エイ8 さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
見た目通りの宮村くん
『ホリミヤ』を原作としたテレビアニメが、2021年1月から4月までTOKYO MXほかにて放送された(wikipedia)
女子向け青春ラブコメ。原作は『堀さんと宮村くん』という名称のウェブコミックだそう。
先に総評を書いてしまいますが結構良かったです。男性でも充分楽しめる内容となっていると思います。内容自体はよくあるテンプレな「アオハル」ものですが、この作品は主人公とヒロインの関係だけでなく周囲の登場人物も広く巻き込んだ群像ものでもあります。ただこの点に関しては1クール作品ということを考えても二人だけに絞った方が良かったかもしれません。原作は未読なのですが、明らかに多くのエピソードが省かれていることが推察されます。特に終盤になればなるほどその傾向は顕著で関係性が不明瞭なところが多々あるのはマイナスポイントだと思います。
ところでこの作品には良くも悪くもとんでもないクセがあります。それが主人公宮村くんのキャラ属性です。正直言って序盤の彼の設定から視聴を中断した人もいたんじゃないかなと思いますが、なら彼にその属性が無ければ作品として成り立たなかったか?というと全然そんな感じはしません。ハッキリ言って初回インパクトのみと言っても過言ではないと思います。とはいえこれが無ければもっと万人受けしていたのか、これがあったからこそ最終的にアニメ化、ドラマ化までこぎつけたのか難しいところではありますが。
さてその宮村くんですが、中学のうちに耳や口合わせて9つのピアスを開けた上にイカツいタトゥーを全身に彫ってるという案外半グ〇さんでも中々いないんじゃないかというレベルでパンチがきいてます。当然主役(善)サイドはお約束通り「人を見た目で判断しない」ので当たり前のようにごく自然に受け入れられますが。
でも特段落ち度があるとはいえない仙石会長に「なんかムカついた」とかいう理由で頭突きかましたり、言い争いになってちょっと手のあたった数少ない友人の石川くんにガチのグラウンドポジションからパウンドかましまくるとかエグイにも程があると思います。しかも手でガードできないように脚絡めてるし、格闘技を悪くかじったチンピラがやることやんとドン引きしました。普通ならその時点でこいつヤベー奴だということで縁切られても文句言えないと思いますが、石川くんは良い奴というよりはちょっとバカなんじゃないかと思いました。もっとも、ここで変に関係悪くしたらそれこそ何されるかわからないという判断は有るかとは思いますが。
宮村くんは小学校時代からハブられてるという描写がありましたが、そんな美少年で逆によくハブられたなとは思います。実際に髪切ってからは女子から興味津々でしたし。それでちやほやされまくって男子には嫌われたとかだったり、はたまた有力女子からの告白を振ってしまったがために全体からハブられたというありがち展開ならわからなくもなかったですが、理由としては暗くて何を考えてるかわからないから?だそう。ま、それは実際のところ当たってるわけで単純にクラスメートたちは見る目があったということを言いたかったんでしょうか?(そんなわけない)。
まあそんなこんなで闇を抱えてピアス開けまくったりするわけらしいのですが、これは単純に描写として安全ピンは止めるべきだった。どう考えても中高生向けの作品のわけですし。タトゥー彫りに行く行動力あるんだからピアスだって医療機関で開けたことに出来るだろうよ、と思うわけであります。ドラマ化とかもされてるらしいけどそっちではどうなってるんだろう?正直こういうのこそがレーティング案件だと思うのですがねえ。
と思ってたらなんと彼には中学時代に進藤という親友レベルの友達が出来ていたことが発覚しました。おいおいそれで闇抱えるとか全国のぼっちに対する挑戦かよ……と思った方も少なくないのでは?ですがこの新藤くんも結構パンチが効いた奴で、宮村くんと仲良くするようになったことで彼の友人たちから「宮村暗いし何するかわからない奴だから付き合うな」みたいな感じで忠告されるのですが、それに対して彼は「俺が宮村に取られるのが嫌なだけだろ?」みたいなことを言い放ちます。いやもう鳥肌立ちましたよ、キモ過ぎて。
実際のところ宮村くんは友達いない癖に彼には邪険で暴力的だし、本質的に友人たちの忠告は正しかったと思いますよ。ツンデレと言えば聞こえはいいですが、人間関係は双方向的ですから。彼は堀さんを「人を見た目で判断しない」ところが好きと言ってましたが、あなたは見た目通りな上に自分から他人を寄せ付けないように振舞ってたとしか見えませんでしたが。
