ゲリオ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
濃密な全23話
2021年1月からの第1クールからコロナでの延期を経て10月からの第2クールまで、濃密な全23話を堪能できた。
ストーリーも面白かったが、ともかくアニメーション作品としての出来が素晴らしかった。
ラノベ原作アニメの中では史上最高傑作と言えるのではないか。
ほとんど文句の付けようがない傑作だったと思う。
「異世界転生」ならびに「なろう作品」のパイオニア的存在だということを事前情報で知り、そんな古めかしい作品が今更アニメ化かよと懐疑的に思ってたが、実際には既存異世界作のどれよりも面白かった。
参考にされてるはずの作品が一番ってどういうこと?って不思議なくらいで、まさに原点にして頂点と言えた。
もちろん映像や演出が現代アニメーションの最高峰レベルだったことも高評価に大きく影響している。
アニメしか見ない自分は、いわゆる「なろう作品」の原作は総じて未読だが、断言して言えることはアニメ制作陣が原作より何倍も素晴らしいものになるよう練りに練った作品作りを心掛けたであろうことだ。
例えば、本アニメには決まったオープニングが存在しないこと。
各話冒頭のアバン後に曲は一応流れるが、山川の自然風景や新たな都市の風景をバックに登場人物のやり取りが描かれる。オープニングも本編の一部、あるいは毎回特殊オープニングと言える手法が用いられていた。
それだけで一切の妥協を許さない制作陣の力の入れ具合が理解できるだろう。
作画は常時高品質で特に戦闘シーンは圧巻の一言。第21話オルステッドとの戦いはジャパニメーションの粋を結集した劇場作品を凌ぐクオリティと話題となった。
3人登場するヒロインはどの子も魅力的で三者三様。
個人的にはロキシーというキャラが大当たりでした。
お姉さんぽい一面もあり、逆に幼い一面もあり…なにより見た目と声が可愛い。そしてまさかのアラフォー。
とはいえ、全編を通すと大半のヒロイン成分がエリスに占められてしまっていた。
2クール目はずっと一緒だったし、彼女が正ヒロイン化したのは妥当な流れ。
一番最後に登場して第一印象最悪だったエリスも心身ともに立派に成長して…成長して…最後には…まぁ、みなまで言わないが…
(ところで15歳のヒロインが肉体年齢12歳の主人公と合体するって、BPO的に大丈夫なんすかね?←結局言ってしまった。)
幼少時代のヒロイン、シルフィも非常に可愛らしいキャラだったが、アニメ内のシナリオ段階では活躍は数話に止まった。続編での活躍が待ち遠しい限り。
ひとつだけ、人によっては不快に感じられる要素だったのは、主人公のルーデウスが子供に欲情する変態だったということか。
金髪イケメンに転生したとはいえ、元30代無職デブが10代前半の少女たちに性的悪戯をかますのは不快感がなかったわけではない。
妄想するだけならまだしも、この主人公の場合は実際に寝てる少女のパンツを脱がすなど行動に移してしまうから、さすがにタチが悪い。
この点は「真面目な正義マンだけが主人公じゃない」という作者のアンチテーゼたる主張と受け取ることで強引に納得することにした。
しかしながら特に女性視聴者からはやはり非常に大きなマイナスポイントとなり、シナリオ要素としては全方位有効にオススメできるアニメではなかったかもしれない。
声優さんのキャスティングも素晴らしい。
ルーデウスのモノローグと転生前のブ男、いわば陰の側面を演じた杉田智和さんはハマり役。本作を名作たらしめた要因の半分は杉田氏の功績と言っても過言ではないかも。
ルーデウス本人の声を演じた内山夕実さんは、昔から実力派女性声優として活躍していたが、ここにきてキャリアを代表するキャラクターに恵まれたね。
杉田氏と内山さん、2人1役が見事噛み合っていて作品をより良いものに昇華させたと思う。
続編については、まず間違いなく作られるだろう。問題はいつになるかだ。
このアニメの台頭によって、ラノベ原作アニメの勢力図は大きく塗り替えられたかもしれない。
昨年までは未だに"ソードアート・オンライン"がラノベアニメの頂点にいた気がするが、はっきり言って内容もアニメの出来も段違いで無職転生に軍配が上がる。
今後は本作が何年もかけて定期的に制作されるロングランシリーズになってほしいが、SAOと違って○○編のようにはっきりと物語が区切られてないのが若干ネックとなりそう。
完結までいかないと区切りがない1つの人生記だから、合間を置くと内容を忘れることが心配される。
なので早めの2期をお願いしたいね。
自分は間違ってもコミカライズなどに手を出さず、アニメ一本でいきたいので。