「Vivy -Fluorite Eyeʼs Song-ヴィヴィ フローライトアイズソング(TVアニメ動画)」

総合得点
85.8
感想・評価
778
棚に入れた
2567
ランキング
225
★★★★☆ 4.0 (778)
物語
3.9
作画
4.2
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
3.9

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ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

沸騰するBLUE BLOOD

【あらすじ】
{netabare}「歌で人を幸せにすること」を“使命”とする史上初の自律型AIヴィヴィ。
未来からやってきたAIマツモト。
人間とAIの戦争を阻止するための<シンギュラリティ計画>
100年の旅を描いたオリジナルアニメ。{/netabare}

【物語 4.0点】
脚本・構成の長月 達平氏&梅原 英司氏は『リゼロ』の原作&一部脚本のタッグでもある。
『リゼロ』は主人公が熱いセリフで転換点に作用して、数百年の宿命などぶっ飛ばす、
運命を変える言葉の強さを感じる作品。
対して本作は論理や演算では説明しきれない心情を掘り起こし重視。

歴史の”特異点”に介入すれば、個人の運命という支流は変えられるが、
時代の本流を変えるには、長期に亘って根本的な課題に取り組むことが必須。
AIが”心を込めて歌うこと”とは?が終始問われるが、
心とは何か?など結論の出ない難題であり、
余韻はスッキリ感より、宿題を背負わされた重々しさが上回る。

一方で、心象世界ではセーラー服姿の萌キャラ?ヴィヴィ。
ド派手なアクション、ヴィヴィ&マツモトの凸凹な掛け合い(笑)など、
エンタメ性は上々で、勢いに乗れるパワーは十二分。


【作画 4.5点】
アニメーション制作・WIT STUDIO

言葉を忘れて見惚れる満天の星空など背景美術もまた、
論理や演算で説明できない現象の存在を意識させる。

適宜、差し込まれる陰影まで描き込まれたAIの"人物描写”は迫力十分。
AIの身体が機械であることを思い出させる瞳のズームが
心の有無や在り処を視聴者に問い続ける。

人間の血は赤。AIの血(オイル?)は青。
その青が際立つ画面構成が心の有無が怪しいAIの浸透を象徴するが、
青空は変わらず心を洗う。
色彩もテーマ深化に寄与。


アクションシーンはSFメカ銃撃戦もあるが、
往年のカンフー映画も想起させる高速肉弾戦も目立つ。
10話の戦闘でふっと飛ばされた歌姫AIがピアノに激突し鍵盤が鳴る演出も、
如何にもアクション映画的で爽快かつ、
論理で煮詰まった争いが心を壊すシニカルな暗喩も苦い。


【キャラ 4.0点】
ヒロインの歌姫AI・ヴィヴィ。"使命"に準じるAIに心などあるのか?
「歌で人を幸せにすること」が使命のヴィヴィは100年愚直に、
心を込めて歌うとは?心とは何か?考え続ける。
循環参照でもしかねないこのキャラ自体が特異点。
(けどもっと凄いと思うのは近未来の戦闘プログラムさえ入力すれば、
100年間、一線級の戦闘力を保持し続けちゃうヴィヴィの性能とそれに耐え得る素体なんですけどねw)

ヴィヴィを後継する歌姫AIたち"シスターズ"、
AI史の転換点を象徴する各エピソードの登場人物&AIも示唆に富む。


強烈に作品を牽引したのはAIマツモト。
青いクマのぬいぐるみや、浮遊するキューブの姿で毒舌を浴びせるのも印象的でしたが、
可変キューブ型戦闘兵器としてもカッコいいのが得点が高いです。


【声優 4.5点】
歌姫AIは演者と歌い手を別々の人が担当。
演者は大人っぽいセリフで"使命"を全うする無機質な面を。
歌い手はあまりビブラートを当てないボーカルでこれから心を理解していく純朴さをフォロー。

特に主役のヴィヴィは道中別人格が顕現するなど難役となったが、
種崎 敦美さんが淡々としたボイスの中でも、
徐々に心情の発生も予感させる匙加減で魅せる。

ヴィヴィのボーカル担当の八木 海莉さんは新人歌手。
その成長曲線が、ヴィヴィ自身が心を込めていく過程にリンクするかの如く。


AIマツモト役の福山 潤さん。
ろくに口も動かない素体に合わせ、軽妙に韻も踏むマシンガントークで
ギャグから世界観ナレーション役までカバーする高等芸。
噺家並の個性を表現し、やっぱりAIにも心が?と期待させておいて、
計画優先の人でなし発言も突き刺して来るなど、終始、視聴者を翻弄。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は神前 暁氏ら音楽制作集団・MONACAの面々。
SFらしいシンセサイザーもアレンジされるが、
ここぞの場面ではストリングスを押し出した「Vivy―Unrivaled―」などで盛り上げる。

OP主題歌はVivy(八木 海莉さん)「Sing My Pleasure」
出だしコーラスの先制攻撃力抜群なメロディラインで、
100年を駆け抜ける推進力を付与する優秀なOP。

EDにはボーカルなしのピアノ曲を当てる。
密度の濃い音、歌の後に、スッと落ち着ける貴重な時間。
他でも広まって欲しい流れです。
もっともこれは終盤{netabare}ヴィヴィがAI初の作曲として歌詞を乗せる演出上の意図ですが。
EDクレジットで10話より作曲者が神前 暁氏とVivyの"共作"になるのが心憎い演出。{/netabare}

その他、挿入歌も含めて、全体的に、小難しくSFを哲学する前衛的なサウンドより、
普遍的に心に響くジャンルや音を見直していくスタイル。
但し単純明快な音ゆえ{netabare}心無き暴走AIでも「Fluorite Eye's Song」を変調して歌唱可能で、
合唱しながら人類を殺戮して回ったのはトラウマw{/netabare}


【感想】
人がAIの進化を恐れるのは、性急な時代の流れに呑まれて理性が喪失するとの懸念から。
合理的な思考が混線して対立不可避と思い詰める前に、
ちょっと立ち止まって心とかについて考えてみれば良いのでは?
100年が走馬灯のように過ぎ去る怒涛の展開の中で、
ちゃんと頭によぎらされた着想が貴重な良作SFアニメでした。

ご清聴ありがとうございました。

投稿 : 2022/02/24
閲覧 : 455
サンキュー:

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