九会 さんの感想・評価
4.3
物語 : 5.0
作画 : 3.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
人間の弱さや醜さが描かれた袋小路のような作品
この作品では0時ちょうどに強い怨みを持ったものだけがアクセスできる「地獄通信」というサイトに怨恨を抱いた相手の名前を書き込むと「地獄少女」が会いに来てその相手を地獄に落としてくれるという都市伝説があります。
その「地獄少女」こそが主人公である「閻魔あい」になります。
しかしながら、主人公とはいっても彼女は物語の進行役で内面描写がないミステリアスな存在であり、寧ろ地獄通信を利用するゲストキャラの依頼主こそが主人公のオムニバス形式の作品で、一期では柴田親子と地獄少女との関係と共に展開されます。
話の流れとしては怨みのきっかけが描かれた後、依頼主が地獄通信に名前を書き込むと、どこからともなくあいが登場し、「藁人形の赤い糸を引くと怨んでいる相手を地獄に落とすことができる」という趣旨の話をし、藁人形を渡します。
ここで「どうして憎む相手をすぐに地獄に落としてくれないの?」と疑問に持つ方もいるかもしれませんが、この糸、実は「選択肢」なんですよね。作品を象徴するセリフで「人を呪わば、穴二つ」という言葉があるのですが、糸を引いて怨みの相手を地獄に落とすとなんと死後自身も地獄に落ちてしまうのです。死んだ後とはいえ、地獄が存在するならば行きたいと願うようなもの好きはいません。地獄行きになってまで怨む相手を地獄送りにするのか、それとも怨みを晴らさずにいるのか? もがき苦しみ、救いは無いのか・・・という展開がこれでもかと描かれる作品です。
また、依頼主が糸を引く瞬間は本当に追い詰められている状態で心苦しいものばかりなのですが、その後の処刑タイムの意趣返しが、悪趣味ではあるんですが、何だか癖になってしまうものなんですよね。見てみるとわかるのですがすごいシュール。作品全体がシリアスの塊なんですけど、ここだけはっちゃけてて好きなんですよね。BGMもおどろおどろしいのですが勢いがすごい。
しかし処刑シーンを見た後ただスッキリとはならず、地獄流しや依頼主に刻まれた印を映すことで後味悪く終るのが、またこの作品らしく、人を怨み、害することが決して正しいことではないというメッセージ性を感じます。
あいの仲間に骨女、一木蓮、輪入道という妖怪達(普段は人の姿)がいるのですが、このキャラクター達も中々魅力的です。あいがミステリアスな分、彼らがコメディリリーフな部分を担当しているところがあるからかも?地獄流しされる人々よりもよっぽど理性的で人間らしいキャラ達です。妖怪だけど。
彼らを演じる声優さん達もキャラに合っていて、主人公のあい役の能登麻美子さんの演技もこの世ならざる者感もすごい。音楽に関してはOPの逆さまの蝶は個人的には名曲だと思いますし、印象的なBGMも多くて良かったと思います。
総評としては、作画の古さと不安定さや終始シリアスの救いのない話ばかりであるので好き嫌いが分かれる作品だと思います。しかしながら人の弱さや醜い一面をしっかり描き、社会風刺など考えさせられる部分もあるのでシリーズ通して私は好きな作品です。鬱耐性がある方はどうぞ。