またちょっと矛盾だなと思ったのは新藤くんにその忠告した谷原くんが、実は宮村くんに歩み寄りたい人だったということを他ならぬ新藤くん自身が知っていたという流れが出てきたことです。もしそうだとすると例のクソキモい発言ではなく仲介するから一緒に仲良くしようぜとならないのはおかしいと思うのです。なので多分これは事後的に設定を変えたんだとは思いますが、もう少し早くにそう言う設定を作ってさえおけば新藤くんにあのような恥ずかしい台詞を言わせなくてもよかったと思いますので、これに関してはさすがに作者は罪作りだなあと思いました。(そうでないとしたら、新藤くんの方が宮村くんを谷原くんに取られることを警戒したみたいな一層闇の深いの流れに……)
さて堀さんに関してですが、彼女は彼女でガードが緩すぎるというか、弟が連れてきた見た目ヤバげの男をよく家に入れたよな、というのは皆が思う事ではあるでしょうけど、これはおそらく彼女もまた新藤くんと同様に人を見た目で判断しないという作品としての「良い人」アピールなんだと思います。とはいうものの、見た目がガチヲタな人を入れてたかどうかはわかりませんがねえwwwデュフフwwwまあ堀、宮村双方とも両親の教育方針にはちょっとというか相当疑問が生じることは否めません。
というか今書いてて気づいたんですがよく考えたら宮村くんの学校時のオタクスタイルの時は完全に偏見で見てますよね、この人達。堀さんは一応それでも分け隔てなく話しかけにいったというエピソードはありますが、フィギュアもってそうとか思ってましたし。学校では複数ピアス&タトゥーよりキモヲタ風の方が偏見もたれても仕方ないようですね(´;ω;`)
しかし案外堀さんが宮村くんを家に入れたのも下心あってのことかもしれません。実際彼女根本的にDV気質があるように見えましたし。
ところで宮村くんの闇落ちは深刻そうに描かれてる一方で仙石くんに関してはコミカルに流すというのはどうかとも思いました。ぶっちゃけ仙石くんは仙石くんで(堀さんから)物理的に痛めつけられてたわけですし。そういう意味では仙石くんは変にこじれずに立派な高校生になったなと思います。
最終回にもし自分が堀さんの弟を連れて行かなければ……のようなifストーリーがあったのですが、あれこれみ~んな彼の妄想の産物というオチだったら面白かったんですがねえw結局リア充になった彼は過去から解放されるという結果に。そりゃま、学校の中心的存在の友人たちが出来た上にマドンナまで彼女にしたならそりゃ自信もつきますわな。逆に言うと、そこまでいかないと自信ってつかないものなんでしょうか?漫画なのだからしょうがないのですが、もっとモブ的な人との友情でも幸せは掴める、という話も見たかった気もします。みんなハイスペ・ハイカーストばっかですからねえここに出てくる人達って。(一応の例外は桜さんでしょうが、彼女結局石川くんに選ばれなかったみたいですし)
逆に言えば、そういうハイスペの人たちでないと宮村くんを救えなかったということでしょうか?そしてそういう人たちだからこそハイカーストにいるということなのでしょうか。だとしたらぼっちが救われるためにはハイスペに相手される必要ということ?これもうムリゲーじゃん。
この作品の最初のテーマは多分「人は見た目じゃない」だったんだと思います。宮村くんの奇抜な身体的特徴も、一見オタクそうに見えるが実は……というギャップの演出でそうしたんだと思います。が、その特徴が前面に押し出される序盤の彼はまさにそのまんまのヤバイ奴で、後に髪切ってさわやかな感じになってからは本当にそのままさわやかになるんですよね。結果的に彼はテーマに反してずっと見た目通りの奴であり続けるんです。
実際のところ宮村くん的な人って案外どこにでもいるというか、どちらかというとまんまステレオタイプだよなあという気はしました。どこの学校でも数人はいそう。さすがにピアスは多くても2~3個まででしょうしタトゥーは仮に入れてたとしてもせいぜい小さなワンポイントぐらいなものでしょうが。(というか当時もこんなタトゥー普通に入れるところ日本にあったんですね。個人的には海外のメタルアーティストぐらいでしか見たことなかったです。街でちらほら見るようになったのは2010年代以降だったような……)
さて、本作品は初出が2007年2月とのことで結構古く、メイン読者だと思われる当時のJK層も今やそれなりにいい歳の大人となっておられるわけで、その頃とはまた違った角度から見ることになったんじゃないかなと推測します。若かりし頃はこういった「人を見た目で判断しない」のを是とする傾向がありますが、人生としては娘から母親、男性へ要求するものもルックスから収入に変わった現在ではこういった恋愛劇をどのように見えているのかは気になるところではあります。自分の子供がぽんぽんとピアス開けたりタトゥー入れたりするのを容認する親でいたいとか、そういうイケメンをほいほい自分ちに入れるような娘に育てたいとか思うものなのでしょうか。