いこ〜る さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
予想外にとても切ない物語
予想に反してとても切ない物語だった。
多分話の骨格をなす情動は『喪失』と『再起』的なものだと思う。 {netabare} タクトが音楽を失い、コゼットが取り戻させてくれ、そのコゼットを失い、運命がふたたび音の火を灯し、そしてその運命が消え、それらが戻るまではとアンナが立ち上がる。 {/netabare}
幾重にも巡らされた喪失と再起の縁。生命と使命の輪廻。
物語の主旋律は常にこのテーマが鳴っていた。
さらに師弟という、日本のアニメではなかなか語られない関係性も織り込まれていて『愛』の概念を広く持っていたのも良かった。
それによって戦う理由が深化するからだ。
{netabare} 恋人(だったかもしれない)コゼットを失った怒りが戦う理由ならそれは私憤であり復讐だ。
だがそれだけでなく世話焼きのアンナや父の音楽を愛する人々、父の弟子でありタクトの師にもなるレニーなどを配することで、家族愛・隣人愛・師弟愛が描かれ、それらを通じて『音楽』を取り戻すのだ!と戦いの理由が昇華される。その強さが最後のザーガン戦に生きてくる。こういった丁寧な構成がとても良かった。 {/netabare}
作画の良さも特筆ものだろう。2021秋クールは良作画の作品が多かったがスタイリッシュさにおいてトップだったと思う。
で、その作画力が支えるキャラデザの良さも出色で、特に赤を基調にした運命のデザインの可愛さカッコよさは当クール随一だ。この外見に戦場ヶ原ひたぎ的減らず口と、セイバー的腹ペコの属性を当てられては降参するしかないだろう。
キャラといえばソシャゲ販促アニメはゲーム登場キャラが大量に出てきてしまうことがよくあるが、この作品はそれを排し最小限に収める英断を下している(最小限ではあったが例えばワルキューレの使い所!良かったですよね?)。おかげで前出の丁寧な構成が可能になったと思われるので、同ジャンルのアニメは今後参考にしてほしい。
(※よく出来たソシャゲ販促アニメといえばちょうど一年前の<アサルトリリィ>が思い出される。あれはめちゃキャラを出したけどメリハリつけてたから問題なかったが、大して活躍させないなら出さない方がいいのではと思う)
音楽は…そもそも『音楽』がメインテーマなので悪かろうはずがない。いずれも使い所を心得た心憎いばかりの選曲で、ムジカートと無関係でもガーシュウィンを使ったりとても良かった。
劣らずOP・EDも良曲で、特に中島美嘉は久しぶりに聴いたけど相変わらずいいなぁと思う。
声的にはコゼット・運命の若山詩音が良かった。なんと言っても<DYNAZENON>の南夢芽だもの、そりゃ良いよね。
以上、2021秋クールはこれと<古見さん>が私的2トップ。やっぱりきちんと作ってあることって大事だ。