ウェスタンガール さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
今は昔
あるエピソードを観ながら、昔々国語の時間に音読させられた『杜子春』を思い出した。
そういえば『酒蟲』と言うお話もあったな。
そして更に、その芥川龍之介が「美しいなまなましさ」を感じると、そして「野蛮に輝いている」と評した『今昔物語』の世界が浮かび上がる。
深い山々や谷に、あるいは海に囲まれた地に生まれ、そして張り付くようにして世代を重ねてきた我々の祖先の物語である。
きっとそこには、神道や仏教、あるいは儒教と言った外来のものが入り込み、いかに上書きしようとも、決して消し去ることのできない根源的な畏れや信仰めいたものが存在し続けてきたに違いない。
人々は自然に対しては実に無力であると、その背後に、人智を超えた何かを感じてきたのである。
そして、科学という新しい信仰を持つに至った現代であっても、我々の心の内には、超自然的なものを否定することを躊躇させる何かが存在し続けているのではなかろうか。
それは、日本人が持つ根源的な性情とでも言うべきものであり、その意味で、「今となっては昔の話」ではなく、「今も昔も変わりなく」と言った方が良いのかもしれない。
そしてそこに、希代のエンサイクロペディストである南方熊楠のライフワークであった粘菌、その摩訶不思議な生態をモチーフにした“蟲”の描写と、観察者たるギンコの視点を結界にしたストーリーが紡がれてゆくのである。