ネムりん さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態：観終わった
リアル交番勤務が面白い
警察という組織が大の苦手でどれくらい苦手かと言うと、警察車両の目の前で右折禁止の道路を右折して当然呼び止められるのですが、雪が降っていたことを理由に標識が見えなかったと主張し続けて小1時間、未必の故意を理由にあーだこーだで口論し続け絶対に点数稼ぎのために切符切らさせまいとクソ寒い中、車の外で震えながら抵抗し続ける警察官を尻目に論破してやったくらいに良い印象を持っていないのだが、イメージだけで一部の市民から忌み嫌われ、そんな渦中にあるゴミだの給料泥棒だの揶揄されながら現職で働いていた作者の目線で描かれるリアルなやつが、実際にはものすごく苦労している警察官の姿がそこにあって、『ハコヅメ』を通じてそのお仕事に少し共感が持てるようになりました。
昔やんちゃしてた若い頃に400ccのバイクを賊に盗まれ、友達と手分けして見つかったバイクの姿がマフラーちょん切り改造されて悲惨な状態で戻ってきたのだが、警察に容疑者特定するための指紋採取をお願いしていたところ勝手にバイクを処分されてしまいふざけるなよと猛抗議したところ、偉そうなおじさんが出てきて言いくるめられてなかったことにされてしまい、苛政とも言える非道な行動をとるその憎き警察がですね市民のために奮闘している姿が描かれていて、実はおまわりさん長時間勤務が常態化して、まともに寝ないで犯罪者予備軍確保するために日々戦い続けているわけです。
だからあの副署長不出来な部下も抱えているしストレスで頭ハゲちゃってるのかな、リアップ塗っても髪の毛生えてこないから威厳を保つために口ひげ貯えて箔を付けているのか、ケンコバさんの声が妙に合ってたし、特捜の人今時ポマードにリーゼントで頭固めてたけど、ストレスが溜まるとやっぱあーなっちゃうのか、あれは威力業務妨害にならないのかとかリアルすぎるヒエラルキー集団の姿がそこにあって、つまりは物語の内容に引き込まれていくわけです。
藤部長は典型的なパワハラ上司で私の最も苦手とするタイプなのですが、あれくらい殺伐としてリーダーシップがある（？）人でなければ警察という組織では長い間上に立ってやっていけないのでしょうね、以前警察に事情聴取を受けている時に仕事が残業続きで大変だということを取り調べ官が言っていたけど、公務員は年を重ねると責任感は増すが仕事をしなくなる上司がいる職場も実際にはあって、警察という組織はその逆で責任感が増すほど仕事も増えるし残業続きになるそうで、要するに常にストレスを抱えながら仕事をしているわけです。
こういう不規則勤務だから川合ちゃんが瞬間辞表を提出したくなる気持ちも分かるし、孤独死の鑑識の話やお犬様を離して全力疾走してるやつとか想像してた以上に大変な現場だし、いろんなものを抱えて仕事やっているんだなっておまわりさん今まで恨んでごめんなさいと改心して、目の敵にしてたのが瘧が落ちたように心が打ち解け、遂見入ってしまうヒューマンドラマを描く内容がリアル交番勤務ってなんか仕事してていいなって思いました。
牧高さんの大麻臭で寝れないネタとかもリアルで面白かったし、この顔見たら110番の話で川合ちゃんのド下手な人相書きがあのようなエピソードで展開されていくとは想像できなかったし、オチもしっかりしていて作者ならではの視点がとても良かった。
警察や犯罪者目線だけではなく、自分のような悔しい思いをした側の被害者目線で描かれているところも、人物の心理描写が現場ならではの雰囲気がすごく伝わってきて視聴してて新鮮味があった。
ミスリードを誘う警察の対応がこのような形で解除反応を示すわけだが、そこには市民との絆を結ぶ本当に大切なものが何かを諭すような作品に対する作者の思いが詰まっていて、作品のネタにするには十分すぎるくらい面白い内容で、つまりこれ面白いから観た方がいいよとなるわけです。
随分前に放送していた『逮捕しちゃうぞ』みたいな萌えギャップは感じられないのですが、『tact op.Destiny』でコゼット役やってた若山詩音さん演じる川合麻依のへたれっぷりが顕著で演技上手いなぁと思いつつ、藤部長に叱咤されながら周りの警察官とともに奮闘していく姿が魅力的に映る良いお話でした。
