ひろたん さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
心残りがあることに気づいたとき、それが青春だったと気づき、そして青春が終わる
阿良々木の青春は、前作「終物語」で終わったはずでした。
しかし、その終わり方では、本当の意味で青春が終わったことにはなりませんでした。
■青春の終わりとは?
{netabare}
前作、「終物語」では、忍野扇の問題に決着がつきました。
つまり、阿良々木自身が抱えていた問題が解決したと言うことです。
しかし、それでは、ただ終わったと言うだけにすぎません。
阿良々木自身もその時に、「青春は終わった」と言っています。
しかし、青春とは、自分で「終わった」と宣言してすんなり終わるものでしょうか?
青春時代にしかできないことが終わりを迎え、区切りがついたと言う事実。
確かにそれだけを見れば、そこで青春が終わったと言えなくもありません。
しかし、例えば、自分のことを思い出しても、少し違うなと思います。
部活の試合で勝った時、負けた時、コンクールや文化祭が終わった時、等々。
そのタイミングで「あー、青春が終わった!」って心の底から思ったでしょうか?
たぶん違うのではないでしょうか・・・。
青春って終わった瞬間には、たぶん実感がないと思います。
むしろ、後になってじわじわとくるんだと思います。
つまり、青春の本当の終わりとは、心の整理が少しついたときにやってくる。
この物語を観ていて、そう思いました。
具体的には、それは、「心残り」があることに気づいたときです。
その時、初めて、それが青春だったことに気づきます。
そして、同時に終わったことにも気づくのだと思います。
「心残り」とは、過去に対するものです。
そのため、青春が終わったことに気付くのは、後になってからのことです。
逆に心残りがなければ、それを青春とは呼ばないのではないでしょうか?
多かれ少なかれ未練や後悔があるからこそ、その時代がとても貴重なのです。
なぜなら、その時に戻りたくても、戻ることは、もうできないからです。
そのことを認識したとき、初めてそれが貴重な時代=青春だったと気づきます。
そして、もう戻れないことを理解したとき、それが終わったことにも気づくのです。
作品タイトルには、「続」とありますが、シリーズの本当の終わりはこの作品です。
この物語は、このシリーズのエピローグであり、この話がないと最後が締まりません。
これは、青春の物語だったんだ。
最後、このシリーズらしい宣言の仕方で「終」わらせてくれたのだと思います。
{/netabare}
■意外なほどド直球な青春もの
{netabare}
このシリーズの構成は、とても上手です。
振り返ってみるとそれがよく分かります。
『猫物語』では、阿良々木が初めて異性を意識しました。
それが初恋なのか、違うのか、その微妙さを描きました。
『化物語』では、戦場ヶ原と出会い、そして恋人関係になりました。
二人は夜空を見上げながらファーストキスをしたのだろうとセリフから分かります。
『セカンドシーズン』では、各登場人物の失恋を描き、各々、心にけじめつけました。
『終物語』では、阿良々木が心の内面と向き合い、自分の中に答えを見つけました。
そして、この『続・終物語』で、それらが青春だったと言うことに気づくのです。
ここまでくると、このシリーズは、本当に青臭いぐらいの青春ものだと分かります。
このシリーズは、脚本、演出、セリフ、どこをとっても奇を衒っているのは事実です。
でも、終わってみると意外なほどド直球な青春ものだったことに驚かされます。
このギャップがとても良かったのだと思いました。
{/netabare}
■まとめ
この作品は、物語シリーズの締めとして素晴らしい作品だったと思います。
それは、青春の「終わり」について、明確に答えを示してくれたからです。
なにをもって、それが青春であったと言えるのか。
なにをもって、その青春が終わったと言えるのか。
この難しい命題の答えは、いくつもあることでしょう。
いくつもありすぎで、普通の青春物語では、そこを曖昧にしてしまうかもしれません。
しかし、この物語は、「心残り」と言うキーワードで1つの答えを示してくれました。
青春の「終わり」をここまで意識させてくれる作品は、他にはなかなかありません。
とても面白いシリーズだったと思います。
物語シリーズの感想は、今回が最後となりました。
今までお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。