「グッバイ、ドン・グリーズ!(アニメ映画)」

総合得点
69.4
感想・評価
69
棚に入れた
206
ランキング
1828
★★★★☆ 3.7 (69)
物語
3.4
作画
4.1
声優
3.8
音楽
3.6
キャラ
3.5

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ネタバレ

薄雪草 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ドングリ? ドン・グリーズ♡

うん。

キービジュアルからドングリっぽいです。

テイストは、いつもの "いしづかあつこ監督作品" って雰囲気。

でも、じわじわ沁み込んできそうなコクの深さも楽しめました。



ストーリーは、"おろしたてのセカイ系トーン" がかけられていた印象。

ディテールも、ほどよく取捨選択されていて、私には小気味良かったです。

一瞬のエアポケットに置いてけぼり感がありましたが、それこそ脚本と演出の妙だと思いました。

"物語観" が変わったか?と言うと・・・今はまだぼんやりとしています。

油断なく観ることをお勧めします。



“LIFE”(生き方)を変える新たなアニメーション、というふれこみ。

それは、ものすごくエモーショナルなものだったかと言うと・・・。

そこはもう "人それぞれ" としか言いようがありません。

でも、ファンの方には、ぜひ、スクリーンで観てほしいと思いました。



アイスランド+αの旅を、ご自身のその肌に体感してみてください。


{netabare}

お話の主人公は、ロウマ、トト、ドロップ、チボリの4人。
一人ひとりの背景は、ジツは、ほとんど描かれていません。
ですから、観るがわの "物語観" がひとえに "キモ" となります。

なんとなくヒントになるのは、山あいにある小さな町の閉塞感と、15の春の境目だということです。

誰にでも訪れる、自分らしくあるための夢探しの旅。
その "始まりの始まり" が、ぶつかり、受け止め合うなかに表現されています。

そして、生きてきたことに意味を見つけ出そうとする旅。
その "終わりの始まり" が、薄いベールのようにして、かけられています。

〜  〜  〜

物語の冒頭、都会で髪を決めてきたトトが、牛糞臭に塞ぎこむロウマにマウントを取ります。

「お前も勇気を出せ!」と。

ふたりの進路は、地元と東京に分かれていて、それはまだ、それぞれの道程がどうなるかは思いもよらないものです。

でも、種を蒔く人としての "きっかけ" を、どうにかして見つけたいとも思っているようです。


何気に放ったドロップのひと言が、3人に真っ暗な森をさまよわせ、行き詰まりの夜半に、流星群を仰がせます。

天上に輝く一瞬に中てられ、抑えていた本音をぶちまけるシーンには、彼らの目指すべきもの、探すべきものを、共有しあえる尊さが感じられました。


アイスランドへの旅路の果てに、ロウマとトトは、ドロップとの出会いのルーツ、 "黄金の滝" に辿りつきます。

懸かる虹をさらに見上げれば、巨大な岩肌が天を衝いて立ちふさがっています。

忽然と現れたのは、ドロップが祖父から伝え聞いていた赤い電話ボックス。
荘厳な水の洗礼に清められれば、いぶかしさも、まるで宣託を願うかのようです。

端緒は、トトが押し間違えた "小さな一文字" 。
実態は、ロウマへの励ましの "大きなお節介" 。
仮にそうだとしても、ドロップにとっては、勇気と期待と覚悟のともし火になるのです。

〜  〜  〜

どうしてこんなに素敵なシーンの連続なのでしょう。

古い伝承が彼らを導き、奮う健脚は奇縁を固くし、人生の目標を確かにしていきます。

「よりもい」を象徴する "ざまあみろ" と "ふざけんな" とは、全く趣の異なる "物語観" だと感じます。

ながら、「私たちはまた旅に出る」と結んだキマリたちの "もう一つの続編" だったのだ、という確信を得ることもできました。

〜  〜  〜

さて、もう一つはチボリの立ち位置と存在感です。

彼女はロウマにとっては憧れのマドンナのようですが、私には、チボリにとっても同じに感じられました。

彼らは、それぞれに親の事情を懐に抱えていて、どうしたって自分の人生をそこから創らねばなりません。


カメラを媒体にした演出が、気を利かせている本作。

彼女が、フレームに何を収め、生き方をどう枠づけ、いかに理想を写し出そうとするのかは、実はロウマ、トト、ドロップとまったく共通しています。

理想を見上げれば足もとにヒントがあり、足元のぬかるみからまた天空を見わたしてみる。

ファィンダービューもシャッターチャンスも、セカイを認知し、世界をつかみ取っていくプロセス。
なれば、もはや地球そのものが被写体であり、自分のパフォーマンスを突き固めていくだけです。

もしかしたら、チボリは「よりもいカルテット」からの "一つの発展形" なのではないだろうか?とも思いました。

彼女が南極でも北極でもないニューヨークのど真ん中にいたのは、それを "やってのけていく気概" と "象徴" として捉えることができそうです。

あるいは、いつかロウマやとトトとの邂逅を得て、地球を駆けまわる3人の英姿を、私自身が期待してしまっているのかもしれません。

〜  〜  〜

世界を股にかけ、地球規模で才能と才覚を磨いてゆく旅。
宇宙よりも、もっと遠い場所を目指していくグレートジャーニー。

グッバイ!ドント、グリー。
ストップ!ドント、グリー。

私たちは、もっとなりたい自分になっていい。

遠慮は要らないんだ。
さあ、また旅に出よう。

宇宙よりも、さらにさらにステキな場所をめざして。
{/netabare}

投稿 : 2022/03/06
閲覧 : 389
サンキュー:

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