ウェスタンガール さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
サークル・ゲーム
『いちご白書』と言う映画を思い出した。
アメリカン・ニューシネマの名作である。
それは10年に渡るベトナム戦争から生じた矛盾から反体制、学生運動が燃え上がった時代であり、閉塞感が刹那的な快楽や暴力を生み、アンチテーゼとしてヒッピー文化が生まれた時代であった。
私見ではあるが、今流行りの「ダイバーシティ&インクルージョン」が深層心理にインプラントされた時期と言っても良いかも。
脱線である。
まあ、色々あって良いということだ。
話を戻そう。
その映画の中で、象徴的に使われていた曲がある。
ジョニ・ミッチェルの手になる『サークル・ゲーム』だ。
カルーセルの如く巡る季節、時間に囚われた身であり、振り返ったとしても、後戻りはできない。
それでも年を重ね、色褪せたとしても、新しい夢を見る。アップダウンを繰り返し回り続ける、と言った歌だ。
それが『ホリミヤ』の世界に重なる。
そこには勿論、世の中や大人に対する反発、いわゆる反体制などと言った感情は存在しない。
しかし、過去を振り返りながら、現在を精一杯に、新たな一年を夢見る主人公、宮村君に重なるのだ。
そして何より、石浜真史監督の映像表現である。
登場人物それぞれの心情が、一歩引いて自身を省みる独特の間合いが、光とシルエット、独特のアングルとストップモーションを絡め静かに表現されてゆく。
とても映画的であり、心に訴えかけてくる演出だ。
とても優れた青春群像劇、青春白書である。
同じく、名作の誉れ高い青春讃歌、『あの花』の主題歌は、そのものずばり『サークルゲーム』であり、“ Galileo Galilei”がこの歌にインスパイアされたであろうことは、その歌詞からしても想像に難くない。