ネムりん さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
美しい背景と想いが伝わってくる心情描写
緻密な風景描写が印象的な新海誠監督が手掛けた劇場映画作品。
新海誠作品は個人的にはあまり高い評価はしていないですが、この作品は46分間の時間枠の中でよく出来てる感想を持ちました。
本編の約8割が雨のシーンで構成されているそうで、背景を中心にほぼデジタル作画で描かれていて、雨水が落ちる動きや波紋の広がり、公園に生息する動植物、日常生活における家具や食事の風景など一つ一つ細部に渡り丁寧に作り込まれており、日常に馴染んだ温かみのある作画がとても印象的。
登場人物の雪野先生は、就活で悩んでいた同監督作品の「彼女と彼女の猫」の彼女こと美優と重なる部分があり、就職して5年後の彼女の姿を描きたかったのかなと思いを巡らせ、声優は同じ花澤香菜さんでキャラデザもよく似ていて、二十歳前後の多感な時期の「苦悩」と「希望」をうまく対比させ、将来性のある若い世代に向けたメッセージ性のある作品に仕上がっていました。
自身の大学生前後の環境の変化に対する不安と選択への期待が交錯していた時期に重なる部分があり、感化されるところがありました。
雪野のセリフで「27歳の私は15歳の頃の私より少しも賢くない。私ばっかりずっと同じ場所にいる」というのは、同じ15歳の孝雄と自分の姿を重ねて語られているようで、歩みを進めるための「靴」と成長過程の「人生」の歩みを掛け合わせて物語が描かれてると解釈でき、苦慮しながら前を向いてく焦燥感が伝わってくる。
15歳の時の私は孝雄のように前向きでいつも前に進もうと努力していたけど、いつの日か社会人になり壁にぶつかり歩みを止めてしまった。
孝雄の姿を見て前向きな気持ちになり、また人生の歩みをしようと思えるようになった。
最後の抱き合うシーンの「あの場所であなたに救われてたの」のセリフはこのことを指していたと作品の深みを感じる。
観る人によって二人の関係の受け止め方はそれぞれだけど単純な恋愛作品ではなく、人生行路について短い音声映像の中にしっかりと伝えたい内容が詰まっていて、物語の内容と映像共に評価したいと思えた作品でした。