タック二階堂 さんの感想・評価
4.2
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
スタンド・バイ・ミー+よりもい=???
詳細は公式サイトでも見てください。
制作・MADHOUSE、監督・脚本・いしづかあつこさんという「宇宙よりも遠い場所」スタッフで送る劇場版アニメですよ。
今回(というか今後?)、脚本に花田十輝さんの名前はないです。ここが、唯一「よりもい」と異なる陣形になりますね。
もちろん、個人的TVアニメ史上最高傑作の「よりもい」スタッフが制作ということで、面白くないわけがない、とハードルを爆上げして観に行きました。
ここからはネタバレを含みますので、観ていない方は開かないように願います。いや、フラグじゃなくてね。
{netabare}
ぶっちゃけ、ストーリーは「スタンド・バイ・ミー」オマージュです。そして、いしづか監督は「よりもい」も意識して作ったんだろうなと感じさせる描写が随所にありました。ドン・グリーズの会話とか、追いかけっこのようなシーンとか。
作画は圧巻でしたね。まあ、新海監督「君の名は。」以降、劇場版アニメは背景美術や作画を圧倒的にしないと観られないということが基本線となっているのでしょう。なので、作画がいいのは大前提となっていますね。
では、ストーリーはどうかというと、「スタンド・バイ・ミー」と「よりもい」を足したような作品にも関わらず、どちらにも遠く及ばないといった内容になってしまいました。
ざっと箇条書きで、この作品の良否のポイントを挙げてみますね。
・見え見えの伏線を張りすぎ。なんていうか、フィギュアスケートの日本選手みたいに「今から飛ぶよ飛ぶよ」という感じでトリプルアクセルを飛ぶみたいな。「これは後で伏線回収するよするよ」って感じがクサい。
・映画の尺の使い方が、これが正しいのかどうか。本来なら描くべき「なぜドロップはロウマと友だちになったのか」とか「ドロップが死んでしまったことを、どうやってトトは知ったのか」とか「そもそもチボリはなぜ留学したのか」とか、そういうの一切なし。そのくせ、山の中での野営のシーンにやけに尺を使うとか。
・で、そういった描写のないシーンが、実はけっこう重要だったりする。それがあることで、クライマックスの電話ボックスでのシーンが生きてきたはずだったのに、ないもんだから泣けもしない。
・ラストをドローンで空撮しているような描写で乱暴に片付けた。あのさ、チボリがアイルランドからニューヨークに移ったことを「地図の端から端だぜ。ダイナミックだ」からの、「あれ、実はすぐ近くじゃん」なんて、誰だって最初の時点で気づくでしょうに…
とまあ、なんというか極論を言えば映画の尺で描くようなストーリーではなかったのが微妙な評価の要因だったと思います。
これが1クール13話ぐらいの作品であれば、ロウマとチボリの淡い初恋的なことも描けたでしょうし、ドロップがロウマと知り合えた描写もできたでしょう。また、これは敢えてなのかもしれないですが、ドロップが死んでしまうといった描写も欲しかった。ロウマのモノローグで「人はあっさりと死んでしまう」などのような説明はいらないし、涙を誘うシーンにできたはず。
監督が見せたいシーンだけを脚本に落とし込んだんでしょうね。黄金の滝のシーンとか、そういうのは凄く繊細に描けていたとは思います。でもね、観ている側としては、もう少しスッキリとしたいわけで。ちょっと、そこに尺を割かなすぎた嫌いがありました。
{/netabare}
とまあ、いろいろと言いましたが、設定とか世界観は非常に好みでしたし、やり方次第では凄く面白くなったとは思います。あ、別に面白くないとは言ってないです。水準以上のクオリティはあると思います。
でも、やっぱり「よりもい」以上を期待して観に行くと、少し物足りなかったなというのが素直な印象ですね。