STONE さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
じっくり描く王道ファンタジー
原作は未読。
異世界転生ものであるが、作品の雰囲気はかってはよく観られた異世界のみで描かれる重厚な
タッチのハイファンタジーものを思い出す。
そう言えば純粋なハイファンタジーに較べて、転生、転移ものはライトな雰囲気を持つものが
多いが、あれは現代社会から来た主人公のライトな現代人気質が作品に持ち込まれるためかな。
転生、転移ものは元の世界の知識を持ち込んだり、あるいは異世界に行く際に神のような
存在からチート的な能力を与えられたりなど、なんらかのアドバンテージを持つことが多いが、
本作の主人公であるウィリアム・G・マリーブラッド(以後、ウィルと表記)はそういうことは
なかったみたい。
その代わりではないが、転生前の行動がウィルの今の生き方に大きな影響を与えているようで、
主人公の異世界での人間形成において、転生前の行動が大きなファクターになっている点などは
「無職転生」と同系統なのかな。
前半はブラッド、マリー、ガスによるウィルの教育描写にかなり時間が割かれる。
舞台が廃墟の街のみで、静的なシーンが延々と続くために、ネットなどでは「退屈」と
いった感想も見受けられたが、個人的には色々削ってスピーディーにいくより、じっくり
描写する作品の方が好きなので、この路線は大歓迎。勿論じっくり描くに足る世界観や設定が
あってこそのものだが、その点ではこの作品は文句なし。
3人の育ての親、ということで往年のアメリカ映画「三人の名付親」及びその派生系作品を
思い出したりもしたが、なんと言うかやはりこういったシチュエーションは3人というのが
しっくりくる。
実際のところ、ブラッドが力、ガスが知恵、マリーが愛や優しさといった部分を
教えているようで、こういった部分は何らかの暗喩があるのかな?とも思ったり。
そういったブラッドの教育的な意味合いだけでなく、単純にアットホーム感溢れる生活描写が
心温まる感じで、後々までブラッドが3人を大切に思っていることにうまいこと説得力を
持たせている。
後半はウィルの冒険譚が主となるが、ここでのウィルは他の人間に較べて抜きん出た強さを
見せる。
しかし、「単独で万事解決、周りは称賛要員」とならず、他者の協力があってこそなところが、
地に足のついた感があって結構好きだった。
脇役ならともかく、主人公が神職で「神の戦士」的存在であるのも結構珍しいような。
日本のヨーロッパ中世近世風ファンタジーは、教団的なものが出てくると、信仰の名の元に
私利私欲に走ったり、教義にのみ囚われて歪んだ正義が暴走したりと、悪的存在として描かれる
ことが結構多いだけに余計にそう感じる。
いわゆる可愛いヒロイン的キャラはほとんど登場せず、そういった要素を期待して観ると
がっかりかも。
まあストーリー上のヒロイン的立ち位置はメネルドールなのかなあ。
内容的にバトルシーン多々だが、その作画や演出はやや平坦でいささか迫力に欠ける。
2022/03/09
2024/06/29 加筆