「劇場版 響け!ユーフォニアム ~誓いのフィナーレ~(アニメ映画)」

総合得点
87.5
感想・評価
424
棚に入れた
1960
ランキング
152
★★★★★ 4.3 (424)
物語
4.1
作画
4.5
声優
4.3
音楽
4.4
キャラ
4.3

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ネタバレ

ひろたん さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:----

本当の悔し涙も、本当の嬉し涙も、本当に頑張った人にしか流せない・・・

この作品は、いきなり、ある意味衝撃的(笑)なシーンから始まります。
高校生の青春ものとしては、避けて通れない要素ですね。
これについて、主人公久美子がどのように決着をつけるのかも見どころの1つです。


■先輩になると言うこと

新入生が怖い、新入生が面倒くさい。
でもやっぱり、新入生にだって思いがある。
物語の前半では、そんなことを実感させてくれました。

久美子は、今まで、所詮1年生でした。
吹奏楽部の運営や先輩たちの苦労なんて、分かっているようで、分からない。
でも、それでいいと甘やかされている立場でもありました。

しかし、久美子は2年になり、新入生が入ってきます。
久美子たち2年生にとっては、初めて先輩になります。
中学生のころのような単純な子供どうしの先輩後輩ではありません。
子供から大人の変わっていく、そんな過程の先輩後輩です。
大人、つまり、"大人しい"に象徴されるように建前が1つのキーとなります。

今回、久美子にも、「奏」と言う同じ楽器の後輩ができました。
この二人が本音と建前の狭間で葛藤する様子が描かれています。
そして、前半のクライマックス。
最初は、二人の建前どうしがぶつかり合います。
それが、ついに本音どうしのぶつかり合いに発展していきます。
その様子は、鬼気迫るものがあり本当に圧巻でした。

1年生と3年生の間、あたり前にあるのが2年生。
でも、実は、一番、成長できるのがこの年なのです。


■「みぞれ」と「希美」のデュエット

この作品では、自由曲「リズと青い鳥」がフルで描かれていました。

それにしても難しい曲ですよね。
静かなところやソロもたくさんある物語的な曲は、なかなか手を出しずらいです。
一人ひとりの技術が高くないとすぐに粗が目立ってしまいます・・・。
逆に分かりやすいメロディを力で押していく派手な曲の方が簡単です。

演奏の方は、圧巻のリアリティでした。
麗奈のミュート付きで入ってくるトランペットのアクセントがいいですね。
また、ティンパニの演奏シーンがすごくかっこよかったです。

そして、この曲は、なんといってもオーボエとフルートのデュエットです。
まるで、みぞれと希美がお互いなにか通じるものがあるような。
そんな会話のような掛け合いがすばらしかったです。

「2」前半のエピソード以上のなにかがこの二人の間にはあったんでしょうね。
それが、別作品「リズと青い鳥」として用意されているところがにくいですね。


■本当に頑張った先にあるもの・・・

この作品には、TVシリーズ以上に刺さった言葉がありました。
本番前の舞台袖で、奏の質問に対して、久美子が答えているシーンです。
{netabare}
奏  「ずっと熱心にユーフォを吹いてきたのですか?毎日、毎日そんな真剣に?」
久美子「真剣になったのは高校からかも」
奏  「それはどうして?」
久美子「中学最後のコンクールの時に、私、泣けなかったんだ・・・」
{/netabare}
この久美子の言葉は、聞いていて胸を締め付けられる思いです。

本当の悔し涙も、本当の嬉し涙も、本当に頑張った人にしか流せない・・・。

はたして自分はそんな青春をおくってきたのだろうか。
答えは、否です。
だからこそ、この作品が心に刺さってとても痛いのです。
青春の思い出は、懐かしさばかりではありません。
ときには、鋭い刃物のように心を切り裂いてきます。
できることなら、昔に戻ってやり直したい。
そして、悔し涙でも、嬉し涙でも、どちらでもいい。
本当に頑張った人だけが許される涙を流したい。
そう思わされる作品でした。


■久美子3年生編に期待

最後のシーンで、次の作品につながる大切なことが明かされます。
{netabare}
久美子が部長になります。
{/netabare}

ここで1つハッと気づくことがあります。
この物語は、久美子が1年生で入学したところから始まりました。
そして、そのときは、個性豊かな先輩もたくさんいました。
それが、気づいたらもう3年生です。
もう上には先輩はいません。
そして、最後のコンクールです。引退です。卒業です。
残酷なまでに青春の過ぎ去る速さを見せつけられた気がしました。

私は、中学生のころに一度だけ東海大会に行ったことがあります。
この作品で言うところの関西大会です。
{netabare}
今回、北宇治高校は、全国に行けませんでした。
私も残念ながら全国には行ったことがありません。
{/netabare}
こうなったら、3年生の久美子たちに、ぜひ全国に行ってもらいたいです。
そして、金賞をとってもらいたいです。
「金」と「同」じと書いて「銅」、ではなく、本当の「金」です。
自分がかなえられなかった夢を託したくなります。
これほどまにでアニメに感情移入するとは思いませんでした。

この作品も最後に引退する先輩が後輩に夢を託します。
こうやって、先輩から後輩に技術だけではなく、夢や魂を"伝えて"いきます。
それが、"伝統"です。


■まとめ

この作品は、劇場版と言うとても尺の短い話でした。
しかし、そんな短い中でこのシリーズにとってとても重要なことを扱っていました。
1つ目は、自分が名実ともに先輩になること。
2つ目は、先輩から"伝統"を引き継ぐこと。

この2つが揃ってはじめて、3年生が本当の意味で主役になれるのです。
この物語は、3年生になる久美子にとって、重要な年だったのです。

そして・・・、
本当の悔し涙も、本当の嬉し涙も、本当に頑張った人にしか流せない・・・。
それを後輩と共有し、覚悟を決めるためにも重要な物語だったと思うのです。
こうして、この物語は、「"誓い"のフィナーレ」を迎えたのでした。

投稿 : 2022/01/11
閲覧 : 312
サンキュー:

30

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