レオン博士 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
やりたいことを思う存分できるって最高に幸せなこと
【紹介】
不良男子高校生が一枚の絵と出合い、一目ぼれし、美術の面白さに惹かれて東京藝術大学入学を目指す話。
人間ドラマよりも、絵を描く技術面が中心の話でかなり個性が強めの作品。
絵に関する専門的な話はやたらと細かくて、作者自身の造詣の深さを感じるのが良いですね。
【キャラクター】
キャラデザにかなり癖のあるキャラが多いです。でも美形ばかりで固めるよりは現実感あるかも。
絵を描く技術的な話が多いので、キャラ付けも絵に対する姿勢の違いを強調していて、絵のことは詳しくないけど、クリエイターの苦悩が各キャラクターを通して表現されていて興味深い。
【音楽】
主題歌はいい感じ。特にEDへの入り方がセンス良くて好きかも。
【作画】
デッサンの作画や背景の作画は良い感じだけど、キャラデザは個性的なのはいいけど、私はあまり好みじゃないです。
好みはともかく、キャラクターの身長とか体型とか顔が結構変わってて作画の質は悪いと思いました。
女子高生の制服の着こなしが統一感ない。
同じ高校でも流行追ってる子と普通の子とマジメな子でだいたい3通りに分かれるんだけど、同じ子でも場面によってかなり違います。
こういう、この作品の主題と関係ない部分は結構適当で、手を抜くところは手を抜いている感じ。
【ヌードモデル】
ちょうど最近、モデルをした友達から話を聞いたのですが、恥ずかしいのは最初だけだそうです。
長時間、物凄い緊張感の中、多くの人に注目されてじっとしているのが相当な苦痛らしくて、二度とやりたくないって言っていました。
なんか、すごく張り詰めた空気で咳すらできないような緊張感で、かゆくなってもじっと我慢。
極度のストレスで気を失いそうになったけど、それも30分くらいたつと気にならなくなって今度は石像になったかのような虚無になるそうです。
なんでわたしはこんなことをしているのか、ずっと自問自答していたそうです。
この作品での描写も正にそんな感じでしたね。
【シナリオ】
非常に取り扱いが難しいテーマを絵に造詣が深くない人に対してもわかりやすく、かつ専門的に描写できているところが凄い。
芸術って、絵でも音楽でも好みがあるし、技術的な話はわかるけど、自分の中にあるものを表現するとか、それぞれが何に悩んでいるのか、抽象的で簡単に表現できないことが多くて
そういったややこしい部分のややこしさを絶妙に表現できているところが凄い。
ただ悪いところもあって、先述したように「芸術面」に全振りしているところがあって「人間の心」の表現が不足しているところ
芸術の難しさに苦悩するキャラクター達を描くことはしていますが、その心の揺れ動きが割と唐突で、少し雑になってしまった印象。
たとえば主人公についてですが、
{netabare}
主人公が絵と出会ってから上手くなるまでの過程がほぼすっ飛ばされ、うまくなってからどう高みへ到達するのかが話の軸になっています。
確かにこれだけ時間がない中、東京芸大に合格する青写真を描くにはこれくらいのペースで上達する必要があると思いますが、あまりにも唐突すぎるかも
絵初心者である主人公を手っ取り早く成長させて、絵の専門的な話を早くやりたかったのでしょうか?
初心者が急にうまくなりすぎで、その過程をもうちょっと丁寧に描かれていたらもっと良かった。
同じ飛ばすにしても、日常の一コマ一コマを走馬燈のように次々と入れて時間の流れとともに主人公の成長を描いていれば
主人公の気持ちにもう少し共感できると思うんですけどね。
{/netabare}
それでも絵を描く技術の話や、主人公が表現の方法や描きたいものは何かについて苦悩し、周りのアドバイスを聞いて試行錯誤するところが面白かった。
【総評】
作品全体に、作者自身の伝えたいことを全力で伝えたいという意思が感じられるのが素晴らしい。
芸術家気質が強く唯一無二の魅力を持つ作品。絵を描く魅力や難しさや技術の話はとても興味津々でした。
続きがとても気になりますね。とても面白かったです。