ひろたん さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
なぜ「猫物語(黒)」は独立していて、「猫物語(白)」はこのセカンドシーズンなの?そんな疑問から始まりました・・・。
この作品は、6つの物語で構成されています。
どの物語もよく練られていて、とても面白かったです。
■セカンドシーズンのテーマは?
{netabare}
この作品では、最初に「猫物語」について、疑問に思うところがありました。
それは、なぜ「黒」と「白」は同じシーズンの作品にならなかったのかです。
この2つの原作は、同時期に発表された作品です。
しかし、「黒」は、セカンドシーズンにはなりませんでした。
それは恐らく、このセカンドシーズンは、あるテーマでまとめられたものだからです。
それは、阿良々木と戦場ヶ原以外の登場人物の「失恋」です。
主人公「阿良々木」とヒロイン「戦場ヶ原」は、両想いです。
阿良々木は、他の女の子にちょっかいをだしますが、気持ちは戦場ヶ原に一途です。
戦場ヶ原は、迷うことなく阿良々木に一途です。
この場合、この二人に対し恋愛感情を抱く他の登場人物の顛末はどうなるのでしょう?
そのことを怪異現象とからめて描くのがこのセカンドシーズンです。
それぞれの物語は、一瞬、失恋と言うより悲恋と呼ぶべき結末に向かいます。
しかし、最後は、自分を縛りつけていた心の呪縛から解放されていきます。
心の呪縛とは、怪異を生み出す元凶でもあります。
この物語の登場人物たちは、失恋と引き換えにその怪異からも解放されていきます。
とても清々しい結末ばかりの物語でした。
{/netabare}
■『猫物語(白)』
{netabare}
羽川があか抜けて、劇的に可愛くなります。
ショートヘアにして、メガネを外しました。
ロングでメガネをかけていたときよりも圧倒的に可愛いと思います。
この物語は、羽川と戦場ヶ原の二人の女子会のような展開で進みます。
そして、その内容は、二人とも圧倒的に阿良々木のこと好きだと言うことです。
でも、この二人には決定的な差があります。
戦場ヶ原は阿良々木の恋人ですが、羽川はその立場にはなれないと言うことです。
すると羽川の中にはある感情が生まれるのです。
そうです、それは「嫉妬」のことです。
羽川は、恵まれない家庭環境にあっても自分が傷つかないように生きてきました。
荒波を立てず、上手く逃げてきたはずでした。
しかし、上手くやれているは、羽川の思い込みでした。
その中で鬱積したものが、「嫉妬」をトリガーに怪異を作り出してしまうのです。
この物語で、羽川は失恋し、やっと傷つくことができました。
傷つくことで、今まで抑圧してきた自分の気持ちに気づき、解放されます。
とても良い終わり方だったと思いました。
この物語は、「猫物語(黒)」と対になっている話です。
「黒」では、阿良々木が羽川への気持ちを語り、この「白」では、その逆です。
そのため、絶対にセットで観た方が二人の気持ちを比べられて面白いと思います。
ここで、最初に疑問に思った「猫物語(黒)」が独立している理由が分かります。
それは、阿良々木自身の気持ちを語る物語だったからです。
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■『傾物語』
{netabare}
阿良々木が忍野忍と繰り広げる壮大なSFファンタジーになっています。
今までの物語とは違い、いきなりスケールが大きくなります。
それが新鮮で面白いです。
この物語は、一見、八九寺の話と思いきや、実は旧キスショットの失恋話です。
阿良々木と忍は、八九寺の過去を変えようとタイムスリップをします。
しかし、その過去改変の代償は大きく、戻った先の未来は変わり果てた姿でした。
そこで二人が出会ったのが阿良々木とリンクが切れた忍、つまり、キスショットです。
言うまでもなく、忍は春休みの一件以来阿良々木のことが好きです。
しかし、その世界線では、過去改変の因果により阿良々木が死んでいました。
阿良々木を失ったキスショットの絶望が世界を滅亡へと導いていたのです。
しかし、そんなキスショットの前に現れたのは仲睦まじい阿良々木と忍でした。
キスショットは、そんな二人を見てそう言う選択肢もあったことに気づきます。
そして、二人をもとの世界線に戻すため自ら消滅することを選びました。
とても切ない最後だったと思います。
{/netabare}
■『囮物語』
{netabare}
千石撫子の物語です。
千石のイメージと言えば、現実逃避、引っ込み思案、自己主張をしない女の子です。
しかし、そんなイメージを一蹴する学校での千石の姿は圧巻でした。
さすが、花澤香菜さん、演技に鬼気迫るものがありました。
これを観るときっと千石に対するイメージが180度変わるはずです。
千石のこの凶暴性は、「裏」の顔です。
この「裏」と言うのが、後の「続・終物語」でも活きてきます。
千石は、阿良々木のことが以前から好きですが、それは当然叶わぬ恋です。
しかし、千石はその性格から、その現実を見ようとしません。
そして、自分が作り上げた幻想の囮に自ら引き寄せられ怪異になってしまいました。
この物語は、ここでは完結しません。
そしてその終わり方は、とても寂しさを感じさせる切ないものでした。
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■『鬼物語』
{netabare}
少女(八九寺)、童女(斧乃木余接)、幼女(忍)が一堂に会する話です。
阿良々木にとっては、大好物であり、大興奮間違いない組み合わせです・・・。
しかし、この物語の結末は、泣けるぐらいに切ないものでした・・・。
それは、八九寺真宵(まよい)の運命の物語だからです。
八九寺は、なぜ人々を迷わせていたのでしょうか?
