ウェスタンガール さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
Waltzing Matilda ウォルシング マチルダ
エグザイル、“追放されたもの”あるいは“放浪者”であろうか。
何より、ここに“ラスト”が付く“厨二”臭さではある。
しかし、彼らの物語が進む中、こだわり抜かれた世界観の根底を流れる精神に共鳴する旋律が。
“Waltzing Matilda”である。
オーストラリア国民の愛唱歌であり『非公式の国歌』あるいは『第二の国歌』とも呼ばれる名曲。
そこには、本国イギリスの植民流刑地であったオーストラリアの歴史が詠み込まれている。
それは、同じ白人であっても、権力を持っているスクォターと力の弱いセレクターに分かれ、理不尽に虐げられた歴史である。
その最下層に位置したのが、いわゆる季節労働者であった“スワッグマン”たちであり、この歌の主人公である。
Waltzing Matilda♪
マチルダ担いで放浪の旅 誰と一緒に旅に出ようか?
羊が沼地にやってきた
大喜びで捕まえて 羊を袋に詰め込んだ
「お前と一緒に旅に出よう」
馬で主人が駆けつけた
後から警官やって来た
「誰の羊を袋に入れた?」
沼へ飛び込む放浪者
「生きてお前らには捕まらねぇよ」
(世界の民謡・童謡 worldfolksong.comより)
培われた独立独歩、反骨精神とも言うべきオージーの心意気を感じるのである。
エグザイルの民に被るのである。
まあ、手前の勝手な思い込み感想はこのあたりで…。
あとはもう世界観を隅々にまで落とし込んだ設定作画の素晴らしさと、かのヤスダスズヒト氏が師と仰ぐ村田蓮爾氏の手になる美麗なキャラに酔いしれるのみである。
凡百のヲタクが何度転生を果たそうと、その足元にも及ばぬ魂の持ち主である前田真宏氏と鬼気迫る造形で未来兵器の世界観に新地平を示してくれた小林誠氏、この二人のプロダクションデザイナーの執念こそがこの作品の魂そのものといってっも言い過ぎではない。
ちなみに、みんな大好き『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のコンセプトアートアンドデザインの為に、ジョージ・ミラー監督が三顧の礼を尽くし、前田氏を迎えたことは有名なお話だ。
という訳で、何だか不明な一部の展開は脇に置き、一気呵成にチェッカーフラッグを駆け抜けた作品に、美しき工業デザインの嚆矢、二つの大戦の狭間で花開いたアールデコ様式を意識したヴァンシップたちのデザインに最大級の賛辞を贈るものである。
そしてそれらのモチーフが世界で最も美しいグランプリカーである アルファロメオ・P2、そして、前田氏にとっては因縁浅からぬ『紅の豚』でも有名な水上機、シュナイダー・トロフィー・カップの優勝機である マッキM.39 であることは是非にも付け加えなければ。