ひろたん さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
みんなで音を楽しもう。それが音楽。みんなで音を響かせよう。それが吹奏楽。
まず、すごいのは、春からコンクールまでがわずか6ヶ月の出来事だったことです。
内容が濃密すぎて、もっと長い物語のように感じました。
でも終わってみて気づきます、あっと言う間だったことを。
みんな怖かったんです。
コンクールに出ることではありません。
コンクールが終わってしまうことがです。
みんな分かっているんです、それが何を意味するかを。
ずっとここにあると思っていた青春。
ずっと続けばいいと思っていた青春
でも、それに終わりがあることに気づいたとき、本当の意味で青春になります。
この物語を観ていて、そう感じました。
この物語は、第1話がすばらしいです。
まず、いきなり雪のシーンから始まります。
そう、これはもう、コンクールも含め、すべてが終わっている時期のはずです。
そして、ここから回想が始まります。
王道の始まり方です。
しかし、これほどまでにここまでの道のりを予感させる始まり方はありません。
そのとき主人公「久美子」が持っていたノート。
その秘密は物語の中で明かされていきます。
しかし、その存在を最初のシーンに持ってきたこともすばらしいのです。
その理由は、この物語を最後まで観ると分かります。
また、第1話では、部員それぞれの人間模様もピックアップしていきます。
最後は、これから起こることを予感させる久美子のモノローグで締めくくります。
この第1話だけで、かなりの満足です。
そして、第2話は、いきなりの水着回・・・。
なんと言う、サービス精神!?
でも、これは、これから怒涛の展開がまっていることを暗示しています。
つまり、これから先は水着どころの話をしている場合じゃないと言うことです。
この物語ですごいのは、心情変化に唐突さがないところです。
例えば、第10話で久美子とあすか先輩がぶつかるシーン。
ちゃんと数話前、いや、実は最初から少しずつ準備して積み上げてきています。
そして、これ以上積みあがらなくなったところで一気に話を展開します。
観ているこちらも、それを予感もするし、心の準備もできています。
そして、その時がやってくると、すっとその場面に自分を置き見守ることができる。
正直すごいなと思いました。
丁寧な脚本って、こう言うものを言うのだなと感心させられました。
今作は、各登場人物の掘り下げがすごかったです。
吹奏楽部がいかに"個"の集まりであるかが分かります。
恐らく部外の人には分からない感覚かもしれません。
部外の人にとって、吹奏楽部員は、みんな同じに見えるのではないでしょうか。
でも、実際は、違うのです。
一人ひとりが、違う性格、違う考え、違う悩み、違う音色なのです。
そんな"個"の集団が1つの音を"響"かせるのが吹奏楽です。
吹奏楽部あるあるですが、リハーサル室を出るときによくこんなことを言います。
「音楽しよう。音を楽しもう。とにかく楽しもう。」です。
大変な練習を積み重ねてきて、最後の本番ステージでできることはただ一つ。
悔いを残さないことです。
それには、とにかく楽しむことです。
そして、この物語では、北宇治高校の"音楽"は、全国に"響き"ました。
「響」は、実にいい字ですよね。
この字は、"音"が広く聞こえわたる、"音"が共鳴すること表します。
"音"の上にある"郷"は、向かい合う"人"を表しているそうです。
つまり、この「響」には、人と人が共鳴しあうという意味も含まれています。
この物語では、性格も音色も違う50名の"個"がお互いに"響き"あったのです。
これが吹奏楽です。
吹奏楽にも"楽"しむと言う字が含まれます。
とにかく金賞をとりたいと言う野心だけでは、"行き詰まり"ます。
吹奏楽にとっては、文字通り、"息詰まる"ことであり、そんなの楽しくありません。
もはや、それは、吹奏"楽"ではありません。
みんなで音を楽しもう。それが音楽。
みんなで音を響かせよう。それが吹奏楽。
最後に
{netabare}
『「銅」はね、「金」と「同」じなんです!』
{/netabare}
吹奏楽部のポジティブ思考あるあるでした。