まぁく さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
異世界転生による「徳」の再定義
何かよくわからんけど転生してしまった主人公のウィル
彼は人が滅びた死者の街で、3人(?)のアンデッドに育てられる事となる
育ての父・骸骨剣士のブラッド
育ての母・ミイラ神官のマリー
育ての祖父・幽霊魔術師のガス
常識的に考えて非常識な環境の中、ウィルは彼らにビシバシ鍛えられ、やがて異世界転生者に相応しい強さを身に着けていく
そして成人を迎える日
彼らアンデッドたちの抱える秘密が明らかになる…
…というのが、序盤の雑な煽りとなります
大筋としては
転生⇒僻地での育成期⇒試練⇒旅立ち⇒世界での冒険譚⇒…
といった感じなので、筋書きとしては別段目新しい要素はないですが、この作品は中々に興味深いです
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さて、本作はなろう系ですので、まずは類似作との差別化のため、基本要素を列挙しておきます
・チートじゃない
・ハーレムじゃない
・ってか転生前の人物像が謎(転生要素要る?)
・レベルやステータス等のRPG要素は無い
・多神教の宗教色が強く、皆敬虔
・魔物が本気で強く、人間の版図が弱い世界
・文字や言葉を使った独自の魔法感
…と、こう書くと、割と本格派なファンタジー世界だと思いません?
登場人物も少しヒネリが効いています
全般に言えるのですが、根っからの悪人は少ないです
ストーリー上、明らかに敵役な悪魔的な存在はいますが、人類に限って言えば、自分たちの役割に忠実だったり、家族のためにやむを得ずといった、筋の通ったバックボーンがあります
ストーリー進行はゆっくり丁寧ですので、登場する人物像に注目してみてください
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この作品のテーマなのですが、私は「徳」であると感じました
徳とは、例えば、儒教であれば「仁・儀・礼・智・信」
南総里見八犬伝とかだと「仁・儀・礼・智・忠・信・考・悌」
ウルティマ(古典ゲーム)なら「謙譲 献身 慈悲 霊性 武勇 名誉 正義 誠実」
といった、人として善いとされる行いですね
作中では徳という言葉としては述べられていませんが、これに類する考え方が、キャラクターの行動規範として根付いているように感じます
ところで本作は「宗教色が強い」と評される事が多いようです
私はあまり信心深い方ではないので、宗教と聞くと構えてしまいますが、物語は基本的に主人公の善行によって動いており、欲や打算で動くテンプレなろう系アニメとは一線を画しています
(まぁ途中でちょっと調子に乗っちゃってますが…)
この行動に宗教臭はせず、むしろ非常に心地よく感じました
物語の中盤で神殿長との問答がありますが、本作において中枢となるテーマかと思うので、是非一緒に説教されてください
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最後にビジネスの話をしたいです
本作は、早くも2期の制作が発表されましたが、原作としては長期に渡り連載が停止中です
このままでは原作のストックは2期でほぼ尽きると思われます
既存のアニメの収益構造で考えれば、(ロクに売れない円盤ではなく)続刊の書籍を売ることで利益を目指します
しかしこのままではその目も薄く、ビジネスとして採算が取れる体制とは思えないのですが、ここにお金をつぎ込んだのが中国のBiliBili動画です
本作はかなり多くの部分をBiliBiliが出資しているようです
(というか、国内のアニメ資本は皆無です)
政治的な話をするとちょっとアレなのでここでは言及を避けますが、日本国内ではアニメ化されてもビジネスに乗らないであろう本作を、よくもまぁBiliBiliは企画として見出したものです…
(題材として中国国内向けの配信に適した内容だからこそなのでしょうが)
深夜枠のテンプレ展開の媚びアニメに辟易している方も多いかと思いますが、本作のような丁寧な題材のアニメが世に出るのはとても喜ばしく思います
アニメのクオリティとしては「中の上」といった出来栄えですが、幅広い年齢層に安心してオススメできるテーマですので、興味が湧きましたら是非ご覧ください