STONE さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
とりあえずの簡単な感想
原作は未読。
以前、何かのレビューで「文系、アート系をモチーフにした作品が増えてきた」みたいな
ことを書いたが、その手の多くの作品がアニメ映えもあってか、音楽や芝居など動的要素を
モチーフにしているの対して、本作は絵画という静的なモチーフ、それも漫画やイラストと
いったアニメと親和性の高いジャンルではなく油絵という部分がなかなか他の作品では
見られないものだったため、その辺は非常に興味深かった。
自分自身は絵を描く人ではないので、絵画などは感覚的に見るだけで終わってしまうのだが、
東京美術学院の講師である大葉 真由の指導シーンなどでは絵の見方の技術のようなものにも
触れていたりして、結構学ぶべき要素が多かったのも嬉しいところ。
やはり以前、音楽もののレビューだったかで、「作品世界で良いとされるものは、視聴者も
良いものとして感じ取れることで作品自体の説得力が増す」みたいなことを書いた。
音楽ものなら音自体は良い演奏や歌唱を乗っけてやればいいわけだが、絵画の場合は
アニメ自体が絵ということもあって、「その辺はどうするのだろう?」という興味があった。
例えば「冴えない彼女の育てかた」、「Re:CREATORS」、「僕たちのリメイク」なども
絵の上手いキャラが登場したりするが、これらのキャラの描く絵は漫画、イラストといった
ポップカルチャーの範疇にある絵ゆえにアニメ作画の延長線上にあってもさほど違和感は
なかった。
その点で、本作は「アニメとしてどう油絵を表現するのだろう?」と思っていたら、どうも
本当の油絵を乗っけてきたようで、これは原作もそうなのかな?。
個人的にはさほど違和感を感じることなく、かつ作品に説得力を持たせることにも
成功していたような印象。
ストーリー的には主人公の矢口 八虎が絵画に目覚め、芸大入試で合格するまでと比較的
まとまった内容。
もっとも時間の経過が早く、この辺はテンポが良いと言うより、中抜け感が強かった。
絵を描く喜びなどより、創作の苦しみや受験の追い込み、それに伴うストレスなどが
描かれており、全体的には重苦しい雰囲気が続くが、その分キャラ達の真剣度や真摯さが
伝わってきて、この雰囲気は嫌いではない。
高校生キャラに関してはなかなかアクが強い者が多く、そういったキャラはまだ高校生とは
言え、「芸術家」といった感じ。
とは言え、「いかにも変人です」といったフィクション作品ゆえのデフォルメされた
キャラではないために、やけに生々しさを感じる。
こういったキャラの存在が作品を面白いものにしていたが、身近に鮎川 龍二や高橋 世田介が
いたら、めんどくさいだろうな、という感も。
こうした曲者キャラに対して、八虎は絵に触れたのが遅かったこともあるのか、常識人的な
風情を一番強く感じるが、それゆえに曲者達に囲まれていると浮いているように見えるという
面白い構図。
ただ八虎も八虎で独特の感じ方や捉え方があり、彼のモノローグなどはその辺が読み取れて、
なかなか興味深いところ。
少年少女の成長譚的側面のある作品は彼らを導く良い大人キャラの存在があると、より作品に
深みが増す印象があるが、本作に関しては高校教師の佐伯 昌子や東京美術学院の講師である
大葉など、良いキャラだらけで言うことなし。
こと八虎の成長という部分に関してはこういった先生キャラや切磋琢磨する受験生
キャラだけでなく、歌島、恋ケ窪、純田といった友人、先輩である森 まるの存在も
大きかったりする。
男女キャラがバランスよく出てくるが、恋愛関係は皆無。まあ、これだけきつい受験じゃあ、
そんなことにかまけている暇はないか。
2022/01/27