「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語(アニメ映画)」

総合得点
86.8
感想・評価
1963
棚に入れた
9970
ランキング
185
★★★★★ 4.2 (1963)
物語
4.2
作画
4.3
声優
4.2
音楽
4.3
キャラ
4.2

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nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

観客の期待に応えなきゃ、という強迫観念で名作になり損ねた気がします。

 本作は、蛇足ですね。綺麗に終わった本編が自己犠牲による究極の愛を描いているとすると、本作は自己中心による執着が究極の愛だと言い換えてしまいました。

 円環の理というのが何度もでてきますが、これの説明不足がすごいですよね。普通輪廻とか再生とかそういうものを想起させますが、どうやら、さやかの扱いから言って本来いてはならない存在になる=魔女がいない世界ということのようです。ですけど、これはテーマ性として機能したでしょうか?

 どちらかといえばTV版で私が感心したのは、女性…とくに若い女性の性の搾取…大人になることの拒絶…力を手に入れるために魔女になること…安易な堕落を描いていたようなテーマ性でした。むろん制作者も意識していたと思いますが、これが劇場版では活かしきれていたでしょうか。


 さて、本作、新編のストーリーはまあダースベーダーですよね。執着による闇墜ちという奴です。これ自体はまったくテーマ性はない…あるいは古典的と言えるでしょう。
 前半部分を見れば虚構の世界であることはあきらかで、元の世界との関連はどうなっているんだろう、という謎を提示している振りをして、実はほむらが…というどんでん返しを狙った感じでしょうか。

 見ていて感じるのは、観客のまどマギに対する期待に応えなきゃ、というまどマギブランドありきに作られた感じが強烈でした。

 魔法少女=可愛らしい、ハッピーエンド、王子様…的な固定観念から脱却したTV版が余りに評判になりすぎました。震災の年であったのは偶然だと思いますが、人が新しい価値観を求めていた時に、パラダイムシフトを見せつけてくれました。

 その続編ということで「もう1度、観客を驚かせなきゃいけない」「視覚的に平凡であってはいけない」と言った、ニーズに応えようという脅迫観念的な作品作りになってしまった気がします。
 演出も過剰にまどマギっぽかったですよね。すごいとは思いますけど、過剰すぎて、しらけてしまいます。

 一方で視聴者側もまどかマギカ=少女のリアル、アニメの新しい何か=考察しなきゃ、になっていたと思います。ですので演出や象徴のようなギミックは凝って作ったんでしょう。そういう部分を掬い取って考察が流行っていた気がします。でも、テーマが見出せません。

 この構造…闇墜ちと裏切りをメタ的に考えるとちょっと面白いかもしれません。「まぎかマドカ」は深い、難解である、名作だ…という評判にある意味制作者側が捉われた結果、新作を作るにあたって闇墜ちした気がします。つまり、ほむらそのものです。これを意図しているならすごいですけどね。

 正直いえば、まどかマギカはこの劇場版があったがために名作になりそこなった気がします。そう…まどかマギカというストーリー内の設定とキャラを弄んだ結果、ストーリーとしての面白さは出ましたが、テーマ性も継続性も全てを犠牲にしてしまった気がします。

 ということで、TV版は、魔法少女という昭和から続く女子のあこがれ、夢のお話の概念を大きく変えて、少女の願望と安易な選択のリアルを描き切こうとして、途中までは成功したけど、どこか中途半端に終わってしまいました。

 劇場版でそれを補完する方向にいければ良かったのですが、うーん、まどマギブランドの呪縛に捉われて、闇墜ちしてしまった感じですね。大変残念でした。

 なお、作画は、引き画の時に、キャラが時折バランスが崩れた造形をしていた気がします。崩壊というよりは可愛らしさを感じない微妙なバランスの崩れ、非常に単純な省略になっていた気がします。


 

投稿 : 2022/03/03
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サンキュー:

12

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