ひろたん さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
コツコツコツコツ・・・。揃わない足音、ばらばらの気持ち。
実は、この作品は、以前に観たことがあります。
しかも、当時は「響け!ユーフォニアム」と言う作品自体を全く知りませんでした。
普通は、TVシリーズを知ったうえで観る方がほとんどではないでしょうか?
いかに自分がタイトルとキービジュアルだけでジャケ買い視聴していたかですね。
でも、この作品に関しては、それで正解だったんです。
内容は、タイトル通りで、絵本の物語を現実に投影したようなものでした。
そして、キービジュアルで感じた通り、美しい映像の作品でもありました。
つまり、本編を知らなくても1本の映画として十分楽しめる作品だったのです。
ファンにしか分からない、ファン向けの劇場版とは違って、かなり好印象でした。
今回、「響け!」本編を観たので、あらためて観ることにしました。
物語の最初は、みぞれと希美(のぞみ)が連れ立って音楽室に向かっています。
途中、みぞれは、中学の時に希美と歩いていたときのことを回想します。
そして、みぞれは、音楽室の扉の鍵を開けるところで躊躇します。
それを見た希美は一瞬何か思うところがあったようですが気にせず待っています。
このシーン、これからこの二人に起こることを予感していて好きなんですよね。
音楽室に入ったらなにかあるのでしょうか?
回想の中の二人のような今まで通りの関係でいられなくなるのでしょうか?
そして、音楽室の扉は開かれ「disjoint」の文字が・・・。なるほど!
ちなみに、みぞれが扉を開けるのを躊躇した理由は、他にもあるように思えました。
この作品は、こう言うところが上手いと思います。
ただ二人が連れ立って音楽室の扉を開けて中に入るだけです。
でも、ちょっとしたしぐさや表情から、二人の間の気持ちのすれ違いが分かります。
「リズと青い鳥」は、物語の最初に説明シーンがあります。
{netabare}
ずっと独りぼっちだったリズのところに、ある日、知らない少女がやってくる。
二人はすごく仲良くなって、一緒に暮らし始めるけど、最後には別れる。
その少女とは、実は青い鳥で、リズのもとから飛び立っていってしまう。
{/netabare}
中学のときまで友達がおらず、ずっと独りぼっちだったみぞれ。
そこへやってきて吹奏楽部に誘ったのが希美。
この物語では、リズにみぞれを、少女に希美を重ね合わせます。
みぞれにとって、希美は、かけがえのない大切で大好きな人です。
そして、みぞれは、自分は鳥カゴ、希美は青い鳥だと思っています。
それは、鳥カゴの扉を閉めて、大好きな希美をずっと閉じ込めておきたいからです。
みぞれが最初に扉を開けることを躊躇したのは、これを暗示していたんですね。
しかし、実はこれが最後にどんでん返しだったところが、この物語の面白さでした。
終盤で二人がそれぞれ別の廊下を歩き、反対の方向に曲がるシーンが印象的です。
序盤で二人が一緒に歩いているけど微妙にずれていた足音のシーンと対照的でした。
二人がやっと自分を取り戻し、それぞれの道を歩みだしたことを象徴しています。
とても好きなシーンですし、つくづく物語の構成が上手いなと思わされます。
最後は、なんとも言えない爽やかさを感じることができます。
それは二人の間にある澱(おり)が綺麗に洗い流されたことを感じられるからです。
学校帰りの二人の足音は、みごとに揃っていました。
私はこの爽やかさがとても好きです。
「リズと青い鳥」では、最後、青い鳥が飛び去って行きます。
私は、過ぎ去る青春のイメージもそこに重ね合わせました。
この物語では、せっかく仲良くなった友達でも、いずれ進路は別々になる。
当たり前のことですが、そこには、青春の終わりを感じさせる儚さがあります。
この作品は、正直、派手さはありません。
しかし、とても味わい深い作品だったと言うのが私の印象です。
この後、「誓いのフィナーレ」の演奏をもう一度観たことは言うまでもありません。