サムライトルーパー」のナスティ柳生と激似で色指定が「サイボーグ009」のフランソワーズ・アルヌールなんですね。なんでこのキャラデザインなのか。単なる「冨野対高橋」の監督ライバル対決という狭い考えでは納得ができないキャラデザインです。なぜこれを採用したのか?それでアニメファンたちに対する打撃は何も考えなかったのか?そういう思いを持った、これは最初の作品でありました。何よりも今あげた似ているキャラクターたちが、ファンに愛される非常に心優しい美少女たちだったからです。何も制作会社にはなかったのでしょうか?こういったファンの心を裏切る所業が、京アニ事件のような悲しい結末を産んだのではないでしょうか。あれも、犯人は制作会社に自作のものを揶揄されていると感じたのが事件の発端だと聞いています。
私がこういう事を言うのも、このカテジナ・ルースがまさに私も含めたアニメファンの同人活動への批判で出されたキャラだと思うからです。要するに「それぞれの人はそれぞれの家に帰るべきでありましょう」というシャクティの言葉は、家を出て同人活動を続ける腐女子たちに向けられたものでありました。私はその時、同人活動を中断しシャクティのように赤ん坊を育てていましたから、分裂した言いがかりと感じましたが、そのような感じ方は、作り手にはシャットダウンされていたと思いました。そのような「主体性が宙に浮いた状態」にさせられたファンは、その当時相当数いたのではないでしょうか。同人をやめて子育てを余儀なくされていた人は、私だけではなく大勢いたはずです。しかしその当時、そういった層の女性ファンには、声をあげる場はありませんでした。今もそのような声は私には聴くことはできません。「Vガンダム」再放送のガンチャンネルでも、コメント欄では絶賛のコメントばかりで、まったく批判する人は存在していません。
しかし私はそういう人たちは存在していると思います。何よりも、私の同人活動で、トルーパーを「まだ書いてほしい」と思っている人たちがいるという事実があります。このような同人界の話に終始してしまいましたが、本作は東欧史に取材した、当時のユーゴ紛争を思わせる複雑な作品で、その点ではガンダムが好きな男性ファンには受け入れやすい作品だと思います。物語も最後まで続き物として紆余曲折があり、飽きさせない作りになっています。要するに、お話としては文句のつけようのない作品で、カテジナに天罰が下るのも、話としては教訓的な童話によくある惨酷な結末なのです。しかし人々の心に残したその爪痕は、本当に歴史に残る作品だと思います。