ネムりん さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
人によって評価が大きく別れそうな作品
実在する場所を描いた作品としては新海誠監督の初めてとなる作品。
その現実感のある風景と作風は耽美的な雰囲気が感じられました。
物語は転校がきっかけで図書館で会うことが多かった遠野貴樹と篠原明里がお互いを好きになり、別れるまでを描いた「桜花抄」と、貴樹の転校先の鹿児島で一人の少女が貴樹に惹かれていく「コスモナウト」、貴樹と明里の現在の姿を描く「秒速5センチメートル」の3話で構成される。
モノローグ形式でストーリーが構成されていて、主人公の遠野貴樹が現状の自分を変えるため過去の思い出を胸に前へ進もうとする決意が伺え、作品のテーマと思われる"届かない想い"と"届かないもの"に含みを持たせ、それぞれ"すれ違い"と"人生の目標" について不安と期待を抱えながら人生の成長課程を描き、メッセージ性も持たせている。
軌道を変えながら秒速5センチメートルで落ちる桜の花びらを、人生の道のりになぞらえているのかな。
この作品を通して伝えようとしていることはおおよそは分かるんですが、果たしてこの内容をどれくらいの人が理解できるのかなという観点で考えると、作品の作りがかなり難しいのでよく分からないと感じる人が多いんじゃないかというのが視聴してみた感想で、作品に深みを持たせてもそれが視聴者側に伝わらなければ作品として体をなさないので、表現方法としてはあまり巧いとは言えないのかなと思いました。
内容を詰め込むだけ詰め込んで、あとは視聴者に振って考えさせるような作り方をしているので、視聴者目線で考えて作られているのか、視聴者層を限定しているのか疑問に感じる部分があります。
内容としては出会いと別れを繰り返し、人は成長していくということをテーマにして作品が描かれていると思うのですが、かなり抽象的な表現を使っているので見る人によっていろんな見方ができてしまい屋台骨がないので、結末部分がどうしてもブレてしまう。
必ずしも人との繋がりが必要なのか前に進むために別れることが確定条件なのか別の選択肢により成長する優位性はないのかなど、考え方によっては作品の趣旨にそぐわない別の見方ができてしまうため制作者サイドの視点で都合のいいように作られてしまっているようにも見え、評価するのが難しかったです。
作品に美しさを持ち込んできれいな終わり方をしているように見えるが、最後に思い出の場所で一瞬すれ違ってまたお互い前を向いて進んでいくシーンはテーマを美化しすぎなのでしょうか、作り込み過ぎた感じが強くあまり登場人物の想いを感じるところはなかったです。
また人を好きになるという導入部分の内容が足りていないため、別れることの辛さだったりその後の前向きな気持ちになっていく部分がはっきりと伝わってこない。
登場人物の二人がお互い新しい目標に向かって生活を始めるのですが、あくまでも出会いと別れはきっかけにしか過ぎず、必要性を持たせられていないようにも見える。
そういう意味では少し説得力に欠けた作品なのかなと言うのが個人的な意見で、もう少し内容を具体化して話に方向性を持たせた方が作品としては観やすかったのかなと感じました。