ひろたん さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ポンコツ吹奏楽部が全国をめざす!?吹奏楽部と言う一種のコミュニティを描いた傑作。
いいね、ポンコツ吹奏楽部。
それが、全国を目指すなんて、なんて王道の物語なのでしょう。
でも、そういう物語が観たかったのです。
それにしても、「ダメ金」とか「パーリー」を聞いたのは何年ぶりだろう。
私は、中学、高校と吹奏楽をやっていましたので懐かしいです・・・。
吹奏楽部は、基本スポコン系文化部です。
未経験者なら腹筋、ランニング、ロングブレスから始まるのは当然です。
上位大会出場常連校なんて、まるで軍隊ですよ。
この作品も最初は、根性叩き直してやる的なスポコン色がでていました。
てっきりこのままいくのかなと思ったら、途中から恋愛要素も入ってきて優秀です。
■なぜユーフォニアムか(ぎもん)
この作品は、ユーフォニアムをメインに据えたのがよいですね。
ユーフォは、物語の中でも「相変わらず日陰」と言われていましたが、その通り。
派手さで目立つトランペット、トロンボーン。
大きさで目立つチューバ、独特な音色で目立つホルン。
一方、ユーフォニアムは・・・?
確かに特徴がありません。
しかし、不要かと言うとそうではなくて、欠けると低音の厚みが減ります。
低音主体のメロディでは、チューバよりも小回りが利くので見せ場もあります。
結局のところ日陰ではありますが、なくてはならない縁の下の力持ちです。
しかし、なぜ地味なユーフォが主役か?って、普通なら疑問に思います。
でも、いろいろ考えれば考えるほど、ユーフォが最適なのです。
もし、この物語がトランペットがメインだったら逆につまらなかったと思います。
なぜなら、トランペットは、全体を引っ張っていく立ち位置だからです。
つまり、先頭だからです。
しかし、この物語の面白さは、そこではないんです。
この物語が面白いのは、吹奏楽部と言う大人数コミュニティの観察だからです。
そのためには、その大人数を冷静に見守れる立ち位置にいる必要がありました。
その位置とは、先頭ではなく、少し斜め横なのです。
それこそが、ユーフォニアムでなくてはならなかった理由なのです。
■吹奏楽部の生態について
この物語では、特に人間関係は、妙にリアリティがあります。
私の部も50名強でしたが、やはりそれだけ人数があるといろいろな人がいます。
社会の縮図ですよ。
情熱的な人もいれば、冷めている人もいます。
勉強が忙しくなってやめる人もいれば、練習はできないけどマネージャになる人。
基本、去る者は追わないです。
この物語でも、辞めようとする人を引き留める展開にならなくてよかったです。
確かに人情ドラマを期待するのですが、リアリティはなくなりますから。
部長よりも指揮担当の学生の方が、カリスマ性があるのもあたりまえです。
恋愛も普通にあります。
だって、男女50名以上もいる高校生の集団ですよ、無い方がおかしいです。
公認カップルもいますし、隠しても隠し切れない百合カップルもいます。
派閥は、意外と無いです。
それは、基本的にパートごとに戯れることが多いので派閥は不要なのです。
男女構成は、やはり女子の方が多いです。
男女比は、3:7ぐらいで、学校によっては、1:9ぐらいです。
サックスを除く木管は、ほとんどが女子です。
中にはフルートをやっている男子もいましたが、超目立ちます。
サックス、金管、パーカスは、男女比半々ぐらいって感じでしょうか。
顧問の先生もあんな感じですよ。
物腰柔らかく温和そうにみえて、実は我が強く、厳しくて、しかも、粘着質。
文化系でこだわりが強い人は、どうしてもそうなります・・・。
この作品で、少しリアリティに欠けているなってところもあります。
チューバに入った未経験者が全体練習に参加していますが、それはないかな・・・。
未経験者は、全体練習の時は、基本的には他の場所で個人練習です。
メトロノーム傍らにひたすらロングトーンと教則本です。
そして、全体練習が終わったら音楽室に戻ってくる感じです。
このあたりに少し違和感がありましたが、他はだいたい物語の通りです。
■なぜユーフォニアムか(こたえ)
吹奏楽部は、とにかく大人数です。
そして、この作品は、まるでアクリルケースのアリの巣を観察するかのようです。
みんな同じように見えて、全然違う、そんな一人一人の個性を見せてくれます。
しかし、このアリの観察とは、まったく違うことがあります。
それは、あたかも自分が入部したかのように内部からそれを見届けさせたいのです。
そのためには、感情移入しつつ、みんなを観察できる立ち位置が必要だったんです。
それが、ユーフォニアムだったというわけです。
なぜなら、ユーフォは、編成的にメンバーの横顔が見える位置にいるからです。
前方の木管は、指揮者の前に位置し、後ろのメンバーの顔は見えません。
後方の金管は、メンバーを見渡すことはできますが、後ろ姿だけしか見えません。
一方、ユーフォは、ステージ上のどのパートのメンバーの横顔も見渡せます。
これが、この物語にとって、非常に重要だったんです。
この個性豊かな個人が集まった不思議な集団、吹奏楽部。
その行く末を見守るのが、この物語だからです。
■まとめ
この作品は、観ていてほんとに楽しかったですね。
吹奏楽部は、人数が多いので、普段は、がちゃがちゃした感じです。
でも、それが指揮者の構えで静かになり、振り下ろしで、きっちり音がそろう。
そんな空気感がみごとに再現されていたと思います。
十人十色と言いますが、吹奏楽部は、性格も音色も文字通り五十人五十色です。
そんな大人数が、一丸となって全国を目指すんです。
ほんと、面白い部活だと思います。
この作品は、そんな吹奏楽部と言う一種のコミュニティを描いた傑作です。