101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ないないの女の子がカブで捕まえた春
カブに乗り始めた女子高生の青春を描いた同名ライトノベル(未読)のアニメ化作品。
【物語 4.0点】
原作からセリフを削り、無言の間を広げたという脚本。
その間にレトルト食品のレンジアップなど、
淡々と生活の所作を再現して詰め込み、
ないない尽くしの主役ヒロイン・小熊が積み重ねて来た単調な日常の空気感を演出。
この土台の上に、カブの運用に苦闘する中で、
友と出会い、世界や変わり、青春が色付いていく、
主人公心情への共感が生まれる。
青春を掴み取った小熊ちゃんはカブに心酔し、
「面倒なものは信頼できる」など、俄に人生哲学?を語り出し、
しばしば常識を逸脱しますが、それも若気の至り。
この青春は、学校行事に対しても適距離を保ち左右されず、
築いた友情は、高校生活という枠に限定される物でもない。
挙げ句、春が遠けりゃ、カブで捕まえに行けば良いなどとのたまう始末。
世間体はおろか、季節にも臆せず、突き進む彼女たちの青春を、
取り締まることなどできはしないのです。
【作画 3.5点】
アニメーション制作・スタジオKAI
山梨県・北杜市を再現した写実的な背景に乗せた人物作画、二輪のCGなど標準レベル。
アニメは、実写と異なり、どこにでもカメラを置けるのが利点。
が、本作は現実では有り得ないアングルは取らず、実写映像的なリアリティにこだわる。
通学路の交差点など"定点カメラ”が多いのも特徴的。
同じ場所が、季節や、人物の心情によって、
印象が変わる表現を(工数削減を企てつつw)狙う。
背景美術で目を引くのは、ゴツゴツした山肌の富士山。
某キャンプアニメの人々を温かく見守る富士とは異なり、
ケンカ売るなら売って来いや!って感じで私は威圧されましたがw
真意は5話の"マッチアップ"で明らかになり納得。
【キャラ 4.0点】
ハンターカブ乗りの礼子。
小熊以上に詩人な彼女との会話はウイットに富んだものに。
{netabare}「カレーは裸で食べるもの」{/netabare}とかw礼子の美学?を諌める小熊ちゃんから、
ある種の夫婦関係を想起しますw
自転車・モールトン乗りの恵庭椎。
カブの荷台に押し込めそうなwミニサイズですが、
秋が深まる中でも、夏の空気を小熊に伝える陽性ぶり。
ここにも青春が季節に歯向かう兆候がw
欧米列強の覇権争いにおいては地図上だけでなく、
カフェ床面上ですらイタリアが弱小なのが辛いですw
このメイン二人は、縁のあるログハウスやカフェも含めて、
初回から小熊が無感動に通り過ぎて行く、モブ、背景として登場済。
何もない日常のいち風景に過ぎなかった人物が、
カブを通じて、アプローチすることで重要度が増していくのも好センス。
通りすがりの業者の兄ちゃんにだって、
積極的に絡めばカブを快適にするヒントが得られるのです。
【声優 4.0点】
主人公・小熊役の夜道 雪さん。
バイク乗りとしての経験も心情表現に生かす。
彼女も養成所にて、深夜アニメでキャラを作る訓練を積んだ"ちゃんとした声
優"。
だがアフレコでは、キャラボイスを封じ、自然な声を出すようオーダー。
これは礼子役の七瀬 彩夏さん、椎役の日岡 なつみさんに対しても同様だったとのこと。
この点ひとつ取っても、萌キャラを消費するアニメとは一線を画しています。
【音楽 4.5点】
OP主題歌は熊田 茜音さんの「まほうのかぜ」
歌声は優しいですが、作曲・佐々木 淳氏、作詞・きみコ。
力強いバンドソングを量産してきたnano.RIPEのコンビによる楽曲提供で推進エンジンは快調♪
ED主題歌はメインキャラ3人の「春への伝言」
最終回に近づくに連れ意図が見えて来る良作青春ソング♪
上間 彩氏のエンディングイラストが癒し。
劇伴は石川 智久氏とZAQ氏。
無音も多い本作に合わせ、BGMもピアノやストリングスがメイン。
それだけに5話の{netabare}礼子VS富士{/netabare}で多用されるロックサウンドが異彩を放ちますw
ここぞの場面ではドビュッシーやサティなどのピアノクラシックを活用。
私など冒頭の「アラベスク第1番」の夜明けで既にノックアウト♪
実際にカブから録音したというエンジン音。
その他、生活音なども生音収集を追求し、臨場感に寄与。
私のお気に入りは椎のカフェ玄関の木製ドアベルの音。
【感想】
私にとっては近年もっとも生活の糧となったアニメ。
私のメンタルなど豆腐そのもの。
雨が降っただけで気が滅入りますし、寒さ対策など考えたくもないズボラぶり。
直に熱気、寒気にさらされるバイクになど今後も乗る度胸はありません。
ですが小熊ちゃんが、カブを乗りこなすため、
時に風雨を浴びて、への字口になりながらも、
対策に奔走する奮闘ぶり。
それを見て、私も生活、頑張らなきゃと勇気づけられました。
だから私も、レトルト中華丼を湯煎した残り湯で、ゆで卵を量産し、日常に食らい付きます。
そして雨にも負けず風にも負けず、季節に立ち向かえたら、
小熊ちゃんみたいに不敵なドヤ顔決めるんだいw