薄雪草 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ドングリ? ドン・グリーズ♡
うん。
キービジュアルからドングリっぽいです。
テイストは、いつもの "いしづかあつこ監督作品" って雰囲気。
でも、じわじわ沁み込んできそうなコクの深さも楽しめました。
ストーリーは、"おろしたてのセカイ系トーン" がかけられていた印象。
ディテールも、ほどよく取捨選択されていて、私には小気味良かったです。
一瞬のエアポケットに置いてけぼり感がありましたが、それこそ脚本と演出の妙だと思いました。
"物語観" が変わったか?と言うと・・・今はまだぼんやりとしています。
油断なく観ることをお勧めします。
“LIFE”(生き方)を変える新たなアニメーション、というふれこみ。
それは、ものすごくエモーショナルなものだったかと言うと・・・。
そこはもう "人それぞれ" としか言いようがありません。
でも、ファンの方には、ぜひ、スクリーンで観てほしいと思いました。
アイスランド+αの旅を、ご自身のその肌に体感してみてください。
{netabare}
お話の主人公は、ロウマ、トト、ドロップ、チボリの4人。
一人ひとりの背景は、ジツは、ほとんど描かれていません。
ですから、観るがわの "物語観" がひとえに "キモ" となります。
なんとなくヒントになるのは、山あいにある小さな町の閉塞感と、15の春の境目だということです。
誰にでも訪れる、自分らしくあるための夢探しの旅。
その "始まりの始まり" が、ぶつかり、受け止め合うなかに表現されています。
そして、生きてきたことに意味を見つけ出そうとする旅。
その "終わりの始まり" が、薄いベールのようにして、かけられています。
〜 〜 〜
物語の冒頭、都会で髪を決めてきたトトが、牛糞臭に塞ぎこむロウマにマウントを取ります。
「お前も勇気を出せ!」と。
ふたりの進路は、地元と東京に分かれていて、それはまだ、それぞれの道程がどうなるかは思いもよらないものです。
でも、種を蒔く人としての "きっかけ" を、どうにかして見つけたいとも思っているようです。
何気に放ったドロップのひと言が、3人に真っ暗な森をさまよわせ、行き詰まりの夜半に、流星群を仰がせます。
天上に輝く一瞬に中てられ、抑えていた本音をぶちまけるシーンには、彼らの目指すべきもの、探すべきものを、共有しあえる尊さが感じられました。
アイスランドへの旅路の果てに、ロウマとトトは、ドロップとの出会いのルーツ、 "黄金の滝" に辿りつきます。
懸かる虹をさらに見上げれば、巨大な岩肌が天を衝いて立ちふさがっています。
忽然と現れたのは、ドロップが祖父から伝え聞いていた赤い電話ボックス。
荘厳な水の洗礼に清められれば、いぶかしさも、まるで宣託を願うかのようです。
端緒は、トトが押し間違えた "小さな一文字" 。
実態は、ロウマへの励ましの "大きなお節介" 。
仮にそうだとしても、ドロップにとっては、勇気と期待と覚悟のともし火になるのです。
〜 〜 〜
どうしてこんなに素敵なシーンの連続なのでしょう。
古い伝承が彼らを導き、奮う健脚は奇縁を固くし、人生の目標を確かにしていきます。
「よりもい」を象徴する "ざまあみろ" と "ふざけんな" とは、全く趣の異なる "物語観" だと感じます。
ながら、「私たちはまた旅に出る」と結んだキマリたちの "もう一つの続編" だったのだ、という確信を得ることもできました。
〜 〜 〜
さて、もう一つはチボリの立ち位置と存在感です。
彼女はロウマにとっては憧れのマドンナのようですが、私には、チボリにとっても同じに感じられました。
彼らは、それぞれに親の事情を懐に抱えていて、どうしたって自分の人生をそこから創らねばなりません。
カメラを媒体にした演出が、気を利かせている本作。
彼女が、フレームに何を収め、生き方をどう枠づけ、いかに理想を写し出そうとするのかは、実はロウマ、トト、ドロップとまったく共通しています。
理想を見上げれば足もとにヒントがあり、足元のぬかるみからまた天空を見わたしてみる。
ファィンダービューもシャッターチャンスも、セカイを認知し、世界をつかみ取っていくプロセス。
なれば、もはや地球そのものが被写体であり、自分のパフォーマンスを突き固めていくだけです。
もしかしたら、チボリは「よりもいカルテット」からの "一つの発展形" なのではないだろうか?とも思いました。
彼女が南極でも北極でもないニューヨークのど真ん中にいたのは、それを "やってのけていく気概" と "象徴" として捉えることができそうです。
あるいは、いつかロウマやとトトとの邂逅を得て、地球を駆けまわる3人の英姿を、私自身が期待してしまっているのかもしれません。
〜 〜 〜
世界を股にかけ、地球規模で才能と才覚を磨いてゆく旅。
宇宙よりも、もっと遠い場所を目指していくグレートジャーニー。
グッバイ!ドント、グリー。
ストップ!ドント、グリー。
私たちは、もっとなりたい自分になっていい。
遠慮は要らないんだ。
さあ、また旅に出よう。
宇宙よりも、さらにさらにステキな場所をめざして。
{/netabare}