ひろたん さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
最終エピソード「桜Trick」を観るまでは、この物語の真意は分からない・・・
最終エピソードのサブタイトルは、メインタイトルと同じ「桜Trick」。
このエピソードを観るまでは、この物語の真意が分かりませんでした。
主人公の二人は、お互いを「特別なもの」とするために「キス」をします。
私は、てっきり「特別なもの」=「好き」だと思っていました。
これが最大のミスリードであり「Trick」だったと言うのがこの物語の面白さです。
■キスはノルマ
私は、心の内面を掘り下げていくような文学的な百合は好きです。
この手の物語の場合、二人の間は徐々に詰めていくような感じになります。
そのため、キスは、ターニングポイントやゴールだったりします。
どちらにせよ重要なイベントであり、神聖なものなのでめったに観られません。
しかし、この作品では、キスは、ノルマです。
1話に必ず1回、あの手、この手、あらゆる手段を講じてキスに持ち込みます。
このあらゆる手段と言うのがこの物語の最大の見せ場です。
でも、私はいったい何を見せられているのだろう感もとてもすごいのです。
そして、視聴を継続しようかどうかを迷うのです。
ワクチンも1回よりは2回、2回よりは3回打ったほうが、耐性がつきます。
この作品も1話よりは2話、2話よりは3話観ると、すっかり耐性がついてきます。
すると、4話目からは、普通に観れてしまうところがコワイです。
■演出について
耐性がついてくると、意外と演出も凝っていることに気づいてきます。
遠近感がおかしい空間に電柱を過剰かつ整然と並べる景色。
体の一部を一瞬アップにして表す感情表現。
スクリーントーンで背景をマスクして、人物を浮かび上がらせる作画。
人物は歩いているのに画面上は同じ所に留め置いて背景は影のみにする。
いわゆる新房昭之監督譲りの演出の数々。
ただし、それを目立たせず自然とコメディの中に溶け込ませているところがさすが。
ぱっと見、普通のコメディですが、実は、それとは一線を画している演出の数々。
話の途中から、「へぇ、こう言う見せ方もあるんだなぁ」と感心させられてきます。
また、花びらを使った演出もとても綺麗でした。
第1話、主人公二人が舞い散る桜に囲まれるシーン。
第11話、主人公の姉が自分の気持ちに気づき、バラの花びらに囲まれるシーン。
最終話、主人公二人が舞い落ちた桜の花びらに飛び込むシーン。
■桜Trick
最終話は、最大のミスリードに対する答え合わせ。
正直、それまではネタでしかないエピソードの数々。
最後だけ、妙に文学チックな命題への挑戦。
そうかと言って、重くはせず、それまでの軽やかさや爽やかさは維持する徹底ぶり。
第1話と1年後の最終話を同じ桜でつなぐ。
しかし、主人公二人の気持ちは最初と最後で異なる。
第1話で桜が二人に見せた錯覚。
最終話で桜が二人に行った種明かし。
まさに「桜」が1年をかけて見せた「Trick」。
私は、意外と楽しめた作品でした。