「千と千尋の神隠し(アニメ映画)」

総合得点
87.7
感想・評価
1804
棚に入れた
12233
ランキング
144
★★★★☆ 4.0 (1804)
物語
4.1
作画
4.2
声優
3.8
音楽
4.1
キャラ
4.0

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

おじいさんからのおてがみ。

【概要】

アニメーション制作:スタジオジブリ
2001年7月20日に公開された125分間の劇場版作品。
監督は、宮崎駿。

【あらすじ】

主人公の荻野千尋は10歳の女の子で、両親の都合で引っ越すことになり、
仲が良い友達と離れ離れになったり環境が変化することに納得して無くて、
新居に向かう車のなかでも不貞腐れてるのも隠そうとしてなかったのだが、
陽気な父親も神経質そうな母親も千尋の気持ちを放っておいて、新しい生活に前向き。

ニュータウンの新居が目に見えるところまで車は来ていたのだが、新居を目指して、
父親がいきあたりばったりで舗装されていない森の道を運転していくうちに、
車が通れない細いトンネルのある建造物に突き当たる。

車を降りた父親は、建造物と通り抜けた先に何があるのか興味津々。
『戻ろう!』と千尋の声を聞かない両親に、千尋はついていき、
親子三人はトンネルを徒歩で抜けて、無人の町に迷い込んでしまう。
その奇妙な誰もいない町をどんどん先に進み、食べ物の匂いを嗅ぎ取った父親、
親子は食べ物屋に入り、店員を探すが誰もいない。
あとでお金を払えばいいと、店内の食べ物を貪る両親。
千尋は食べずに、店を出て町中を歩いていると、橋の向こうに湯屋があった。
千尋は橋の上で出会った白い服の少年に、元いた所に帰るように言われる。

夜になった町は賑やかに明かりが灯り、黒い影のような住人で溢れかえり、
戻った千尋は両親の服を着た豚が飯を貪り続けていて、
ハエたたきで店員の影からの折檻されているのを見る。

もと来た道は大河になっていて渡れなく、千尋の身体は透明に透けていく。
このまま消滅しそうな千尋を助けたのは、先程の白い服の少年のハクだった。

【感想】

これは、当時は還暦に近かった宮崎駿氏が、
友人である50歳近く年下の少女からインスパイアを受けて作られたらしき作品。
その少女の父親は日本テレビの『金曜ロードショー』のプロデューサーとして、
スタジオジブリ作品の数々をプロデュースした人物であり、
宮崎駿氏と件の娘さんは家族ぐるみの付き合いで知り合ったわけですな。

カーネル・サンダースを意識したかのような白いひげの巨匠?というイメージで、
孫のような年頃の娘に向けた、寓意とカリカチュアで脚色された人生訓の物語?
と思いきや、実在のモデルがいる少女を八百万の異形の神々を客とした風呂屋で、
泥んこにして働かせたりで、色んな目に遭わせたりしているのがフェチ全開だったりでして、
それが風俗店のメタファーとか言われたりで、アニメでやってることは聖人君子ではなくて、
好きなことを描いてるうちに筆が乗っての気の向くままに話を作ってる気がしますな。

とはいえ“世界の宮崎駿”の体裁を守るためには、
実在の少女をモチーフにしたお人形遊びではいかんわけでして、
千尋の両親を用いて、バブル景気に浮かれた人間を強欲な浅ましき豚として扱うことで、
また、カオナシというキャラに関するエピソードで、
金と欲に支配されて人の社会から優しさが失わようとしているのは愚かであるとか、
社会への風刺や批判の要素でメッセージ性を入れているわけですね。

今作は10歳前後の女の子に観られることを意識した作品ということで、
あの世代の子供に共感してもらうのを意識して作ったのでしょうか?

