栞織 さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
まさに「くれないの豚」という内容
これは私は映画館で見なかったんですよ。「魔女宅」から「耳すま」までは映画館で見ていないんです。このあたりの作品は、こう言うのも何ですが、ジブリ映画でも低調だったと思います。その中で一番話の作りが雑かもしれないと思うのが本作です。
作画はいいと思います。航空機をこれだけうまく飛んでいるように見せる技術は、ジブリはやはりピカイチです。しかしそれだけなんですよね。メカファンだけが喜ぶ作品というのがロボットアニメにはある分野なんですが、本作はそれに当たります。中年男性が喜ぶ映画とか、監督さんは言っておられたようですが、その眼の肥えた中年男性も喜ぶかどうかと思います。ラブロマンスがまったく話の上で進展しないからです。これは二人の女性に思われる「両手に花」がよくないという意味ではありません。要するに物語が存在しない状態なんです。ポルコに昔一緒に飛行機に乗った戦友たちがいた、それを見守っている女たちがいた、それだけの話なんですよ。こんなの年寄りが回想するだけのもので、10分も話せばお釣りがくるというようなものであります。
それでですね、このお題にした「くれないの豚」というのは、確かこの当時こんなタイトルのギャグマンガがあったように記憶しているのですが、まさにこれが掛詞ではなく本作の本質なんですね。海賊のような空賊たちがいる。お宝を狙って出撃したら幼稚園児たちの乗る飛行船だった。ここで観客たちは残らずルパンカリ城の「ゴート札だな、捨てっちまおう」の後の展開を期待する。しかしポルコが「そういうのはな、人間たちでやんな」と言ってこの映画は終わりなんです。お宝は最後まで出ない。なんだそれ、って言っちゃいけない。加藤登紀子さんも参加している、かつて赤旗に集った人々の思い出に捧げられているんです。作画はいいだけに、本当に空疎な映画だったと思います。