それは、自分が迷ったままだったからです。
つまり、迷ったまま成仏できないので幽霊になってしまったのが八九寺です。
しかし、阿良々木に、生前に行きたかったお母さんの家を見つけてもらいました。
八九寺は、もう迷う必要はないのです。
しかし、なぜ阿良々木の近くにまだいるのでしょうか?
それは、阿良々木のことが好きだからです。
しかし、八九寺はすべて分かっていました。
自分は、もう怪異でいる必要はないと言うことを。
それは、成仏し阿良々木の前からいなくなることを意味します。
しかし、もう少し一緒にいたかったのです・・・。
八九寺の最後の言葉がとても印象的でした。
「いなくなりますけど、いなかったことになるわけではありません。」
とても切ない終わり方で、泣けてきました・・・。
{/netabare}
■『恋物語』
{netabare}
貝木泥舟の恋物語です。
貝木は、過去に戦場ヶ原の家庭を崩壊させるほどのことをしました。
でも、それは、実は、彼女を想ってのことでした。
戦場ヶ原に惹かれていたのです。
この物語を通じて、貝木は、戦場ヶ原の気持ちを知っていきます。
そして、貝木自身も納得し、自分の気持ちにけじめをつけるのです。
貝木の恋にピリオドが打たれるのでした。
この物語で特筆すべきは、貝木が千石を救うことです。
「囮物語」で、自分の世界に閉じこもり怪異となった千石。
まわりが何を言っても聞き流すのが千石なので、普通に話しかけてもダメでした。
しかし、そこは詐欺師として一流の貝木。
上手く千石に取り入っていきます。
そして、一見、上手く騙せたかのように見えました。
しかし、断固とした自分の世界を持っている千石には、それは通じませんでした。
千石は言いました。
「なにが分かるの?私のことは、なにも知らないでしょ。」
それに対し、貝木の、今度は嘘ではない、本音の呼びかけが始まります。
貝木が千石に言ったセリフがとても印象深かったです。
「そうだ、なにも知らない。お前のことはお前しか知らない。
だから、お前のことはお前しか大切にできない。
そして、お前の夢もお前しかかなえられない。」
自分の世界に閉じこもっていた千石に一番効く言葉でした。
「人は一人で勝手に助かるだけ。誰かが誰かを助けることなど出来ない。」
忍野メメの言葉が思い出されます。
貝木は、ほんとクセになるほどいい味を出しているキャラです。
人気があるのもうなずけますし、私も好きです。
{/netabare}
■『花物語』
{netabare}
阿良々木が卒業した後の神原駿河の物語です。
そう言えば、神原は、怪異に憑りつかれたままでした。
もとは戦場ヶ原のことが好きな神原が阿良々木に嫉妬したのが始まりです。
そんな神原の恋愛感情が引き起こした怪異にけじめをつける話です。
同時にそれは戦場ヶ原への恋にけじめをつけることにもなります。
そう言う意味では、これも一種の失恋だとも言えます。
この物語で、なんと言っても印象的なのは、最後に阿良々木が神原に言ったセリフ。
「お前は、正しいことをしたわけでも、間違ったことをしたわけでもない。
お前は、青春をしたんだ。」
このシリーズは、一見、摩訶不思議な怪異現象に気を取られてしまいがちです。
しかし、根底にあるのは、まぎれもなく青春の物語。
それを最後の最後にあらためて気づかせてくれるところがなかなかだと思いました。
{/netabare}
■まとめ
この物語に登場する人物の怪異は既に別の物語で語られています。
この物語の面白さは、怪異よりもむしろそれぞれの気持ちの掘り下げです。
その気持ちとは、もちろん恋愛感情です。
もともと怪異とは、そんな心に生まれたスキや弱みが原因です。
この物語は、恋愛の複雑な気持ちを怪異と言う形で表現したいわば恋愛物語です。
その恋愛物語の顛末を怪異現象の解決として描いているところが実に面白いのです。
また、この物語では、忍野扇が少しだけ登場します。
にもかかわらず、後々、とても重要な役割を担うことを否応なく感じさせます。
千石を陥れたのも、八九寺を消そうとしたのも、実は忍野扇なのでは?
そう疑問を感じざるを得ないからです。
忍野扇は、この物語の最後のシーンでとある仕事をしていることを明かします。
それは、「終わるべきものを終わらせる」仕事だそうです。
とても意味深ですね。
これはいったいどう言うことなのでしょう?
この後、このことがミスリードを誘いながらもどんどん解き明かされていきます。
次は、『憑物語』です。
今まで出番が少なかった斧乃木余接がメインの物語です。