nyaro さんの感想・評価

4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態：観終わった

映画的な映像や演技が良い。学園ラブストーリーとＳＦを融合した秀作です。

　学園ものとロボットものを融合させた、その発想は素晴らしいですね。ウイスパ―ドという概念と私設軍隊を上手く組み合わせて作り上げた世界観は、かなりＳＦ的に分厚いです。アルにラムダドライバ、光学迷彩、トゥアハーデダナンとその階級組織など４期続くアニメになったのもうなずけます。

　冒頭やハイジャック後の逃亡シーンの辺りが顕著ですが、映画的な演出を上手く取り入れて迫力のある映像を見せてくれました。敵の倫理や目的、手段等々もアニメにありがちな甘いものではなく、冷酷さや論理性において非常にシリアスで、敵のキャラ造形や行動が映画的でした。恐らく原作者や制作者は意識していると思います。

　一方でカナメと宗介のラブストーリーの部分も、世界感とリンクして甘いだけのものではありませんでした。カナメのキャラ造形が今見るとちょっときつすぎますが、その負けず嫌いで強気な部分がストーリーには不可欠なので変えようがないでしょうね。それとテッサですね。彼女が良かったですね。艦長席で髪を弄ぶ演出も、多分映画の俳優が役作りでクセを作るという感じを取り入れたんでしょう。
　また、宗介やカリーニンの過去のバックグラウンドが描かれるのでキャラの行動原理に納得感があります。その他のクルズ、マオ、マデューカスなどそれぞれのキャラの性格付けが明確でそれが映像やセリフから読み取れます。

　世界観、設定、キャラ造形と非常に重層的な造りの上に、さらに世界を転戦して舞台が変わって行きます。

　そのおかげで視聴後感がかなり長いストーリーを見せられたような感覚です。それはダラダラという意味ではなく、エピソードの一つ一つが充実していて、世界感に浸って感情移入もしたということだと思います。

　荒唐無稽のラノベ的でありながら、その緻密な設定で十分ＳＦとして評価できます。不自然なところはティーンの少女が中心になることですが、それもウイスパ―ドの設定で自然に処理できています。

　そのおかげで学園ものとしての楽しさと、シリアスな戦闘ものが上手く融合して甘いだけでない迫力のあるストーリーになっています。ラブストーリーに戦場に生きる事と学園に生きることの価値観のズレなどがあってストーリーとしては本当に良くできていました。

　テーマ性やＳＦ設定などは既視感があるかもしれませんが、それを組み合わせて単なるエンタメとしての面白さにとどまらず、キャラの心情の深みが出ていると思います。更にそれらの良いところを引き出したのが映画的な作品作りだったのではないかと思っています。

　フルメタシリーズの中では、４期のラブストーリーとシリアス展開が一番好きですが、作品それ自体の出来ではこの１期がいいですね。非常に面白い作品でした。