フリ-クス さんの感想・評価
2.9
物語 : 1.5
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.5
状態:観終わった
フェチたま(フェチの魂)!
もうずっと以前の話になるんですが、
某出版社でラノベ担当の若手編集者と打ち合わせをしているとき、誤って
「『けいおん』って何がそんなに面白いの?」
と聞いてしまったことがあります。
あのねえ……いいですか、フリさん。
女子高っていうのは男にとって『ファンタジー』なんです。
夢と魔法の王国なんです。
あなた〇ィズニーランドの真ん中に立って、そんなこと考えますか?
あるがままを受け入れる、それがファンタジーの楽しみ方でしょう?
などということを延々と語られ、
ああ、こいつとはトモダチになれないな
ということをしみじみ感じさせられてしまいました。
僕も『けいおん』は好きなのですが、
その発想はなかった。
あ、いえ、もちろん良し悪しの話ではなく、
あくまでも『価値観の共有・共感』というところのお話です。
(これ、盛ってません。実話です)
さて、本作は女子高ではなく女子中が舞台の日常系です。
ただし、部活だのサ-クルだのといった、
わかりやすく芯になるモチ-フはありません。
ていうか、厳密には日常系という枠にすら収まりきらない、
【セ-ラ-服とか女子中学生とかを全力で愛でたいっ!】
という迸るような熱いリビドーをそのままアニメにしたような作品です。
ストーリーをかいつまんでお話すると『ありません』の一言。
一応、基礎設定だけはきちんとしていて、
田舎住まいで運動神経抜群の女の子がセ-ラ-服に憧れて
母親が卒業した偏差値高い女子校に入学するも、
校則が変わって制服がブレザーになっていました。
ただ、学校の恩情で
「本人がいいんなら昔の制服でもいいんじゃね?」という話になり、
一人だけセ-ラ-服で登校することになったその子は、
自然豊かな学校で、友だちと楽しい時を過ごすのでした。
というもの。ほんとそれだけ。
「はあ?」とか言われても僕は知らんがな。
6話まで見たところ、
一応各話ともエピソード『らしき』ものはあるけど、
それはまあ、お題目みたいなもので
あくまでもメインディッシュは『JC』に他なりません。
JCのちょっとした仕草、何気ない会話、きゃぴきゃぴした雰囲気、
そういうものを愛でることに特化した作品であり、
実写でやったらなんかちょっと的な、危ない橋だと言えなくもなく。
ストーリーやキャラがあ~だこ~だというのは、
この作品に限って言うなら『考えるだけムダ』なのではあるまいかと。
意外なことにこの作品、監督さんは女性なんですよね。黒木美幸さん。
僕は存じ上げなかったのですが、アイマス系の監督経験もあり、
よっしゃあ、見てろよ男ども
とばかりに、脚本やキャラデにも女性を登用して、
オンナの考えるJCのフェティシズムを豪快に展開されているようです。
そういうコンセプト作品だから、
作画や背景には相当というか、必要以上にリキはいってます。
一枚絵としても、何度も画面停止して見入っちゃうようなところあるし、
え? そこ動かすの? みたく、
マニアックなばかりのこだわりが随所に発揮されています。
ブレザー制服の学校の話なのに、EDなんか全員セ-ラ-服ですもんね。
ただ、このコンテも原画も、やっぱり女性が担当。
媚びてないからこそ逆にくすぐられる、みたいな仕上がりになっています。
登場する女の子を美少女と感じるかどうかは、人それぞれではないかと。
顔の半分ぐらいが目、しかもタレ目
みたいなのは、僕は『かなり古い』テイストだと感じてしまうのですが、
これはまあ原作モノだから仕方ないと思われ。
ちなみに、主人公の目のハイライトの入れ方、
僕的にはちょっと『怖い』です。
これ、わずかにアレンジするだけでホラーに転用できるかも。
あと、横顔のラインが人類の骨格ガン無視のレベルで、
おまえこれ3Dで作れると思うなら作ってみろ的なアレです。
ただし、これも原作モノだから仕方ないと思われ。
中の人には、人気『声優』と呼ばれる人がずらり。
本渡楓さんや若宮詩音さん、伊藤美来さんみたいな期待の若手から、
鬼頭明里さん、小原好美さん、雨宮天さんなどの人気者、
さらには、伊瀬茉莉也さんや石川由依さん、花澤香菜さんみたく、
30歳過ぎてノリノリの実力派役者さんなど、
これでもかと言わんばかりの面子がキャスティングされています。
え゛、そんなにお芝居のクオリティ高いんですか、と問われると、
別にそんなこともなくて、まあ、ふつう。
作品のコンセプトがコンセプトだけに、
じっくり読み込んで役を作らなきゃいけないキャラは一人もなく、
みんな粛々と『それなりに』演っている感じがします。
本作が好きで好きでたまらない方には『素晴らしい演技』かもですが、
客観的な評価としては「可もなく不可もなく」としか言いようがなく。
てか、この脚本でこれ以上作り込むの、ムリだし。
全体的に音監さんが抑え気味の芝居つけてるから、余計そうなのかも。
その分、主役の村上まなつさんが若干あざとく聴こえて、
ワリを食わされてる印象があります。がんばっちゃいるんですが。
つまるところ本作の評価、惹き込まれるか否かについては、
『作品のコンセプトに共感できるかどうか』
の一点にかかっていると言ってしまっても過言ではありません。
だからまあ、僕的なおすすめ度も一概には言えず、
こういうのが好きな方、たまらん方には文句なしのSランク。
まったりした日常系が好きな方にはBランク、
いやなんかもっとあるでしょ葛藤とかドラマとか、という方にはCランク、
青少年の健全な育成に日々ココロを砕いている方にはDランク、
みたいな。
画はかなりきれいだし、お芝居も音楽も『悪くはない』ので、
流して見る段には、作画にリキ入った日常系という解釈も成り立ちます。
僕も完走するつもりで見ていますし。
ただ、三話の冒頭なんか
いきなり『体操服から覗くワキの下のアップ』だもんなあ。
かなりレベル高いです、いろんな意味で。
僕的には、ここまで『やりたいことがはっきりしたアニメ』というのは、
決して『頭から否定するもの』ではなく、
ふだん視聴する作品とは別カテゴリーとしてアリだと思ってるわけです。
ぐちゃぐちゃ考え出すと文化人類学とかが飛び出してきそうですが、
とどのつまり、単なるフェチアニメに他ならず。
そう割り切って見てると、時折「ぬるいな」と思っちゃったりとか。
ちなみに、僕の奥さんに
こういうアニメを好きな男の子って、女の子はどう思うの?
と聞いたところ、以下のような答えが返ってきました。
ん~~……、別に、男の子が美少女を好きなのってあたりまえだと思うし、
そこんとこ自体には是も非もないんじゃない?
たださぁ、世の中というのはたいがいのことに限度ってもんがあって、
それを踏み越えたり飛び越えたりしちゃってると、
なんかやっぱちょっとアレよねえ。
別に僕の奥さんが女の子代表というわけでもありませんし、
そもそも『女の子』なんて呼べるトシでもありませんが……、
言ってることはけっこう筋が通ってるような。
というか、僕の限度額って、あといくらぐらい残っているんだろう?
ちょっと不安になってもみたり。どきどき。