TM360 さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
当事者視点から
このアニメはゲーム/ゲーセン文化の史実をテーマに構築された物語で、このキャラクター達の世界に自分も居た。おおよそ製作者が見てきた時代、風景を同じように自分も見て体感してきた。このアニメにメインで出てきたゲームも、チラッと出てきたゲームも全てプレイ経験済で造詣深く語る事が出来ます。だから変にうんうんと頷きながらこのアニメを見てしまいましたね。
ゲーム勝負というテーマをラブコメに落とし込んだのは正解だったかな。ただの勝った負けたを競うバトル漫画になってたとしたらやっぱり狭いアニメ作品になっちゃいそうだし。でも、このアニメに出てくるゲームも時代も全く知らない人がラブコメアニメというだけで視聴した場合、どれくらい楽しめるのかな?という思いもある。
メインヒロインは会話をしない失言キャラだし、なんでわざわざ表現のハンデが高い設定にしたのだろうか?失言に至ったエピソード描写があれば納得出来る面もあるのだけど…。
もう片方のヒロインが開眼して殺意の波動を身にまといかけだした付近から面白くなったね。ラブコメアニメとして最大限に持ち上げた所で1期のストーリー終了と。洋ドラみたいな終わり方だ。リアルタイムでアニメ視聴してた人大変だったろうこれ。
残念だった点は任天堂ソフトコンテンツの描写が一切無かった事。
ハードの描写はなんとか通ったようだけどさすが堅牢な任天堂版権。
不自然にマリオもゼルダも何も出てこなかった。
あとこの時代を語る上でテトリスの描写も一切無かった。
こちらも版元のテトリスカンパニー社がとてもうるさい所なのでやはり無理だったかと。
それでも非常に多くのゲーム関係の版権を通せたと思う。
ゲーメストの描写とかよく出来たなぁって思いますよ。新声社の版権いまどこにあるの!?
とりあえずこのアニメを視聴する上で一番重要な事って「携帯電話もインターネットもメールも何もない世界の話」という事を把握した上で見るのが大切だと思う。
ひとつひとつのゲーセンが島のようなもので、それぞれの島特有の文化が形成されていた。
今みたいに自分が見つけたこのテクニック、それは既にインターネットの誰かによって編み出され共有されている知識だ!というネットで知識を揃える所がスタートラインの時代とは全く違う。
むしろインターネットが無かったからこの時代のゲーセンは面白かったという側面も大いにある。
多くの人が1つのものに熱中するという凝縮した熱量を体感出来るのもこれからの時代もう無いんじゃないかと思う。
資料映像のひとつとしてもこのアニメが後世に残るものになってくれるのが製作者も当時を駆け抜けたひとりとしても一番望まれる事かもしれない。
↓↓↓ 以下おまけ。当事者視点からの史実補足 ↓↓↓
・初代ストリートファイター
アニメでは2台の筐体を対面に設置して初代スト2の対戦風景が描かれているがこれは誤り。ストーリー展開を滑らかにする為にそう端折って描写したのだと思うけどこの対面スタイルでの対戦文化が確立されたのは次作のスト2ダッシュから。初代スト2でこのスタイルを構築していたのはメーカー非公式でカスタマイズした都内のとあるゲーセンでのみ。アニメを見ているとどうやら東京都下の地域の話のようなのでやはり該当しないと思う。
・モータルコンバット
このタイトルを登場させたのは海外アニメ視聴者への話題作りと思われる。海外においてはこのアニメに登場した全てのタイトルの中で1番の人気と言えるくらい支持されてきたタイトル。この時代にモータルコンバットを日本に輸入してたのってタイトーの事業で、タイトー直営のゲーセンに設置されていた。もしくは秋葉原のメッセサンオーの基板フロアに置いてあったくらいだった。前述のように主人公たちは東京都下という描写なので主人公はタイトー直営のゲーセンで遊んだという事が推察されます。
(スーパーファミコン版モータルコンバットはアクレイムジャパンの版権なのでタイトーとは関係ありません。むしろこっちの版権よく取れたなと。)
・スーパーファミコン版ファイナルファイト
サブヒロインがCOOPやりたさに購入して主人公を誘うがスーファミ版は性能の限界により一人用ゲームになっている。出てきた時点でオチが読めて笑ったが当時の雑誌ファミリーコンピューターマガジン紙上で「スーファミ版でCOOP出来る」というウソ技を掲載して大問題になった逸話を持つくらい有名。アニメの中ではスト2Xが稼働する時系列でサブヒロインがこのスーファミ版ファイナルファイトを買っており、スト2X登場時点で1994年、スーファミ版ファイナルファイトの発売日が1990年なので4年の開きがある。主人公のレベルなら体感した過去だと思うがCOOP出来ない指摘をしなかったのは単なる優しさだったのかな?
・スト2X
主人公が修学旅行先で大会に挑むという描写だったけど時系列的には1994年の6月頃だと推察出来る。大会で主人公は連キャンという技術を使って8ヒットスーパーコンボフィニッシュをねじ込んでいるが実際に稼働4か月の時点でこのテクニックが出来た人は居なかったと思う。アニメならではの色付けという感じですね。
・灰皿ソニック
対戦で喧嘩になる時に設置されてる灰皿を物理的に対面に投げる行為を「灰皿ソニック」と揶揄するが、恐らくこの言葉の発祥は関西のゲーセン「長瀬UFO」だと思われる。主人公達の世界は東京都下。灰皿を投げるという行為はどこのゲーセンでもあっただろうけどインターネットが無い時代なのでその名称が統一されているかは確定されない。(まぁ灰皿を投げる様はソニックブーム以外になかなか例えられるものでもないけれどw)
他にも齟齬点、時代補足いくらでも細かく書けるけどこれくらいにしときます。