ナルユキ さんの感想・評価
3.3
物語 : 2.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:途中で断念した
んんwwwこのゲームはVIT全振り以外ありえないwww ヤイプルちゃんが強くて可愛いですぞwww
異世界送りトラックというテンプレを避けた結果、ゆるふわSA○になってしまった作品。まあ「フルダイブ式VRMMO」を題材にしているのならナーヴギアみたいな物が出てくるのはしょうがない(笑) それ1つで「前世の記憶を持ったまま転生」だの「神様からチート能力を授かり~」だのといった究極のご都合主義が取り払われるのだから本作は「なろう作品」の中では比較的入りやすい方だと言える。
【ココが面白い?:女の子らしい発想でゲームを始める可愛い主人公・メイプル(1)】
本作の舞台となるゲームは上記した通りフルダイブ式であり、一度精神をゲームの方に飛ばせば某作と同じく仮想空間で現実と遜色ない活動ができる優れ物。これをゲーム知識の無い主人公・本条楓(ほんじょう かえで)が誰のアドバイスも受けずに独りで始めてしまったのだからさあ大変だ。そのあまりにもリアルな体感に「ダメージを受けたら痛いのかな……痛いのはイヤ!」となってしまうのは仕方ない(笑) 楓はアバター名を「メイプル」とし、初期装備は大盾、かつステ振りは全てVIT(防御力)にやってしまう。
バカみたいに極端な選択の中に私はなんだか“女の子らしさ”を感じてしまった。完全に偏見なのだが女性というのは「もしも」に備えて堅実な選択を取る傾向にあると聞く。それをMMOに例えたら、ゲームで無双する爽快感を得られる攻撃力や機動力よりも「死なないために身を固める」防御力を優先するのかも知れない。ゲームのセオリーでは有り得なくても一般女子ならやりかねないという妙な納得と極振りという茶目っ気からくる楓=メイプルの可愛さを感じさせる冒頭である。
【ココが面白い?:女の子らしい発想でゲームを始める可愛い主人公・メイプル(2)】
そんなゲーム初心者であるが故のハチャメチャなプレイと本ゲーム『NewWorld Online』(以下、NWO)のムチャクチャな自由度の高さが噛み合ってしまい、メイプルは強力なスキルを雪だるま式に連続取得してトッププレイヤーに化けていく。ああ、やっぱり「なろう」だな、と思わせてくれる点だ。
【絶対防御】の取得条件が「1時間反撃せずに攻撃を受け続ける」ことなど、通常のプレイでは見つけられないだけで全てのプレイヤーに取得のチャンスがあるというのが大義名分だろうか。バグやチートではなく飽くまでも正当な手段でスキルを入手することで、メイプルは持ち前の可愛さや人懐っこさも相まって他プレイヤーからは疎まれずむしろ「彼女の成長と活躍を見守りたい」と思われるようになる。視聴者までそう思えるかまでは自信がないが(笑)
問題があるとしたらやはり本作の舞台となるゲームそのものだろう。悪ふざけで入れたようにしか思えない壊れスキルと取得条件の数々、戦闘中にスキル取得可、そして対峙しているモンスターを「食べる」ことが出来るという裏ワザを許していたせいでメイプルはボスへの攻撃手段がないので噛みつき攻撃が出てしまい、そのままボスを食べて倒してしまった。これで倒せるならSTR(攻撃力)に振る意味が無いな(笑) そして敵を食べれば当然、カービィの如く敵の能力を模したスキルも獲得できる。
「困ったら食べればなんとかなるってわかった」
うん、転スラにもあったねその真理(。-∀-)
最終的に2話時点で、
{netabare}1.防御力が極振りの4倍で通常攻撃は寄せ付けない(対人含む)
2.常時HP自動回復、毒・爆発無効
3.超広範囲の即死級毒攻撃と広範囲のマヒ魔法
4.盾に触れた敵(対人含む)や攻撃を問答無用で消滅・MP変換して吸収するスキル【悪食】
5.破壊されると強化されて還ってくる鎧と盾のセット{/netabare}
という“歩く要塞”と化し、他のプレイヤーに激震を走らせることになる。{netabare}電撃魔法で動きを止めて【悪食】で倒しつつ消費したMPを回復してまた魔法という無限ループ……NWOの運営はKONMAIみたいなうっかりさんのようである(笑) {/netabare}
【ココがつまらない:ゲーム世界が没個性】
主人公をバケモノに変貌させた本作のガバガバなゲームシステムにはひたすら失笑できるのだが、その世界観は平凡。典型的なRPG世界であり「なろう」作品でもよくみるそこまで作り込まれていない風景が続く。
