ネムりん さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ハイクオリティな作画とハイエンドなストーリー展開、魅力的な演技の声優陣
スタジオぴえろ設立40周年作品。
ストーリー原案・キャラクター原案『ダンガンロンパ』シリーズの小高和剛・小松崎類、監督『ペルソナ』シリーズの田口智久。
キャラクターデザインや作風がこれらのシリーズ作品の印象そのままで、ストーリーにとても入りやすかった。
舞台設定はどこか押井守監督の『イノセンス』に似た雰囲気を感じさせ、好きな近未来SF作品なこともあり、初回から惹きつけられるものがありました。
ストーリー設定は高度に発達した社会で戦争により二つに分断された国「カントウ」とその属国となった「カンサイ」において、"アクダマ"と呼ばれる特異能力を持った者達が、人類の永遠のテーマである「生と死」にまつわる人間の存在の在り方を題材として舞台を繰り広げるバトルアクション群像劇。
対比できる『攻殻機動隊』シリーズが主体としての"電脳化"に対し、『アクダマドライブ』は客体としての"データ化"。
器が既に存在している攻殻の世界に対し、"超・量子コンピューター"という器が絶対的に必要な観点に立てば、『アクダマライブ』の世界が『攻殻機動隊』の世界よりもさらに一段技術が発展した世界だということが伺える。
推定懲役ン百年という設定も医療技術が飛躍的に進歩したか、革新的な法整備が行われ、社会貢献や国家奉仕により懲役年数を短縮できる仕組みがなされたのか、現代とは比べ物にならないくらい様々な技術が進化していることがある程度推測の域に達することができ、"医者"の縫合技術の高さや"ハッカー"のサイバネティクスな高度なスキルも説明がつく。
要するには話の機微(表面上では分からない細かな事情)を懸念する必要性を感じさせない世界観が確立されており、考えようによっては謎な部分が幾らでもアウトプットができ、論ずることが無意味だということも言える。
そんな魅力的とも言える世界が展開される『アクダマドライブ』。
考察を深めると内容が煩雑化してしまい視聴してて難しさを感じてしまうため、敢えて無駄なものを排除してシンプルに分かりやすくしているのが良かったと思えた点。
設定を難しくして世界観に入り込めなかった『PSYCHO-PASS サイコパス 3』のようにノイズを感じさせないので、アクダマ達のバトルシーンの演出や登場人物の人間味のあるやり取りが強く印象に残る。
単純に強さやカッコよさ、可愛さや美しさなど人間が持つ感情にダイレクトに訴えかけてくる。
それはもちろん表現の仕方が良いという前提に立てば音声映像の技術が高くなければ伝わってこないわけで、"運び屋"の超電磁砲や"処刑課"のビーム十手に代表される攻撃シーン、肉弾戦で飛び散る汗や血しぶき、雨の波紋の動きなどの高度な技術を持ったCGエフェクト、同じスタジオぴえろ作品『幽遊白書』に出演し、『ダンガンロンパ』シリーズでもおなじみの緒方恵美さんの演技や"運び屋"のクールで渋い演技、"一般人"の一生懸命でどこか味のある可愛らしい演技など、魅力的に感じられた声優陣。
客観的に見ても素晴らしいものを持っているから高い評価ができる。
プールに横たわる2,500人の子供を濃縮して不老不死の人間を作り出す技術。
現代技術では説明ができないダークファンタジーの要素もあり、空想の世界でありながら近未来の世界でもあるので、話が飛躍しすぎずスッと世界観に溶け込めてしまう。
そういう意味では見事に音声映像とストーリーを絶妙な域で符号させた作品と言える。
観る人によって評価が分かれてしまうのは受け手側の問題であり、どのような作品に対しても楽しもうという気概があれば発想を巡らせてある程度は楽しめるのだ。
そのことを改めて気付かされた作品。
総評すると作画に関しては、一部の近年の作品とは比べ物にならないくらい細かい部分までよく作り込まれており、スタジオぴえろの意気込みを感じた文句なしの5.0点。
ストーリーも最初の展開からは予想できない切り替わりの面白さが感じられ、{netabare}未完結とも捉えられる{/netabare}エンディングにおいて、自由を求める"アクダマ"達と決められた運命に抗う"兄と妹"の対比が人間の存在意義について、視聴者にメッセージを投げかけているようで考えさせられるところがあり高評価。
OP主題歌の「STEAL!!」はどこか渋谷や原宿のアパレル系のセレクトショップで曲が流れているような雰囲気を持っていて、好みではないがOP映像にとてもよく合っていてセンスの良さを感じた。
素直に面白かったと言える作品でした。