千尋の父親は自分では家族思いの良きマイホームパパのつもりが、
自分が好きなことに夢中で視野が狭くて人の話を全く聞かない粗忽者。
よって経済的には保護者の責任を果たしているものの、

狭い山道を車で暴走してるのを「お父さん大丈夫?」と、
千尋からはスピード出しすぎなのを怖がられているのに、
娘に格好いいところを見せたいのか、
「任せとけ、この車は四駆だぞ!」と答えて山の中でスピードを上げるなど、
人の言葉や態度から意図を汲み取る能力が致命的に欠けていて、
常に話が噛み合わなすぎて親子の信頼関係が正しく成立しているとは言えない。

千尋の母親は、躾だと思っているのか娘に一切甘い顔を見せない。
と自分をしっかりした大人だと思っているのかもですが、
トンネルの先のふしぎな世界で足場の悪い岩場を移動するときは、
自分は身体を受け止めてもらって夫に甘えているのに、あとをついてきて、
怖がりながら渡るのに苦労している娘には「千尋、早く来なさい!」
とだけ言い放って放置して、自分たち夫婦だけ先へ先へ進む冷淡な態度。
娘の母親であることよりも、夫の女であることを優先していますね。

親子のコミュニケーションが上手く行っていなくて、
娘も不満だらけで明らかに不貞腐れてグズったりで、
父親は脳天気だし、母親も娘の態度への不満を隠そうとしていなくて、

親のほうはエンディングにいたるまで心の問題は一切進展しないのですが、
大人って自分が正しいと思ってて威張っててもこんなもんだから、
子供のほうで割り切って自分で自分を助けなきゃ何も変わらない。

娘である千尋のほうには、
ハクとの恋愛と湯屋での勤労経験と謎の腹痛と立て続けにイベントを起こさせることで、
大成長を遂げるわけでして、最初はダメダメだった千尋がしっかりした人間に急変して、
大人みたいに心の垢に塗れていない清らかさで、
作品のなかで生じた様々な問題を解決に向けていく。

その千尋の姿に子供目線で心に残るものがあれば良いわけでして、
この作品では千尋の不安や悲しみ、そしてそれを抜けた喜びの表情が生き生きとしていたことから、
映画は役者を魅力的に描けていれば見栄えがするというのは本当で、
アニメも、説得力を持つようにキャラの作画ができていれば、
そして声優のお芝居が合っていれば、銀幕に印象に残るキャラクターが生まれるわけでして、
キャラクターや演者より監督の名前ばかりがビッグな扱いを受けるのが恒例な宮崎アニメで、
荻野千尋というキャラクターが大健闘したということで、
この作品に自分は好意的だったりするのですね。

とはいえ、千尋が急に腹痛と初仕事の後から、おどおどした部分が消失して、
しっかりし過ぎだろうと思わないでもなかったですが、

・立場が人を作る。
・自分が逃げたらハクが死んだり豚にされた両親が食べられたりするので、
 千尋は無理して気丈に振る舞っていた。

と、きっちりフォローを入れるのを忘れていないわけでして、
キャラのモデルが具体的にいますと、感情が豊かに描かれてバランスがとれた作品になるわけでして、
前作の『もののけ姫』では理屈先行すぎて人間描写がつまらなかったのと、
7年後の『崖の上のポニョ』があんな無残なものになったのと比較して、
まだ、枯れていなかった頃の宮崎駿氏が、
おじいさんが10歳の少女に向けて書いた長文のお手紙のような、
自分の“好き”を目一杯に熱く描いたときの表現力を堪能することにおいて、
確かに優れた作品だと思いました。

アニメはそれぞれが膨大なスタッフの合作で監督一個人の私物ではないと思っているのですが、
ジブリは宮崎駿と高畑勲を頂点としたヒエラルキーの会社であったり、

20年前の、2001年の8月に劇場に観に行ったときは、
ただ漫然とスクリーンの中の出来事を眺めているだけで、
ラピュタや紅の豚みたいなのが観たくて退屈だなあ!としか思えなくて、
当時の自分には展開に面白みが感じられなかったりで、

色々と思うところはあったのですが、
改めて観たところ、良いものは素直に称賛しましょう!という結論に達しました。


ということで、これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2021/12/28
閲覧 : 383
サンキュー:

38

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