薄雪草 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ふたりの本頭。
"ほんがしら" と読みます。
雛人形や市松人形、日本人形などの頭(かしら)のことを言います。
江戸時代の中期以前は、木彫をベースとした「木彫頭(もくちょうがしら)」が主流。
仏像、仁王像などは木彫が多いですよね。
その後、桐の木の粉と糊を混ぜた桐塑(とうそ)をベースとした「桐塑頭(とうそがしら)」が取って代わります。
昭和の半ばまでは、お人形のお顔の多くは、桐塑頭で作られていました。
高度経済成長期に入ると雛人形の需要が多くなってきます。
桐塑頭では生産が追い付かず、新しく開発された製造方法が「石膏頭」でした。
シリコンの型に石膏を流し込んで、型の通りに制作できるのが石膏頭。
この石膏頭の "名前" として考え出されたものが「本頭(ほんがしら)」というわけです。
かつて高校で、彫像に取り組んだ折にこのことを知りました。
ですから、個人的に本作はビンゴです。
前クールのブルーピリオドに続き、視聴セレクトとなりました。
ベースは、"オタク?男女"のシンパシーが共鳴し合うお話みたい。
この先、軽妙なラブコメにも進展していく気配ですね。
それぞれの目的を追求し、それぞれに技術を育むなら、頭師もコスプレも立派な職人さんの生き方です。
創造性を歓びあい、豊かなカルチャーの支え手にも繋がっていくようなお話になるなら、素敵だなって思います。
ふたりが目指す "本物" への追及はどんな仕切りで作られていくのでしょう?
その型は、すごく似ていくのかもしれないし、全く違う個性で表現されるのかもしれません。
楽しみです。
期待感を込めて視聴していきたいと思います。
(8話。)
作画が変わりました。
人物のイラストレーションが、より深く自然になりました。
デッサンの力ですね。
そのために、動画に、ナチュラルな滑らかさが加わりました。
若々しさと、初々しさが、とても眩しく表現されています。
波頭に反射する光が、逆光の推しをさらに強める演出。
なるほど~、と感じました。
(観終わりました。)
{netabare}
コスにも、恋にも、まるっきり浮かれっぱなしの海夢ちゃん。
水着回の押し出しも、キャラへの愛の発露だと思えば、彼女にしてみれば待ちに待った歓喜の瞬間。
でもそれは五条君との口約束を待ちきれなかったわけで、マジに秒で五条君に逢いたい!って気持ちは "どストレート" だったわけですね。
五条君にとっては、喜多川さんは真っすぐな人っていうイメージでしょうから、「行動力!」はそのまま誉め言葉なんでしょう。
コス趣味って、ヒーローやヒロインへの憧れの "沼" みたいなところがありますし、かたや人形作りも世界一って言われてなんぼの職人の世界なので、"一途さ" って意味合いでは、二人とも似た者同士。
ちゃんとした共通項があるんですね。
それにしても海夢ちゃんの行動力はジェットコースターみたいに五条君を振り回すし、なんなら一緒に恋落ちしちゃったりみたいな思惑も見え隠れしたりして。
たじろぎっぱなしに見える五条君も、一目惚れさせる腕前を身上とする職人気質の心情持ちでもあるから、ひとえに真面目に受け止めようとします。
お雛様への目利きは幼いころからの訓練で身についているから、喜多川さんや乾さんの願いにはいつだって敏感に反応できる五条君。
まるで、生きているお雛様をプロデュースしているみたいですし、おじいちゃんの指導の一環でもあるから、苦労を苦労とも見せず、変なエロ味も感じさせません。
そうは言っても15歳のスイッチは、生身のセクシャリティーには息も絶え絶えに気圧されっぱなし。
陰に日向にアオハルしているところがティッシュ・・・いえ、コケティッシュな演出で楽しかったです。
雛飾りは1年に1度の女の子の節句ですし、期間限定の晴れの舞台。
等身大のコスプレなら、なおさら、なりたい自分へのリアルな憧れです。
自分のことのように思えば誤魔化しは効かないし、誠心誠意に設えようと力を尽くすのも、作り手の五条君には真っ当な道理なんですね。
"着せ恋" は、好きなものを好きって言える勇気を支え合うお話だし、キャラを通じてニッチなサブカルチャーを愛で合うお話でもあります。
だから、衣装を作って終わりとか、写真を撮って終わりっていう一方通行的な展開なままでは済まない奥深さのあるカテゴリーではなかろうかと思います。
ジュジュさんは、アウトな尾行とか腹立ちまぎれの強迫とかもコスプレ愛で押し通してきたし、廃墟スタジオの空気にも耐える頑張りでした。
けれども、湯上がりを五条君に見られたり、大きな手に包まれたり、素敵な衣装にも包まれてしまっては、"ま?" なんて言えそうな恋の雰囲気です。
なんたって、五条君の手作りコスチュームは、彼女のサイズを知り尽くした世界唯一のオリジナルモデル。
自意識が強そうなジュジュさんですが、五条君の衣装づくりの細やかな配慮には絆されたみたいだし、キャラの魅力を引きだす創意性にも惹かれたりしていたわけです。
五条君から「行動力!」って言われて、微妙な表情だったのも、なまじなことでは他人に頭を下げられない自分ファーストが表現されてあって、微笑ましかったです。
心寿ちゃんは、自キャラへのコンプレックスと、姉への遠慮があったわけだけれど、本当に楽しかったのはカメラのコーチングもそうなのだろうけれど、もっと言えば、女子校から飛び出てセクシャリティーに触れたことだったり、人の心の中には見えないものがそれぞれにあって、ジェンダーフリーでもいいってことが分かったからじゃないかな。
姉誉め・大好きっ子ぶりは、実は自分にもコスプレへの憧れがあっての裏返しだったってことだし、そんな姉妹だけの世界から、新しい出逢いと仲間づくりの居場所が見つけられたわけですから、本当に良い "お兄ちゃん愛" のご縁で結ばれたんじゃないかなって思います。
そのビスクドールたちは、なりたい自分をコス仲間の中に見つけられたし、なによりも魅せあえる喜びに触れることができました。
その頭師見習いも、衣装や化粧の出来映えに彼女たちの喜ぶ笑顔を願いながら、斬新に腕を振るう幸福感に浸ることができました。
コスプレには、自分の気持ちをキャラに見つけ、その中に自分らしさを見つけられる幸せがあるのだろうと思います。
そんなコスチュームに宿る想いは、憧れと美しさへのエッセンシャルなのかもしれませんね。
鼻緒が指のまたを痛めたおかげで、またまた五条君に乗っかっちゃった海夢ちゃん。
寝床に入っても、スマホを介して、ふたりの本頭は、持ちつ持たれつ夢うつつ。
寝ても覚めても、お内裏様とお雛様のような間柄になれるといいですね。
{/netabare}