Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
全てに絶望した引き籠もりの厭世家(ペシミスト)と、健気なオトメ心との共鳴により生み出されし産物とは…!?
この作品の原作は未読です。
今期は視聴がだいぶ遅れているので、正直最初は視聴するつもりはありませんでした。
ですが、dアニメストアで視聴できるので試しに一話視聴したら…ハマってしまい気付いたら完走していました。
時は大正――。
金持ちの家に生まれ、 何不自由なく育ってきた志磨珠彦は、
大事故に遭い、 右手の自由と父の期待、そして母を失う。
養生という名目で田舎に厄介払いされ、
いつしか世の中すべてを嫌う 厭世家(ペシミスト)になっていた。
そんな彼のもとへ、 夕月という少女がやってくる。
珠彦の世話をするために 父があてがった、妻だった。
最初は夕月を うっとうしく思っていた珠彦だが、
次第にその笑顔と優しさに 心を開いていき――。
果たして、二人は 本当の夫婦になれるのか。
大正ノスタルジック・ラブストーリー、 開演!
公式HPのINTRODUCTIONを引用させて頂きました。
「果たして二人は本当の夫婦になれるのか。」とINTRODUCTIONには記載されていますが、実際にはそこまで描かれていないので、原作未読組には顛末は分からないです。
ですが、原作は完結しているようなので、続編が制作されたらきっと全てが
明らかになるのでしょう。
私にとってそうなることを期待せずにはいられない作品でした。
それは、ヒロインの夕月の存在にほかなりません。
夕月は14歳の時に、この物語の主人公である事故によって全てを失った17歳の志磨 珠彦の世話係として、お金で買われてやってきました。
お金で買われて見ず知らずの人の下に向かう時の気持ち…
きっと今の私たちには絶対に理解できない気持ちだと思います。
僅か14歳で親元から引き離され、きっと自身の親とはもう二度と会うことはできないのでしょう。
これまで自分を包んでくれた優しさを失い、一人雪の降る夜道をぽつぽつと歩いて向かう…
このとき沸き上がる寂しさや心細さを、私は言葉で表現する術を知りません。
こうして二人が出会った矢先、ほんの些細ですが夕月は自分に向けられた優しさを決して見逃しませんでした。
全ての物事が動き出した瞬間…は言い過ぎかもですが、その気付きがきっかけになったのは間違いありません。
ゆっくりと二人の時間が動き出します…
最初は相当ギクシャクしていたと思います。
ですが、時間の経過に伴ってどんどん二人で一緒にいるのが当たり前の存在に昇華していくんです。
もちろん、そこまでの道のりは順風満帆ではありませんでした。
世の中全てに絶望し、自分の死を強く望む存在…
そうでも思いこまないと存在する価値すら見失ってしまうと藻掻く存在…
一度底辺まで沈んだ気持ちを引っ張り上げるのは容易なことではありません。
ですが、夕月の優しさや献身的な振る舞いが、周りの人の凍った心を甘やかに溶かしていくんです。
そして、夕月の立ち振る舞いは…周りに伝染するんです。
正直序盤は明るく温かい未来なんて来るはずないと思っていました。
例え、そんな未来が来たとしても、その恩恵にあやかれるのは当人通しが関の山かと思っていました。
でも違いました。
夕月は周囲の冷え切った心や穿った見方すら捻じ曲げてしまう…そんな凄い乙女だったんです。
この画面にこんなにも温かい世界が広がっているなんて、まるで夢の様でした。
人は変わるし、変われます。
そこから一歩踏み出すだけで見える景色はもう変わっているのですから…
あとは自分の気持ちをちゃんと相手に伝えることができたなら、きっと変化を実感できるんだと思います。
それともう一つ、夕月役を演じた会沢紗弥さん…
この作品が初ヒロイン作品とのことでしたが、そんなことを微塵も感じないほど、自然に夕月が演じられていたと思います。
会沢さんの演技で何度も目頭が熱くなりましたから…
今後の活躍を期待したい声優さんです。
オープニングテーマは、GARNiDELiAさんによる「オトメの心得」
エンディングテーマは、土岐隼一さんによる「真心に奏」
個人的には最終話のエンディングテーマとして起用された
白鳥ことり(伊藤彩沙さん)の歌う「戀ノ歌」が一番大好きでした。
1クール全12話の物語でした。
自分の包囲網に引っかかってくれてありがとう、と言いたい作品でした。
これを見逃していたら本当に勿体ないところでした。
こういう温まる作品は良きですね。
しっかり堪能させて貰いました。