かがみ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「つながり」と「つながりの外部」
ゼロ年代の日常系が理想的な「つながりの楽園」を描き出してきたとすれば、2010年代における日常系では「つながり」を内に閉じることなく外に開くための「つながりの外部」の導入が様々な形で試行錯誤されてきた、ともひとまず整理ができる。こうした2010年代日常系的な「つながりの外部」を極めて決定的な形で導入した作品が本作であったのではないか。この点、リンやなでしこ達はキャンプという非日常の経験を通じて、普段の日常では出会うはずのない人や物や事に出会い、考えないような事を考え、欲望しないような事を欲望する。さらに本作では「グルキャン(多人数キャンプ)」と「ソロキャン(1人キャンプ)」をそれぞれ等価的なものとして描き出している。本作は「グルキャン」を決して「ソロキャン」の上位互換に位置付けるのではなく、両者それぞれが異なる価値を持ったものとして捉えている。日常に対する非日常。グルキャンに対するソロキャン。本作ではこのような形で「つながりの外部」を二重に導入した上で「つながり」と「つながりの外部」が織りなす理想的な並走関係を描き出して行く。こうした意味で本作は、2010年代における日常系が様々な形で希求してきた回路を完成させた作品であると同時に、日常系というジャンルがこれまで至上価値としてきた「つながり」の思想へ批評性な介入を試みた作品といえる。