薄雪草 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
折れて、曲がって、跳びこえて。
気心の知れた友人に、本作のことを尋ねてみましたら、知っている人のほうが多かったのでちょっとばかり驚きました。
「あれ?みんなそんなにラノベ読んでるの!(そんな有名作だったの?)」と、なんだか仲間外れにされたように感じました。
「あなた、異世界ファンタジーなろう系嫌いだったでしょう?だから話題にしなかったのよ。」と、迷惑気にいじり返されました。
すっかり鼻たれ扱いにされたので 「じゃあアニメになっているの知ってる?」と切り返したところ 「とっくに観てるわよ。」とけんもほろろと捌かれてしまいました。
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そのあと、なんのかのと転生談義の時間を割いたのは、あにこれ界隈を賑わせている "あの演出" でした。
男性の原作厨からは、「制作陣が作品の主旨をきっちりつかんでアニメ化している!」、「映像化されたことで原作以上にキャラクターに強烈な磨きをかけていてGJ!」、「無職男の妄想圧力が、なろう系主人公に対する視聴者の期待値を侵蝕している!」など、まぁ出るわ出るわで、「友人を選び間違えていたか?」と三日ほど悩みました。
女性陣からは、「バカは死ななきゃ治らないって嘘だよね!」、「箍(たが)が外れたら案外あんな反動もありなんじゃない?」、「なろう系ファンタジーに女性ハーレムを盛り込むのはもう飽き飽き(辟易?)、ゴールデンタイム作品じゃあるまいし、セクシャリティーがあからさまに描かれてもノープロブレム。」など、こちらも出るわ出るわで、「やっぱり私の友人だわ・・・。」と頷いた次第。
ただし、大事なことがあります。
作者は、無職男のゲーム脳的な妄想メンタリティーをルーデウスに転写したり、大人キャラの生々しい振る舞いをルーデウスに見せたりしています。
メタファーと比喩するには、いささか下卑た演出になっているのはどういうわけなのか。
顰蹙とも評されるそれは、ルーデウスの成長にとって如何なるエネルギーに置き換わっていくのか。
そういった視点や尺度で向き合わなければ、作品を眺めているだけで終わってしまうような気がします。
本作のコンセプトには、定番として、読者に "現実世界での閉塞感" からの脱却の疑似体験を一縷と空想させるわけですし、視聴者に "性的表現への共感と反発" を一要素として投じていることにも、当然その意図が組み入れられているわけです。
本作の骨格は、謂わば、人生哲学(フィロソフィー)とリビドー(性的衝動)のダブルボーンとして築かれているようにも感じます。
より自分らしく生きることの欲求は、真っ当な成長譚そのものです。
それが叶わない生きにくさへの必死の足搔きも、同じく成長譚として不可欠の要素です。
本クールにおいても、キャラクターたちは、至極真っ当に "生きよう" としています。
彼らの奇を衒わない実直さは、いったい何を物語に含ませているのでしょう。
もしかしたら、無職男が望んでいた社会参加への心残りなのでしょうか?
あるいは、転生ルーデウスに託された家族構築の命題なのでしょうか?
二人は、表裏一体の関係です。
ルーデウスは、いよいよ逃げも隠れもできない立場に置かれます。
無職男は、一歩引いた場所からルーデウスの選択を考えています。
単純なアプローチではひも解きにくい様相を共有しながら、生き方を模索していくのだろうと感じます。
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転生前の無職男の Serious Closed Community.
転生後のルーデウスの Fantasy Open World.
作品が、原作をどんな脚本立てで魅せにくるか。演出やカット、劇伴などはどのような表情を見せ、それらはいったい何クールを費やすのだろうかと思うと、つい気も急いで、原作に手を出してみたくなります。
ロングライフ作品のようですから、アニメも迂闊には評価しづらいし、終幕を迎えるまでは大口を叩かない方が身のためかも知れない、なんて思ったりしています。もちろんお小言も。
いずれにせよ、本クールも期待に違わぬクオリティーでしたし(2クールのレヴューは?!)、ファンとして次作を久しく待つ身となりましょう。
反面、今ながら "ロス" の反動におののく想いで、やおら身構えてもいます。