蒼い✨️ さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
レトロ風な陰惨ギャグアニメ。
【概要】
アニメーション制作:マッドハウス
2006年8月5日 - 11月4日に放映された全13話のTVアニメ。
監督は、湯浅政明。
【あらすじ】
古来より、普段は人間に擬態して生活をして、本能に従い人間を襲い食糧としてきた食人鬼。
その食人鬼を討伐してきた、剣客集団「愧封剣」
「愧封剣」の師範代である桃田俊彦は上月由香という女性に一目惚れをして恋仲になる。
ところが、由香の正体は食人鬼であり、その正体を知った俊彦は彼女を守るために、
「愧封剣」の跡取りの地位を捨てて彼女と共に逃避行を始めるのだった。
【感想】
「鬼滅の刃」と設定がかぶっていますねー。
アニメを見て何が面白く感じられるかは人それぞれでありますが、
人気のある作品はクオリティで納得させたり、人間の普遍的な感情に訴えかけたり、
総じてレベルの高い作画や演出や芝居の総合力で視聴者の五感を満足させる、
今どきはそういう作品が増えてきていると思います。
集合知=「たくさんの人の知性を集めると、より優れた知性が登場する」という考え方。
アニメも、映像のクオリティを突き上げるものは集合知と技術であり、
それが安定した高いレベルを作品にもたらすことが出来ますね。
クオリティよりも演出家固有のセンスや才能に負んぶに抱っこで依存した作品を好む人もいますが、
そういった座組ですと、演出家(監督)の生まれや育ちに基づく価値観が映像に反映されたり、
話題性が欲しくて刺激的・衝撃的な尖った内容になりがちですね。
世の中には両立しているアニメ作品もありますけどね。
原作者も兼ねている監督によるオリジナルアニメ作品の「ケモノヅメ」も例外ではなく、
キャラがアダルト方面に頑張っちゃう子供には見せられないダイレクトに性的な場面や、
真面目な人ほど気分を害する、おちょくり半分の猟奇的な展開が多いですね。
湯浅政明氏は所謂、ガロ系アニメ演出家というのでしょうか?
アニメーターの伊東伸高氏と組んでわざとヘタウマ風の画風を好み、
過激で変態的でナンセンスでアナキズムで猟奇的で不条理な映像で背徳的な作品を作ることで、
所謂“普通でないアニメ”で精神の解放を描きたい欲求が強いように見えますね。
残酷さをコミカルに描いて死体を腹話術人形にして笑いを取るみたいな作風、
エロと暴力を前面に押し出したこの作品。それを以て湯浅氏を天才・鬼才と呼ぶのは、
週刊少年ジャンプで漫☆画太郎の「珍遊記」を読んでスゲー!と言うのに近い感覚。
一応、ジャンルはギャグアニメなのですが悲惨で残酷で、レギュラーキャラのフルチンで犬死など、
キャラクターに人権が無くて哀れに死にまくる内容を、コミカルな演出で塗り固めています。
絵面がかなり汚いアニメなのですが、それが個性として輝いてるのは否定はしません。
アニメとしてもバトルシーンは「初代タイガーマスク」のような荒々しいタッチで、
都市の背景は「妖怪人間ベム」を連想するレベル。2006年の放送ですが、
敢えて流行に目を背けて昭和40年代アニメへの憧憬を基に、
当時のアニメの雰囲気を平成半ばの技術でアレンジして表現したのではないでしょうか?
要するに、人のやらないことを山盛りにして目立とうという感覚。
視聴者に好かれるよりも、自分の好きなものだけを描きたい、
といったクリエイターの野心?顕示欲?自分の趣味全開。
プロデューサーの丸山正雄さんはよくこんな企画をOKしたな?と驚いてしまいます。
たまにはこんな悪趣味でエネルギッシュなアニメが存在して良いとは思いますが、
決して人が参考にしてはいけない。マニア向けだからこそ許されているものであり、
メジャーなものと同じ土俵で比べてはいけない。
ジャンプにおける「ドラゴンボール」「スラムダンク」「幽遊白書」に対しての、
「珍遊記」的なアニメであり、湯浅政明氏の才能とやらもそっち寄りの属性であると感じたのが、
正直なところでありました。同監督の「マインド・ゲーム」もかなり尖っていましたしね。
実のところ、後年の「夜明け告げるルーのうた」「きみと、波にのれたら」では、
性癖や趣味を表に出すのをかなり我慢してたんじゃないの?と想像してしまいました。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。