エネミーデザインも毒竜(ヒドラ)は紫の三つ首ドラゴン、森のボスは巨大な牡鹿、海中ステージは巨大魚やダイオウイカと捻りがない。同じヒドラでも例えばディズニーの『ヘラクレス』に登場する個体はかなり嫌みったらしい顔つきを持って特徴的だったりするだけに、本作に登場するダンジョンエネミーからは劇中でNWOが大人気ゲームと呼ばれることに説得力を感じさせる「個性」が備わっていないのである。
こう書くと他の人から「この作品は女の子がゲームをする日常コメディなのだからエネミーデザインなんてどうでもいいだろ」とツッコミを入れられるかも知れない。しかし3話目以降はメイプルの相棒となるサリー=白峯理沙(しろみね りさ)のスタイル【回避盾】を強調するためか戦闘シーン────バトルアクションにもかなり気合を入れてしまっているのだ。これで「本作は日常コメディです」と主張するのは若干の無理があるのではないだろうか。
勿論、女の子同士のキャッキャウフフとバトルシーンの両方に注力してもらうに越したことはないのだけれど、バトルシーンが面白いのは主人公が相手するに相応しい「敵役」の魅力も重要である。メイプルの不沈要塞ぶりもサリーの間隙を縫って手数を入れるアサシンのような戦いも、敵が平凡ではその魅力がいまいち伝わらないというか、やはりモブに向けてチートな力を振るう「なろう系」の殻を破けていないように思う。
【総評】
ちょっとどういう楽しみ方で観ればいいのかわからなくなってしまい、6話で断念。
異世界転生をMMORPGに、やれやれ系に走りがちな男性主人公を素直にゲームを楽しむ女性主人公に変えることで「なろう」が嫌われる要素をなるだけ排除した作品と言える。一番嫌がられるであろうご都合主義でチートな力を得て「俺TUEEEEE」をするテンプレ展開も、のほほんとゲームを遊んでいる過程に盛り込みコメディタッチに描くことでそこまで嫌味には感じなくなっている。飽くまでもゲーム仕様の範疇ということで、ユニーク装備や隠しスキル入手などの切欠があれば他のキャラクターもメイプルとは違うチートキャラに生まれ変わって脇を固めるため、単なる主人公無双を描くだけに留まらない、というのも魅力なのだろう。
とは言え、この作品から伝わるのは「ステータスを防御力に極振りしたら最強になったよ!」というインフォメーション(報告)であり、それは2話で十分に示されている。イベントで2048名のプレイヤーを返り討ちにするのが本作の長いタイトル回収も兼ねたクライマックスであり、以降の話は蛇足にも感じる。つまり“出オチ”だ。サリーの参戦や階層構造であるゲームの攻略、第2回イベントと第3回イベントに向けてのギルド結成など内容は盛り沢山なものの、一度ギャグ寄りに主人公無双を見せてしまったせいで以降の話がそれを越えてこない。
せっかくのガチガチな戦闘作画もなろう特有の要素や女の子たちによる「ゲームを楽しむ」というふわっとした目標の下で見せられても「宝の持ち腐れ」の様に思えてしまう。格好よく敵の攻撃を受け止めたり躱したりして、反撃に転じて撃破する様を描いても「所詮彼女らはゲームで遊んでるだけ」という冷めた思考に陥りがちになる。
現実ではその所詮ゲームにも命────半生を懸けていたり依存────心の拠り所にしている者がいるのだが、本作ではそういったマイナス面は描かれていない。“可愛くて闇のない女の子たちによるゲームライフ”という触れ込みがなろう系の嫌なイメージを払拭して入りやすくしてはいるのだが、中盤の無味無臭な展開にはむしろ拍車をかけてしまっているようだ。
もう少しPVPの競技性を活かした展開────例えば2話でモブには無双できたものの、攻撃力極振りのプレイヤーに負けてしまって以降、そいつをライバル視し打倒するために防御力を極め続けるなんて展開が描かれればそこが気になって視聴理由になってたと思う。しかしそんな期待は6話によって打ち砕かれてしまったのが視聴断念に繋がった。{netabare}だって逆なんだもの。攻撃力極振りの娘らを仲間にしちゃうんだもの(笑) 結局他のなろうと同じく主人公とその取り巻きで異世界(ここではゲームか)を蹂躙する展開しか描く気ないじゃない!と思ってしまった。{/netabare}
もう薄々気づいてる方もいるだろうが、私もまたなろう系には偏見のある人間だ。そんな私が可愛い女の子のキービジュアルに釣られ、「他のなろうとはいろいろな部分が違う」「なろう原作に対する印象が少し変わる作品だ」という意見を信じて半分は視聴した本作であるが、早々に「他のなろう系と変わらん」とバッサリ斬ってしまう代物であった。勿論、なろう原作の中には決してバカにできない面白い作品があることも知ってはいるのだけれども、本作がそれに該当するとはとても思えない。